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第1章 第11話 愛の力

 オリエンテーション合宿2日目のイベントは特にない。バスが出発する昼までの間は自由行動。俺はその時間を利用して夜照さんを森の中へと呼び出していた。そして、



「好きです。俺と付き合ってください」

「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」



 夜照さんへと告白していた。



「にゃっ、なっ、なにを……!?」

「梅宮くんに言い寄られてるお前を見て取られたくないって思った。その時気づいたんだよ。弥生に恋してるってことが」

「にゃまえぇっ!?」



 真っ赤になり奇声のような悲鳴を上げる夜照さん。その姿自体は本当にかわいいと思う。



「で、付き合ってくれんのか?」

「い……いえそれは……!」


「駄目なのか。わかった」

「ダメじゃないっ! ダメじゃないっ! けどっ!」


「言葉より、やってみた方がいいか?」

「ひょぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」



 木に追い詰めて壁ドン……というか木ドンをすると、夜照さんはもう熱があるんじゃないかってくらい真っ赤になって慌てふためく。……これやってみると恥ずかしいな。自分がイケメンだと思ってないと絶対できないぞ。



「ふっ、ふーくんっ、ふひゃ、ひゃひぃっ」

「……俺のこと好きなんだろ? だったら黙って頷けよ」


「……はへ? な、なんで……」

「何でってそりゃ、決まってるだろ」



 俺が目を覚ましたのは深夜3時。そしてその時思ったことはただ一つ。



「昨日までの記憶、全部残ってるからだよ」



 夜照弥生を止めなければならない。それだけだ。



「お嬢っ!」

「動くな」

「ひゃひぃっ!?」



 俺の後ろの木の陰から月島さんの声が届くのと同時に、夜照さんへとさらに近づく。



「悪いけど多少暴力的なことだってするぞ。正当防衛だからな」



 これだけ近づけばスタンガンを食らったとしても最悪夜照さんに反撃できる。いわば最強の盾だ。



「わ、私のこと好きって言ったの……うそなの……?」



 泣きそうな目をしているところ悪いけど、ほとんどがその通りだ。



「別に嫌いってわけじゃないけど、君みたいな犯罪者と付き合いたいとは思わない。……いやごめん! 泣かないで!」

「だって……だってぇぇぇぇ……!」



 どうしよう。本格的に夜照さんが泣き出してしまった。俺そんなに悪いことしてないのに……!



「……とにかくだ。告白のことは忘れてくれ」



 つい流れで記憶があることを言ってしまったが、本当は暴露するつもりはなかった。夜照さんは家庭の事情で俺とは付き合えないなら、俺の方から告白してしまえば全てうやむやになるのでは、なんて短絡的な思考だったが、こんなに罪悪感を覚えるとは思わなかった……。



「……椿、ふーくんの記憶を消して」



 思わず目を逸らしてしまっていると、涙を流しながら。それでも俺から目を離さない夜照さんは言う。



「全部余計な記憶があるから悪いんだよ……。薬一つじゃ効かないなら二つ飲ませれば……!」

「悪いけどそいつはもう効かない」



 なぜ俺が薬を飲んでも記憶が消えなかったのか。一昨日のことを思い出したからか。首筋を噛まれたことで痛みがノイズになったのか。どれも、違う。



「俺はにこぴーを愛している。彼女が危険な目に遭うかもしれないってのに大人しく記憶喪失なんかになるかよ」



 俺が記憶を保っている理由なんてそれくらいしか思いつかない。だってそれが俺の全てなのだから。



「……知らない。椿、早くやって。今のふーくんの言葉、聞きたくない」

「いいのか? 月島さん。お前がこれ以上近づいてきたら夜照さんを……」



 後ろから足音がゆっくりと近づいてくる。月島さんが夜照さんの指示通りに。



「そんなの脅しだよ。ふーくんは女の子を傷つけられるような人じゃない」

「……だったら試してみるか? 俺はにこぴーのためなら……!」



 本当に俺にできるのだろうか。にこぴーのためとは言っても、夜照さんを傷つけることが。



「大丈夫だよ。だって調べたもん。ふーくんの人生の全てを」

「……いいんだな。本当にやるぞ……!?」



 だめだ、足音が本当に背後まで迫ってきてる。やるしかない。ここで動かないとにこぴーが……!



「ごめんなさい――」



 背後から聞こえたその声の主が。



「――お嬢」



 俺の隣に並び、夜照さんの身体をスタンガンで傷つけた。



「っ……!?」



 強烈な電撃を浴びた夜照さんの身体が木を背にして崩れ落ちる。同時に月島さんの身体も崩れ落ちた。2人ともボロボロと涙を零して。



「お嬢……ごめんなさい……ごめんなさい……! でも……私は……私にも、文月くんと同じで……譲りたくないものがあるんです……!」



 涙と共に零れ落ちる。運命だと諦め続けていた月島さんの想いが。



「もっと頭のいい高校に行きたかった……。髪染めたくなかった……もっとかわいい服着たかった……。私も……恋をしたかった……! だから……夜照家から抜けさせてください……!」



 なぜこのタイミングで月島さんが反旗を翻したのか。そんなこと、俺にはわからない。でも。



「文月くん……言ったよね、私を守ってくれるって。責任……とってよね」



 涙に濡れながら笑う月島さんの顔を見たら、そんなのどうでもいいと思った。

次回第1章最終回になります。よろしくお願いします。少しポイントが下がってきているので、よろしければ☆☆☆☆☆を押して評価、そしてブックマークのご協力をぜひぜひよろしくお願いします……!

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