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プロローグ(とある美少女視点の話)

(とある美少女視点の話)


いつからだろうか。気がついたらわたしは彼のことを好きになってしまっていた。いつごろからなのかは思い出せないものの、中学校のときにははっきりと恋愛感情を抱いていることを自覚していた。


そんなわたしは受験の直前期、十一月から必死に勉強し、ぎりぎりの成績で彼が目指している進学校に、なんとか入学することができた。


帰宅してからひたすら勉強。食事やお風呂の時間も勉強。いままでリラックスタイムとして機能していた時間が、勉強のための時間となった。


なぜそんな時期からさらに勉強量を増やさなければならなかったのか。


彼は頭はいいが、あまり勉強をしているふうではなかった。部活に尽力していて、成績はそこまで芳しくなかった。だから、それなりの勉強をしていれば、彼と同じ高校に進学できると思っていたのだ。


しかし、彼は最後の模試で志望校をワンランクアップさせ、さらにはA判定を叩き出した。


対するわたしはD判定。


そんなわたしが、直前期にワンランク上の学校を目指すなんて言い出したときには、担任の先生からたいそう心配されたものだ。


しかし、なんとか結果をつかみ取ることができた。


これで一安心……なんていうことができればどれほど楽だったのだろう。


彼はとてつもなくモテる。


どれぐらいモテるのかというと、うちの学校にいる女子の半数以上が、抱かれてもいいと答えるぐらい。別に本校女子の貞操観念が緩いというわけではない。むしろ進学校ということもあり、比較的まじめな生徒が多いぐらいだ。


それにもかかわらず、ありとあらゆる女の子が彼に狂気的なほどの好意を寄せている。


ちなみに、わたしもそのうちの一人だ。もちろん彼に抱かれてもいいと思っている。というかむしろ抱いてほしい。


ただ、行動に移すことは絶対にできない。


もしそんなことをしてしまえば、彼の親衛隊である【圧倒的同調圧力の罠】により、学校を強制的に退学させられることになるだろう。


行動は死につながる。しかもそれは即死トラップではなく、じわじわと精神を削り取っていく、毒ダメージのようなものだ。


せっかく死ぬほど勉強して彼と同じ学校に入ることができたのだ。そんなことで高校生活を強制終了させられるわけにはいかない。


でも、彼になにもアプローチをかけることができなければ、根本的に意味がないのではないだろうか。


かといって何かを進展させて、それこそ自分からなにもかもを台無しにしてしまうということはできない。そんなもどかしい思いを抱いたまま、今日もいつものように振る舞う。


「おう、おはよう」


彼がそう返事を返してくれただけでも、うれしさを感じてしまっている自分がいる。


ほくほくと緩んだ顔になってしまう。だらしない顔をしているなんて思われてはいないだろうか。


そんなことを考えながら、彼と一緒に通学する。これは、幼なじみであるわたしの特権だ。


これに関しては、あの圧倒的同調圧力の罠といえども管轄外だ。


「うん、おはよ。それじゃあ、いこっか」

「おう」


 彼がそういってほほえんでくれるだけで、今日一日をがんばろうという気になれる。

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