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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第十四章 厄災の母体
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乖離する血族

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 今回の部分、実は本当に直近で展開を変えたという裏事情から、少しおかしな展開になってはいますが、さほど関与もしないでしょと適当に考えて作っています。最近環境が激変したので、こちらが疎かになってしまい申し訳ございませんが、投稿が滞ることは今の所ありません。

 次回の更新は来週月曜日22日20時となります! 次回もご覧いただければ幸せです(*´∀`*)

 


・ミラー邸宅 アルベルト居室



 ミラらがリユニオンの痕跡を辿っているのとほぼ同刻、ケイティは父親に呼び出されてアルベルトの居室に出向いていた。


 彼が何を主題に話を進めようとしているのかは明白である。件についてのお話であることはまず間違いなく、これからの展望についての話し合いであろう。ケイティにとってここが正念場だった。今回の事件についてある程度まとまった行動を取るためには、父親のアルベルトとの意見の合致が重要である。しかしこれは、ケイティにとって大きな賭けでもあった。


 これからケイティがアルベルトに要求する事柄については、ミラー家がサイライ事件からの系譜である一連の事件に関与していた証拠を公開する事が必要である。プライドの高いアルベルトを説得するためには相当な困難を極めるだろう。


 このケイティの想定は、現実のものとなった。

 ケイティのことを呼び出したアルベルトは、彼女が居室に入ったのとほぼ同時に、資産家のトップとして、今回の件についての決断を話し出す。


「ケイティ、件のことだが、我々はパールマンら魔天コミュニティと取引をしないことにする」


 アルベルトは権威尽いた椅子にどっぷりと座り、威圧的な態度でケイティにそう告げる。

 彼の言葉の真意は極めて単純である。アルベルトは「徹底的な利己主義」を取ったのだ。ここで仮に、魔天コミュニティと取引を行わず、迅速にこの街から逃げれば、少なくともミラー家としての多くの資材は失っても、ミラー家が得てきた信頼や社会的地位は守ることができる。


 ほぼ確実に消し飛んでしまうルイーザの全人口という犠牲を払うことになるが、徹底的に利己主義的な思想を持って行動に出れば、それらの犠牲をスケープゴートとしてミラー家を守ることができるだろう。

 これは、ケイティが危惧していた厄介な事柄の一つであり、それでいて最も可能性の高いものであった。ここからどのように進めるか、それがネックとなるだろう。その前提を考慮し、ケイティは早速説得を始める。


「お父様、失礼を承知で言わせていただきますが、正気でしょうか? 私たちは、このルイーザという街でかなり大きな社会的信用にあります。そして、それが他の都市部において適用されるかは不明……どちらにしても、私たちはこの街を見捨てるという選択肢はあまりにも不合理であると判断できます。それを、前提において判断しているのでしょうね?」

「勿論だ。これまで、ミラー家がある程度徹底的に利潤を追求でき、尚且それが現実的な部分で反映されてきたのは、紛れもない事実だ。だが、ミラー家が持っている地位や資産、そしてこれからも存続させていくためには、必要な犠牲なんだ」

「随分と都合のいい必要悪ですね。いい加減、現状をよりクリティカルに見たほうがよろしいのではないでしょうか?」


 かなり辛辣な物言いに対して、アルベルトは呆れた調子で尋ねる。


「ケイティ、お前は今後、ミラー家を継ぐものだ。そこに古典的ジェンダーロールなんてものはない。いいか? お前は徹底的に、ミラー家の存続と利益のみを考えればいいんだ」

 この言葉に対して、ケイティは睨みつけるように告げる。


「お父様、勘違いなさっているようですが、私は徹底的に利益のみを考慮しています。最も、実益を考えれば魔天コミュニティとの取引をすることが最善であると考えています」

「では、その利潤追求の前提として、ミラー家はこの先も存続するのか? 否、確実に存在しないだろう。お前は魔天コミュニティと取引をするということを理解せず、その提案をしている。いくらこちらにアドバンテージがあると言っても、パールマンはそれ以上に曲者だ」

「存じています。だからこそ、こちら側で遅延を……」


 ケイティがさらなる弁明をしようとした時だった。アルベルトは大きくかぶり振り、その主張を突っぱねる。


「先程まで、気が動転していた。だが、冷静になれば、パールマンはそれすらも計画の範疇である可能性が濃厚だ。それほどまでに、やつは恐ろしい人物だ。つまり、この場で我々ができる最善手は、心苦しいがこのままルイーザを囮にし、我々だけでも逃げ果すことだ。それが、ミラー家のさらなる存続と躍進、そして経済の成長に寄与するものだ」


 尤もらしい言葉を並べ立てるアルベルトに対して、ケイティは汚物を見るような目を向け、語気を荒げながら指摘する。

「……お言葉ですが、この状況にまで事態が混乱したのは、少なくともこちら側の行動に原因が考えられるのではないでしょうか?」

「どういうことだ?」

「ミラー家は、魔天コミュニティと共同して、この街の破壊計画を企てていました。ですが、我々はそんなことをするべきではなかった。いくら、ザイフシェフト事件への関与が認められる資料が漏洩したからと言って、件のお父様の行動はあまりにも短絡的ではありませんでしたか? それに、私に対しても、開示していない情報があるのではないでしょうか?」

「何を言っているんだ!?」

「言葉のとおりです。実際、私はお父様の行動があまりにも不審に思えて仕方ありませんでした。一つお聞かせください。貴方は、グルベルト孤児院のミラ様に対して、正確に言えば彼らの運営している天獄について、意図的な経済の妨害行為を行いましたね?」


 ケイティは捲し立てるようにそう尋ねる。すると、アルベルトは驚いた調子で目を見開き、すぐさまケイティに対して情報の出どころについて尋ねる。


「お前……どうしてその情報を!?」

「実は、私の所にも魔天コミュニティなる存在が蠢いていたのですよ。彼らは自らを“メルディス”と名乗ってはいますが、その実態は宴と呼ばれるゲリラ団体です。彼らは私に対して、カーティス探しを口実に、天獄を社会的に潰す計画を提示してきました。貴方ならわかるでしょう? これらの計画を果たすためには、少なくともルイーザ全土の経済に大きく影響するミラー家が関わらなければできない所業……貴方も、ゲリラ団体宴とか変わっているのでしょう?」


 ケイティのクリティカルな言葉に、アルベルトは少しだけ混乱しながらも、自らに起きた事柄について話し出す。


「クソ…‥パールマンの名前が出てから不審には思っていたが、奴らお前にまで……」

「どういうことですか? 説明をお願いします」

「……なるほど。奴らは、いわば保険を掛けていたんだな」

「やはり、貴方も、いえ……ミラー家の権力もこの件に関わっていたんですね?」

 ケイティの言及に対して、アルベルトは苦しそうに話し出す。


「その口ぶりなら、魔天コミュニティと我々ミラー家が行おうとしていたことは知っているだろう。それなら話は早い。ミラー家は、先行的にルイーザ破壊計画を知り、尚且我々に有益な立ち回りを行うように契約を結んだ。その手付金代わりに、ミラー家はとある事柄を、トゥール派から要求されていた。それが、“便利屋天獄への依頼人を完全に断つこと”だった。内容は単純だ、ミラー家の経済的な圧力から、天獄を利用するすべての者を阻害する、それだけだ」

「……だから、天獄の皆さんは2ヶ月間仕事がなかったんですね?」

「あぁ、そういうことだ。しかし、天獄はグルベルト孤児院ともつながっている。そして、グルベルトのミラ院長やアイザック先生は今後の経済活動に大きな影響を及ぼすほどの技量を持っていると判断している。彼らに対して、私の地位やミラー家の認識が変わるのは、それはとてもまずい。だから、この件については秘密裏に、お前にすら伝えずに話を進めたんだ。だが、どうやら奴らはそれだけではなく、独自の判断で動いていたようだな」


 この情報を聞き、ケイティは呆れた調子で叫ぶ。


「どうしてそんなことを……?」

「相手は魔天コミュニティだ。人間側とは比にならないほどの軍事力を誇っていることは確かだった。詰まりは、こちら側は情報アドバンテージで状況を好転させるしかなかったんだ。だから、こちら側は賢く立ち回りをするしかなかったんだ」

「……彼らの目的は?」

「わからない。こちら側に話をふっかけてきたのは、パールマン直属の部下であるハミルトンだ。我々ミラー家は、魔天コミュニティが生じたときから関わっている。そうであっても、パールマンという存在は謎めいている。ミラー家の存続を考えれば、これが最良だったんだ」

「それならば、我々は今後最も、ルイーザという場における公共の利益に準ずるものでなければならないのでしょうか?」

「……無理だ」

「お父様、いい加減にしてください。感情論で動くほど、私は貴方にぬるく育てられた覚えはありません」


 ケイティの問いかけに対して、頑なに答えようとしないアルベルトは「この話はこれで終わりだ」と突っぱね、更に続けてこう叫ぶ。


「どっちにしても、今のミラー家の総帥は私だ。ボスが私である以上、これ以上の議論に意味はないことはお前も理解しているだろう? もう、ルイーザでミラー家として活動することはできない。方舟があるのなら尚更だ。ここで心中するのはお前も本意ではないだろう?」

「えぇ勿論です。我々は経営者であり、持てる知略と資源を最大限に用いて利潤を追求する……ですが、倫理と道徳に反してまで、利益を求めようとは思いません」

「……正義ってやつか? その解釈についてはお前に任せる。だが、俺は徹底的にミラー家を守る」

「どうやら、これ以上の議論は本当に無駄ですね。わかりました。一度、準備をさせてください。1時間後には戻ります」

「何を企んでいるのかは知らんが、迅速に行動しろ。方舟の範囲はどれ程のものか想像がつかない。1時間経てば、私は必要なものをまとめて、北部大都市のセリーンに向かう。もし、間に合わなければお前もセリーンに迎え」

「わかりました。それでは、すぐに……」


 残念ながら突っぱねられたケイティは、作戦を練るべく一旦グルベルト孤児院へ向かう。


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