第2章 第1話 取り合い
「風人くん、部活動どうするか決めた?」
放課後教室でそう話しかけてきたのは俺の隣の席の女子、新泉虹乃さん。
「いや部活は入る気ないかな……。バイトしてにこぴーのグッズいっぱい買いたいんだ」
「風人くん……。でもうちの学校基本的にバイト禁止だし部活か委員会に入らないといけないんだってよ? それにグッズならわたしがあげるし……いっぱい余ってるから……はは……」
「わかってないな。ファンはグッズがほしいんじゃない。推しの力になりたいからグッズを買うんだよ」
「風人くん……」
オタク論を唱えると、なぜか新泉さんは瞳を潤ませる。にしても困ったな……。バイトできないし部活入らなきゃいけないのか……。
「風人くんは中学時代何の部活やってたの?」
「ああ俺は……」
「サッカー、ですよね?」
割って入ってきたのは隣の席の夜照さん……なんだけど……。
「なんで俺の膝の上座ってきたの……?」
「隣の席は2つありますが、同じ席は1つ。そうは思いませんか?」
「いや答えになってないんだけど……」
俺の膝の上に座り、ドヤ顔で振り向く夜照さん。俺そんなに大きくないし夜照さんもそんなに小さくないから前見えな……。ていうか後ろを結んでいるリボンがすごい邪魔だ。
「風人くん、しっかり掴んでいただかないと不安定ですよ。ほら、腕を私のお腹に回してください」
「う、うん……」
どうしよう……とりあえず重いとか言っちゃいけないんだよな……。とか思っていると、なぜか新泉さんからピリッとした空気を感じた。
「サッカー部に入りたいなら案内するよ。今すぐに」
「ご心配なく。風人くんはモテるためにサッカー部に入った結果試合には一度も出れず中2でサッカーを辞めています。サッカー部には入りませんよ」
「なんで夜照さんが答えてんの……? ていうかなんで知ってんの……!?」
そしてなぜだろう。夜照さんもなんかすごい、ピリピリしているような気がする。
「そうだよね。風人くんいつも公園で野球やってたもんね。ねぇ覚えてる? わたしが歌ってた時ボールが飛んできて……」
「ふふ。幼馴染というのは昔話しかできなくてとても憐れに見えます。私たちは過去ではなく現在、そして未来を生きているのですから」
「わかってないなぁ。人間っていうのは過去の積み重ねだよ。それを無視する人こそ憐れに見えるな。テストだって途中式を書かなかったら不正解じゃない?」
「式など逆算すればいいだけのこと。それに途中式自体を間違えている滑稽な方の言葉など……ふふ。聞くに堪えませんね」
いや気のせいじゃない気がする! 何のことかさっぱりだけど!
「と、とりあえず部活は適当に入るから!」
「風人くん、アイドル研究会なんてどうかな? わたしも一緒に入るから……」
「いいえ、生徒会がいいです。きっと楽しいですよ」
なんだなんだ!? 今勧誘を受けたのか!? えーと……!
「ドル研はない! 俺にこぴーにしか興味ないから! で……え? 生徒会?」
夜照さんが口にした生徒会。これだけは繋がりがわからない。でもとりあえず……。
「生徒会もない。そんな真面目なのは合わないし、妹が中等部の生徒会長だからなんとなく、嫌だ」
「ですがこの学校の生徒会はかなり緩いそうですよ? それに中等部とのつながりは薄いと聞きます。少なくとも中3と高1が交わることはないでしょう」
「……なんでそんなに詳しいの? ていうかなんで俺をそこに……」
「それはですね……ふふっ」
夜照さんはニヤリと口角を上げ、言う。
「私の姉が高等部の生徒会長をしているんです。そして中等部の生徒会長が風人くんの妹さん。これはもう、運命だと思いませんか?」
その言葉に俺の脳にはなぜか、外堀という言葉が浮かび上がった。
第2章に突入し、展開も変わったことでタイトルとあらすじを変更させていただきました。わかりにくかったら申し訳ありません。
ご覧になった通り、第2章は夜照さんと新泉さんの取り合いになります。第1章よりは明るくいく予定ですのでお楽しみに!
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