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第19話 「いっしょに、回らないか?」

(とあるイケメン視点の話)

 

気がつくと文化祭当日になっていた。やはり、それなりのことをしていると時間の経過というのはあっというまだ。

 

テニス部のみんなと、飲み物には疲労回復効果が期待できるものがいいかもしれないですね、なんていう話をしながらメニューを作ったり、美術部の人と休憩スペースということですのであまり過激な作品はこちらの方での展示を控えることにしましょうか。なんていう話をしたりして、休憩スペースを作ることにした。実質は喫茶店みたいなものだが。

 

喫茶といえばメイド喫茶だろうと思ったのだが、スタッフがそんな格好をしていては、美術作品を楽しんでもらうことができなくなるのではないか、というもっともな反論に負けて、俺たち男の楽しみは奪われたのであった。まあ、学校一の美少女とお堅い風紀委員長がメイドさんに扮してご奉仕してくれるなんて、確かに危険過ぎるかもしれない。

 

オーダーをひたすら受け、ドリンクを用意する。

 

そして、気がついたころには文化祭が終わっていた。うぇーい。

 

いや、なにか楽しいイベントとかはなかったのかよっていいたくなる気持ちはわかる。っていうか俺が一番それをいいたい。しかし、部員がこれだけしかいないなか、一意を狙うべく営業している俺たちに、文化祭を楽しむ暇などなかったのであった。

 

もっとも、こうやってみんなとなにかをやっている時間というのは楽しいものだったが(小並感)。

 

来年はもっと、文化祭らしい楽しみ方ができることを祈ろう。女の子と一緒に回ったりね。ずーん。なぜか絶望的な気持ちになってしまった。

 

まあいい。別に文化祭だけが楽しみというわけでもないのだ。文化祭は、後夜祭が終わるまでが文化祭なのだ。

 

本校の後夜祭には、キャンプファイヤー的な催しがある。


 

公立高校にしては珍しいと思うのだが、体育館でビンゴ大会が行われたり、校庭では男女がいちゃついたりできるイベントがある。

 

文化祭そのものにひけをとらないぐらいのお楽しみだ。翌日になればきっとこういう台詞をいわれることだろう。昨晩はお楽しみでしたね!

 

実際、そういう展開になる日も遠くないと思う。というのも、この文化祭後のイベントで一緒に過ごした男女二人にはカップルになれるなんていう伝説があるからだ。まあ、どこにでもあるような話だ。

 

そもそも、お互いがそういう認識を持ってその時間を過ごすということはつまり、相手に好意を持っていると示しているようなものだ。そんな二人が付き合わないなんていうほうがおかしな話だろう。

 

こういうイベントだから、比較的気になっている子を誘いやすい。全校生徒がほぼ参加しているし。もしだめそうな雰囲気になっても、俺そういうジンクスみたいなのは知らなかったといってしまえばいいだけのことだ。まあ、それはそれで悲しいけどな。

 

ふと、佐奈を探してみる。

 

校庭の一点で視線が止まる。

 

そこには、手をつないでいる彼女と富士山蓮の姿があった。離れたところで燃えている炎と重なって、なにかそれっぽい雰囲気を醸し出している。

 

まさか……まあ、そういうことなのだろう。

 

彼女たちは、俺に気がつく様子もなく、隅のほうで会話をしているみたいだ。その内容は遠すぎて聞こえない。

 

俺はなにかいたたまれない気持ちになって、部室に戻ることにした。

 

部室には、まだ片付けられていない装飾品や美術部が作った作品などが飾られてある。

 

その作品の中には、後夜祭をテーマにしたものもある。作品名は結ばれる男女。

 

「はあ」

 

思わずため息が漏れる。

 

こんな気持ちになるのなら、もっと積極的になればいいものを。

 

この部活を作った目的は、モテるやつにモテ方を教わって、彼女にふさわしい人間になること……だったはずだ。

 

それが現状はどうだろう。

 

モテるやつに彼女を奪われて、こんな場所で膝を抱えている。

 

情けない限りだ。

 

ふと、電気がつけられた。

 

「なにしてるの? こんなところで」

 

気がつくと彼女がいた。

 

「そっちこそ。こんなところにきてどうしたんだ?」

 

「部室のほうにいく姿が見えたから、なにしてるのかなと思って」

 

「ちょっと先に片付けでもして置こうかと思って」

 

「ふうん。後夜祭、回ったりしないの?」

 

「そうだな……」

 

いつもの俺なら、あいにくと一緒にまわるような人がいないものでね。なんていう皮肉めいた台詞を口にしていることだろう。しかし、それではなにも変わらない。

 

「いっしょに、回らないか?」

 

俺がそういうと、彼女は驚いたような表情をする。

 

「え、いいの?」

 

「いいのって、そっちこそいいのか?」

 

「うん……そもそも、純を誘おうと思ってここまできたんだもん」

 

そんなことをほほを赤らめながらいわれると、勘違いをしてしまいそうだ。彼女はさっき、富士山蓮と一緒にいたではないか。これは、きっと、幼なじみとしての関わり。そう思うが、彼女の顔をみているとそんなことはどうでもよくなる。

 

「それじゃあ、いこうか」

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