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群馬に豪雨の降り注いだ日

作者: 有明未明

お題:群馬の豪雨 制限時間:1時間

 火星と木星の狭間、アステロイドベルト。

 一台の宇宙探査機がそのメインベルトを構成する小惑星の一つに接近していた。

 恐らくこれを読んでいるであろう2021年――本作品の作中年代からは過去に当たる――の読者諸賢においては、日本の探査機はやぶさが小惑星イトカワに接近、着陸したことが記憶に新しいだろう。

 この宇宙探査機も、はやぶさ同様に日本から送り込まれたものだ。しかし、その性質は大きく異なる。

 この探査機は、何らかの学術的な目的によって打ち上げられたのではない――技術の発展はコストの低減をもたらし、有人、無人問わず宇宙における諸営為を身近なものにしていた。

 この探査機は日本のある自治体が、イベントで打ち上げたものだった。目指す目標はアステロイドベルトのC型小惑星。直径23.44㎞のその小惑星は、1988年に日本で発見されたもの。

 名を、群馬といった。


 探査機は小惑星群馬を観測、着陸態勢に入る。

 備え付けられたカメラは群馬の映像を記録し、遠く地球、自治体群馬へと送り続けている。送られた映像は町おこしへと利用され、ローカルテレビを通じて群馬県の人々の目に入るだろう。その映像は、解像度の低さと外面の殺風景を「宇宙」というブランドで補って、人々の耳目を賑わせるに十分なものだ。しかし探査機には、己の行いに伴う達成感や、与えることになる影響に対する感慨はない。ただ、己の作られた目的を――存在理由を――愚直に果たすのみだ。

 エンジンを噴射し、ゆっくりと小惑星へと接近していく探査機。しかし、ここで一つのトラブルが発生する。

 宇宙空間への装置の送り込みが容易になったことのもたらした帰結、スペースデブリの爆発的増加。

 デブリは接近中の探査機へと衝突し、その一部を破壊。破壊された部品は新たなスペースデブリとなって宇宙空間へとまき散らされる。

 群馬にデブリの豪雨が降り注いだ。

 

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