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第2章 第3話 七角関係

「はぁー……。彼氏ほしー……」



 説明会が終わり、ファミレスにて。鹿島さんがそうつぶやいた。



「別にそれはいいんだけど……なんで俺を呼んだわけ?」



 ギャル全開でしかも読モだという鹿島さんとドルオタの俺との接点はないにも等しい。そして呼ばれたのはもう1人。



「私も呼ばれた理由わからないんだけど……」



 ストリート系女子の月島さん。雰囲気的には鹿島さんとのつながりはあるようにも感じるが、彼女も高校入学組らしい。となるとやはり接点がわからない。



「月島を呼んだのは同じ空気を感じたからだよ。なんか気になってる男子がいるのにそいつは他の女に執心で上手くアプローチできない感がする」

「べ……別に……私はそんなじゃ……」



 なぜか月島さんの視線が隣の俺へと移り、慌てて目を逸らす。もしかしたら俺に気があるんじゃ、とも思ったが、それこそ月島さんは鹿島さん以上に繋がりがない。話したのも今日が初めてだ。ありえないだろう。



「で、俺は?」

「あんたにはやってもらいたいことがあるから。夜照と付き合ってよ」

「はぁっ!?」



 わけのわからない発言に思わず大声をあげてしまうと、鹿島さんはルーズリーフに人の名前と矢印を書き込んでいく。



「あたしたちってまだ全然付き合い浅いけどさ、実は結構深い感じなんだよね」



 『志村→あたし→海人→夜照→文月→新泉』。そう書かれた紙を俺たちに差し出してくる鹿島さん。



「これが好きの流れ。あたし海人と付き合いたいんだけどさ、海人どう見ても夜照に気があるんだよね。で、夜照って文月のこと好きじゃん? だから付き合ってよ。そうすれば海人も諦めるだろうし」

「…………」



 なんだろう。色々言いたいことはあるけど……。



「まず俺は新泉さんが好きってわけじゃない」

「いやそれは無理があるでしょ。だって新泉を見てる時のあんたの顔キモイよ?」


「キモ……。いや確かに! 確かに俺は好きだけどさ……それは推しアイドルのにこぴーとしてだ! 新田にこと新泉虹乃は同一人物であって別人物だろ? だから新泉さんが好きってわけじゃ……」

「よくわかんないけどキモイね。それと個人的な勘だと新泉からあんたにも矢印出てると思うんだよね」


「にこぴーが男と付き合うわけないだろっ!?」

「うわやばキモ……。まぁそれならそれでいいよ。夜照と付き合えるってことだもんね」



 そうだそこだ。一番ありえないのは。



「夜照さんが俺を好きなわけないだろ」

「……は? いやいやそれはないっしょ。絶対あんたのこと好きだって」


「どこをどう見たらそうなるんだよ……。たまたま隣の席で同じ高校入学組だからよく話すだけだって」

「好きじゃない奴の膝の上なんか座るわけないじゃん……。月島はどう思う?」


「……さぁ。私にはわからないけど、今文月くんが他の人と付き合ったら寂しがるんじゃないかな。あまり話せなくなるだろうし……」

「……あぁごめん。あんたのこと書くの忘れてたわ」



 そう言うと鹿島さんは紙を手元に戻して俺の下に月島さんの名前を……。



「待って……!」

「……ははっ、マジ? そんないい男には見えないけどなぁ……」



 なぜか顔を真っ赤にしながら身を乗り出して鹿島さんの腕を力いっぱいに掴む月島さんと、俺をニヤニヤと見つめてくる鹿島さん。本当によくわからないな……。



「わかったわかった。じゃあこれでいい?」

「殺すぞ」



 鹿島さんが新泉さんから矢印を引いて先頭の志村くんに繋げようとしたので思わずそう言ってしまった。



「目がマジなんだよキモイなぁ……。じゃあこれ。新泉から月島、月島から志村で一回転ね」

「んー……。あー……個人的にはアリ。いやでも……」

「私勝手に志村くんのこと好きにされてるんだけどそれは無視?」



 少しふざけたけどとにかく、だ。



「鹿島さんは梅宮くんと付き合いたいから夜照さんが邪魔なんだよね?」

「それそれ。夜照が海人を振ってくれるなら別にあんたは付き合わなくてもいいよ。てかやめといた方がいいよ。あの女絶対腹黒だから」


「あの清楚な夜照さんが腹黒はないだろ……」

「あのね、童貞くん。清楚なんて女はこの世に存在しないの。いるのは本性を隠す性悪だけ。てかあんなデカリボンの時点で性格悪いの確定じゃん。絶対自分がかわいいと思ってるよまぁ実際かわいいのは認めるけどさ。あとツインテール。あれも絶対性格悪……あ、ごめん。新泉もツインテールだったわ」


「にこぴーは性格悪いから魅力的なんだよ」

「いやマジキモ……。で、どうすんの? 夜照と付き合ってくれんの?」



 そこなんだよな……色々わかんないのは。まず……。



「梅宮くんが夜照さんを好きなのは確定なの?」

「十中八九ね。海人があんなにガツガツ女に迫ってんの見たことないし」


「ならそれはいいとして、夜照さんが梅宮くんのこと好きだったら……」

「それはないね。おじょ……夜照さんは反応がかわいいタイプが好きだから。むしろ迷惑がってるよ、確実に」


「へー。月島って夜照と仲良かったんだ」

「い、いや……。お、同じ中学だったから……」



 うーん……とりあえず梅宮くん周りのことがわかった。じゃあとりあえず……。



「仮に本当に夜照さんが俺のことを好きだったとしても俺は付き合わない。まだ会って1週間かそこらだし、もっと知らなきゃいけないからな」

「まぁ……そうだろうね」


「その上でだけど鹿島さんが梅宮くんと付き合いたいっていうのには協力するよ。夜照さんも嫌がってるみたいだし」

「ん。あんがとー」


「だからその……今が悪いってわけじゃないけど、一番いいのは鹿島さんが夜照さんより魅力的になることじゃないかな」

「だよねー……よし。きーめた」



 俺の言葉を軽い感じで聞いていた鹿島さんは、突然スマホを弄り出した。



「何やってんの?」

「ん? あーあのライブ? みたいなのあたしも参加しようと思って。これで夜照より目立てばあたしの勝ちっしょ?」



 勝ち負けじゃないとは思うけど……すごいな。現役アイドルと同じステージに立って目立とうとするなんて。夜照さんもだけど、なんか女の戦いって感じだ。



「言っとくけどこれ協力してくれるっていうあんたへのお礼も兼ねてんだからね?」

「え?」

「だってこれで3人っしょ? だからさ、できるじゃん。センターが」



 センター……。さすがに素人集団の中でなら、人気最下位のにこぴーでも、念願の、センターに――。



「ん?」



 鹿島さんがスマホを置くのとほぼ同時に俺のスマホが振動した。見てみると……。



「!?!?!?!?!?!?」

「なに? どしたの?」

「やっ! いやっ! なんでもないっ! なんでもっ!」



 やばい。隠しきれないくらいに、慌ててしまった。でもこれは……だって……!



 『次の日曜日、ちょっと買い物に付き合ってくれない?』という。新泉さんからのデートの、お誘い……!

次回からにこぴーデート編が始まります!


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