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第21話 俺はふと、空を見上げるふりをする。

(とあるイケメン視点の話)

 

目が覚める。今日は休日だ。特に予定が入っているというわけでもない。

 

顔を洗ったり、適当に朝食を作ってから、また二階の自室に戻る。ふと、窓の外を見やる。薄い雲が、コントラストの強い青空にかかり、淡い水色を作り出している。さわやかな朝だ。休日の朝、こんな時間に起床する高校生も珍しいだろう。

 

ふと斜め下をのぞき込んでみると、佐奈が立っていた。髪の毛の端を指に巻き付け、なにか落ち着かなさそうにそわそわとしている。いったいなにをしているのだろうか。そう思っていると、黒塗りの高級外車が上品なエンジン音とともにやってくる。運転席から降りたスーツ姿の男が、後部座席のドアをあける。するとそこから一人の好青年がおりて、彼女をエスコートする。

 

見覚えのある好青年だった。

 

富士山蓮。文化祭後の後夜祭で彼女と親しそうにしていた男。礼儀作法部のモテ顧問として活躍する学年きってのモテ男だ。そんな彼が、高級外車とともに去って行く。上品なエンジン音の余韻を残して。

 

いったい俺は、なにをぼけっとしているのだろうか。

 

やはり、彼女は彼のことが……。彼女の落ち着かない様子を思い出す。俺まで落ち着かなくなってきてしまった。

 

俺はもう一度ベッドの中に入って、ふて寝をすることにした。

 

今日はもう疲れたお。

 

これ以上は何も考えず、眠ってしまおう。


 

とは思ったものの、一度はっきり目を覚ましてしまっているので、簡単に寝付くことができない。中途半端にもんもんとしてしまって、逆にしんどい。

 

ぼーっとしていると、彼女のことが頭に浮かんでは消えてゆく。それを続けているうちに、現実からかけ離れたような自虐的な妄想にとらわれてしまう。

 

「ああ、もう!」

 

仕方がない。勉強でもしよう。少なくとも、なにかほかのことをしているほうが、気は紛れるだろう。

 

幸い、集中力はあるほうだ。勉強でもしていれば、気が紛れるだろう。

 

そう思って、数学の教科書を開ける。すると、彼女に教えてもらった問題を解くたびに、彼女の顔が浮かんでくる。彼女が教科書に顔を近づけた時に香った、彼女の匂い。そんな些細なことまで感じられるほど、鮮明に記憶が蘇ってくる。くそう、嗅覚からの情報は残りやすいみたいなことを富士山蓮がいっていたが、ここまで強力だとは。

 

「はあ」

 

ため息をつきながらも、数学の問題を解き進んでいく。

 

気がつくと、数時間が経過していた。

 

少し空気がよどんできている。休憩がてら、窓を開けて換気をしようか。

 

そのついでに、窓の外をみやった。すると、さきほどみた黒塗りの外車が、軽快なエンジン音とともに戻ってきた。なんというタイミングだ。

 

そこから彼女が降りてきた。

 

俺はふと、空を見上げるふりをする。彼女からも、現実からも目をそらしてしまった。そんな罪悪感のようなものを抱きつつ、そろそろ彼女は自宅に入ったころだろうか、なんてことを思いつつ彼女のほうをみやる。すると、ばっちり目が合ってしまった。

 

思わず扉をしめる。いやいや、なにをやっているんだ。

 

俺は急いで玄関まで向かう。そして勢いよく扉を開けて、

 

「佐奈」

 

彼女の名前を呼んだ。

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