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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第十三章 揺らぐ接触面
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激突-1

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 今回から、「激突」という節を区切って投稿します。この節は、私の苦手な戦闘描写であり、大切なシーンでもあるのですが、何度作り直してもピンと来るものができなかった部分でもあります。やっぱり、戦闘を小説にするって難しいですね(´・ω・`)

 次回の更新は今週金曜日15日の20時となっています! 続き物なので、次回も見ていただければ幸せです!



 なぜなら、襲撃者2人はよく知った人物だったからだ。


「貴様……ペリドットか!?」

「それともうひとり、エノクαか」


 エンディースに続いてイルシュルまでも戦々恐々とした調子で述べ、それを打ち返すように現れた、ペリドットとエノクαことセフィティナが姿をあらわす。

 特にセフィティナの肉体は異形そのものであり、背部から出現している赤褐色の2本の触手がうねうねと各々の方向に蠢いている。

 一方のペリドットは、退屈そうにエンディースのことを一瞥し、呆れた調子で悪態をつく。


「あぁ、君、コミュニティ側についたんだ。やっぱりあのとき殺しておくべきだったよ。厄介者(ヴェルタイン)は元気にしているの?」


 嘲笑地味た言葉に対して、エンディースは即座に自らのスポアで攻撃を行う。

 しかし、ペリドットは一切回避する様子はなく、不気味な存在にスポアの攻撃が遮られる。


「クソ……またこいつか」


 エンディースのスポアの攻撃を受け止めたのは、またも異形の化け物である。

 ペリドットこと、エノクδは多くの分身を作り出すことができる。それを悪用したこの能力は、一気に即席の軍勢を作り出すことが可能である。

 その分身の一体が今の攻撃を受け止めたのだ。


 それを認識したエンディースは、すぐに肉体を乖離させ、とっさにイルシュルの襟足を掴みながら大きくペリドットから距離を置く。



「いいかイルシュル、あの化物は自らの肉体をそのまま分身に変えることができる。下手に接近戦を選ぶのは危険だ」

「やはり、エノクδか……生き残れるのか?」

「やるか、やられるか、って話だな」


 意見の合致したイルシュルとエンディースは互いにペリドットを見据えて、自らの死を覚悟する。

 一方で、意外にも武人のような一面を見せた2人に、きょとんと疑問符を浮かべたペリドットは、いつか見た動きで4体の分身を出現させる。


「格闘家みたいだね。でも、対話するんじゃないの? 僕ら、対話する気満々で来たんだけどなぁ~。ねぇ、α?」

「そうだな。俺たちはゲストスピーカーだと思ってきているんだが、違うのか?」


 嫌味にしか聞こえない言葉を体現するように、辺りはペリドットが出現させた流動的な分身たちに埋め尽くされていて、ぐにゅぐにゅと水が滴るような不快な音を響かせている。

 2体は、簡易集会場のときの戦闘でも出現していた四足歩行の怪物と、半液体状の怪物がである。しかし、他の2体は未だに不定形の液状であり、まるでホラー映画かなにかに出てくる化物のようだった。


 明らかに交戦する気満々な2人は、気味の悪い笑みを浮かべながら徐々にこちら側ににじり寄ってくる。


 その進行を止めたのは、こちらも殺す気満々のビアーズだった。

 ビアーズは辺り一面を自らのスポアで満たしていて、まるで大樹の葉のように小さな刃が大量に出現している。


「ゲストスピーカーの意味を辞書で引いてこいよ。エノクαよぉ?」


 挑発的な言葉とともに、大量の刃を一気に突き立てて攻撃を開始される。

 それは瞬く間にペリドットとセフィティナに向かって放たれ、小さな室内の中をかき乱す。その攻撃は数分程度行われ、辺りは視界を完全に途絶えさせる程の衝撃だった。

 そのあまりの攻撃を見て、イルシュルとトゥールは小さく耳を打つ。


「これでくたばっていてほしいが……」

「あぁ」

「これでくたばるような奴らじゃねーんだよ。畳み掛けろバカども」


 ビアーズの忠告の通り、ふわふわと舞っている粉塵の隙間から、3本の赤褐色の槍状の何かが見事に射出される。

 それを寸前で察知したのはイルシュルとビアーズであり、2人よりも実地経験に乏しいエンディースはそれを察することができず、その攻撃がもろに直撃しかけてしまう。


 しかし、その攻撃に着弾したのはいなかった。

 ビアーズが寸前でエンディースの首根っこを思いっきり引っ掻いて体勢を崩したためだった。

 この場で最も戦力として期待できないと言っていいエンディースを助けたビアーズは、乱雑に指示を出しながら行動する。


「気を抜けば肉塊になるぞ。イルシュルと一緒にδの方をやれ」


 答えを待たずに未だ晴れていない粉塵に突っ込んだビアーズは、中を確認することなく、同じく4本のスポアで串刺しを行う。

 その中で、2本必中したような手応えを感じ、手応えのあるスポアで大きくなぎ払いを行い、そのまま突き刺さった何かを振り払う。


 すると、粉塵の隙間にセフィティナが現れ、隙をつくように歪な刀状のものをビアーズに向けて振り下ろす。


 振り下ろされた刀は確かにビアーズの背部に着弾したものの、それが皮膚に食い込むことはなく、なにかに押し込まれる形で押し返された。


 だが、それでも2人はお互いに戸惑うことなく攻防を開始する。


「ナイスな刀じゃねーか。なぁ? セフィティナよ」

「アーネストか。”厄介な奴も出張って”きたもんだな」


 やや意味深なセフィティナの言葉を聞き、ビアーズは、一応、アーネストが第三の組織に加担していることが、相手に伝わっていることを確認する。

 ここまで派手に動き回れば、二家が動くことくらい相手も承知しているであろう。それなのに、あえてそのようなことを言ったということは、伝わっているという意志の表れだろう。


 しかし、それで演技に走る連中でもない。

 特にビアーズは、セフィティナとの試合に渇望じみた欲求を感じていた。


「遊ぼうぜ、俺もたまには遊びたい気分だ」

「噂通りの戦闘狂だ。だが、この国家の第三者機関としては、ある意味ふさわしいかもな」


 お互いに皮肉とも称賛とも取れる言葉を口走り、ビアーズは背部と体幹から凄まじい量のスポアを出現させてセフィティナへと攻撃を向かわせる。


 ビアーズの攻撃は直線的でありながら、強烈な殺意が籠もった一撃である。

 それを体現するように、体幹から出現した異形のスポアは直線的な動きを行った後、セフィティナに着弾する直前にまるでホローポイントの如く中心が裂けていき、大きな花弁のようになってセフィティナに襲いかかる。


 一方、大きく裂けたスポアに対して、セフィティナは持っていた刀状のスポアをキレイに咲かれたスポアの中心に投げ入れ、自らは横転とともにそそくさとビアーズの側面に位置し、もう一つの刀で攻撃を行おうとする。


 その時、ビアーズは彼がどのような意図を持ってそんなことを行ったのかを理解した。その直後、激痛とともに前方に伸ばしていたスポアが中心から弾け飛び、まるで爆風のように異形の変化を遂げた、セフィティナのスポアが思いっきり空を舞う。


 だがそれに気を取られることなく、ビアーズはしっかりと側面部についていたセフィティナに背部のスポアで防御を行いながら、すぐに距離を取る。



「なるほど。その刃は……お前のエネルギーか」

「あぁ。この刀が俺の得物だ。コイツは、触れたものと同じものになるんだよ。だから、お前のスポアをコピーしたってことだ」

「やめていただきたいところだ」


 そんな悪態を付きながらもビアーズは更に笑いながら両腕の上腕からスポアを出現させ、かなりの速さで距離を詰め、一瞬で攻撃に転じていく。

 一方のセフィティナは、瞬時に回避から攻撃へとシフトしたビアーズの攻撃を認識したものの、反応することまではできず、攻撃を受け止めることにし、持っていた刀を眼前に迫っているビアーズのスポアに当てる。


 すると、金属音のような甲高い音とともに火花の如き閃光が辺り一面に広まった。

 しかしそんな状態を一切気にすることなく、2人は更に熾烈な攻防を続けていた。



 そんな2人の攻防の傍ら、ペリドットは呆れたように敵対しているイルシュルとエンディースに話しかける。


「全く、野蛮な連中だよ。僕らは紳士のつもりさ。そうだろう?」

「ふざけるな。あの時食らった傷は忘れないぞ」

「あらあら、それなら、もうちょっと後ろを気にしたほうがいいよ」


 その言葉を聞いた瞬間、後方で何かが切断される音が響き渡る。

 それは、背部から近づいていたペリドットの怪物を、イルシュルが切り落とした音であり、エンディースは地に落ちた怪物の腕を一瞥し、改めてペリドットのことを見据える。


「お前……」

「楽しく遊ぼうよ。リーダー?」


 ペリドットの言葉を皮切りに、彼の背後から出現した異形の存在がエンディースに向かってスポアを伸ばしていく。

 まるで無数の穴から出現するように等間隔に並んだスポアの触手は、一瞬獲物を見定めるように動きを止めた後、そしてすぐに攻撃を始めていく。


 飛んでくる攻撃を華麗に捌いていくエンディースであるが、それを嘲るようにペリドットは大きく欠伸をする。不気味とも言える態度であるが、すぐに彼の後方の粉塵が晴れていき、そこには見たこともない異形の存在が大口を開けていた。



「こいつ……本当に生物なのかよ……」


 そう、ポツリと口にしたのはエンディースの後ろをカバーしていたイルシュルである。


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