前触れ
前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)
前回の切り方の問題で微妙な終わり方をしていますが、伸びしろということで…(´・ω・`) ここから、嫌いな戦闘シーンに入るので、一生懸命がんばります
次回は来週月曜日11日20時公開となります! 次回も見ていただければ幸せです(*´∀`)
「否めない。だが、話し合いのためにも、お互いの安全保障を明確にする必要がある。それについては異論はないな? 真正面からぶつかれば確実に吹き飛ぶ。確かに、第三の組織は明確にこちら側に破壊行為を行おうとしているのかはわからない。だが、話を聞くに、宴のエンディースは死にかけているんだろう? 相手は恐ろしい能力を持って行動している。こちら側の安全の担保はできていないわけだ。これについて、どうだ?」
「勿論です。相手は極めて危険な連中であることは間違いありません。ですが、ノアを筆頭に彼らは単純に破壊工作を望む連中ではありません。我々は彼らのことを誤解している。彼らは、蛮人でもなければ強欲な罪人でもない。高い知能と目的を持って行動する極めて高い社会性と組織性を持っています。相手取ることはこちらの死を意味します。この問題を解決するのは対談である、ということに状況的確性を与えるのは妥当ではないでしょうか?」
ベヴァリッジの辛い言葉に対して、全員が小さく黙り込み、各々が次の一手を考えている調子だった。
その中、ベヴァリッジに対して苦言を呈したのはエンディースだった。
「……相手のことを受け入れ、強い者に巻かれる。それがアンタが標榜した理想国家か?」
「どういうことでしょうか?」
「コクヨウの、ネフライトについて、弁明はできるのか?」
ここで出てきた新情報に、全員が目を丸くする。
勿論、事情を知っているアゲートとビアーズは、見事に計画通りに進んだことを表情に見せず、すぐさまその話に言及する。
「ほう? エンディース、詳しく説明をお願いしましょう?」
「コクヨウの新人、ネフライトは異常な力でうちの構成員と俺の半分を吹き飛ばしてくれたよ。まるで、一体の生物みたいなスポアでな」
「言いたいことを言ったらいいんじゃないの?」
「率直に言おう。ヤツは、エノクではないか? コクヨウの新人であることは俺でも知っている。コクヨウは有名人だからな……そこに新しいメンバーが加入したとなると、話はすぐに入ってくる。ネフライトについて、説明を願いたい。魔か天で、喋るスポアを出す怪物が、どうして今の今まで名前が出なかったんだ?」
魔天のなかで、スポアが喋るなどという事象は確認されていない。それこそ、そんな芸当ができるのは常識の通じないエノク位のものだろう。
そして、これまでのベヴァリッジの言動や能力を考慮すると、これらの行動は確実に愚行である。そしてそんな失態を起こす人物でないことは、この場にいる全員が承知している。
この状況から言い逃れをするのはかなり辛いものだろう。
しかし、そんな状態であってもベヴァリッジは表情を一切崩すことなく、つらつらと続ける。
「彼はコクヨウを管轄しているティエネスさんが連れてきたメンバーですが……」
「だが、コクヨウの責任者はメルディス様、アンタにあるはずだが?」
「やや不明瞭でしたね。選出したというのが適切でした。ヴェルタインさんの穴埋めのために、メルディスが運営している施設で特に秀でた人物を選出したのです。それが彼、ネフライトさんでした。ですが、具体的に彼のことは彼に一任していたので、彼に説明をお願いしましょうか」
「最高責任者ともあろう方が、随分な失態だな?」
この言葉を聞き、エンディースはここぞとばかりにベヴァリッジを叩こうとする。
けれど、ベヴァリッジはそれでも毅然としていた。
「そうでしょうか? 本来、国の最高権力者とはそういうものでは? 我々はあくまでも”権利”を持つ。そして、それを行使するのみ。つまり我々国を代表するものは、各部門に連なるプロフェッショナルを信じ、その責任の肩代わりをし、そしてフォローアップを行うことです。エンディース様、私たち全員が、すべての分野において完璧な能力を持つ、いわばジェネラリストとしてここにいるのではありません。私たちは、責任を取るためにこの頂に立つのです。もしよければ、貴方のリーダーシップ論を聞かせてください」
真顔でそう述べた彼女の表情は一際凛としていて、そして不気味である。
一方のエンディースは、流石にその言葉に打ち勝つ言葉が見当たらなかったのか、苦虫を噛み潰したような表情で顔を背ける。
それを見ていたビアーズは「まぁまぁ」と、とりあえず2人を制しながらメルディスに対して言及する。
「だとしても、お前らしくないじゃないか。どうせ徹底的に調べているんだろう? 今の話を聞いていたら、下限なしの能無しじゃない限り、新人がエノクであることくらわかりそうだがな?」
「勿論です。検査にはかけましたよ。私だって、信じるという単純な言葉だけで国防を担うことはさせませんから。エネルギー比率、量、想定されうる技術、全てを調べました。こちらがその資料です」
「ずいぶん準備がいいな」
「ツッコまれることがわからないほど無能ではありませんよ。こちらをどうぞ」
ベヴァリッジは上品そうな笑みを浮かべそう言うと、すぐさま持っていたカバンから首尾よく資料を机上に並べ、一つ一つ数値について解説していく。
「エネルギー比率は、天のエネルギーのみであり、量についても極端に逸脱した量ではありません。これについてのデータは、メモリーボックス含む、管理塔-Iのデータベースに提出していますし、判定装置の使用履歴もあるはずなので、どうぞお調べになってください。ここまで徹底的に調べていたので、スパイの可能性を考慮できていませんでした。申し訳ありません。それについては、この場でお詫びします」
つらつらとそう述べたベヴァリッジは、すぐに頭を下げて、即座に話題を転換する。
「ですから、スパイとして侵入者がいる以上、こちら側の情報はある程度流れていると推察していいでしょう。そのためにも、行動が必要です。具体的には、先程のDADの確証と早急の対話が必要です。どうでしょう? 異論はありませんか?」
すっかりペースを握られてしまったことに、ビアーズは若干苛立ちのような感情を抱くが、そこはベヴァリッジの能力と十分整合する結果になるといえるだろう。
そのため、特段取り乱すことなく、ビアーズはすぐに次のプランに移行することができた。
「それもそうだ。”対談は早急に”だな」
ビアーズは、淡々とそう言った。その直後、ビアーズの真横の壁が強烈な粉塵を上げて吹き飛ぶ。 ビアーズはそれに適当な「なんだ!!?」と声を上げ、すぐにその場にいた全員に警戒を呼びかける。
「第三の組織だ。アゲート君は、ベヴァリッジを守ってやってくれ。他の全員は、臨戦態勢を」
その指示を聞き入れる以前に、臨戦態勢に入っている各々は、爆撃されたような壁を一瞥し、ゆっくりと荒い呼吸を整える。そこに現れたのは、2人の人影である。
不気味とも形容できるそれは、異形の佇まいを浮かべているように見え、それを識別したイルシュルとエンディースは驚嘆の声を上げる。




