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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第十三章 揺らぐ接触面
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アンフェアな契約

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 これ含む3つの部なんですが、本来は一個であげる予定だったのですが、直近で大幅な修正が入ったという裏話があったりします。こういうところが連載は難しいのだと改めて実感します。

 次回の更新は来週月曜日25日20時となります! 次回もご覧いただければ幸いです!

「どうやら……全てバレているようですね。すべてお話しましょう。貴方の言う通り、僕はサイライ事件の被害者であるベリアルです。そして、第三の組織として区域Aに入ったスパイです。我々、第三の組織は、”ウロボロスの起動”を目的に活動していて、区域Aだけではなく、宴やコクヨウにもスパイを侵入させています。そしてこれらは、すべてノアからの指示を受けています」


 ベリアルが説明したことを聞き、ビアーズは首を傾げながら続ける。


「しかし、随分とペラペラ話してくれるんだな?」

「えぇ。この複雑な、トラブルの全貌をほぼすべて当てていたのですから、もう貴方に情報を隠匿する必要はありませんからね。貴方の言い当てた話はすべて、正解です。ドンピシャと言ってもいい。ですが、それには幾つか、情報が欠落しています。まず第一、旧ザイフシェフトには素敵な水爆が眠っています。そしてその水爆を目覚めさせる厄災が、ここ含め魔天コミュニティには存在しています。それは、テンペストと呼称されるもので、これがまた、厄介な存在です」

「テンペスト?」


 ビアーズがそう復唱すると、ベリアルは若干困った調子で首を縦に振り、ゆっくりと話す。

「テンペストについては、内容がかなり複雑なので細かな部分は省かせていただきます。端的にいうと、魔天のエネルギーが一定の部分に飽和することで、厄介な現象を撒き散らすということです。それが原因で水爆が誤爆してしまう可能性があるんです。それを止めるためには、魔天の力を一旦消し去るためにウロボロスを起動させる必要があるんです。これで、全ては繋がりましたか?」


 ベリアルの話を聞き、ビアーズはそれを踏まえてそれぞれの目的についてを羅列する。


「なるほどなぁ? つまり、トゥールと宴は各々の目的のために25年前の事件の舞台を吹き飛ばそうとしていて、その影でメルディス派の総統ベヴァリッジはサイライ事件からの系譜からトゥールらに復讐をしようとしている。そして、ベヴァリッジが復讐のために使おうとしている水爆が、テンペストっていう天災によって誤爆する可能性があるから、君たち第三の組織が活動している。こんな感じ?」

「概ねその通りです」

「それなら、第三の組織がどうして今回のトラブルを知ったんだ?」

「それについては、アプローチの成功率に関わるので」


 ここまで来て詳細を出し渋ったことに対して、ビアーズはとある取引を持ちかける。


「……君は、自分のことを知りたくはないか?」

「というと?」

「ベリアル君、君は、自分に出自について知りたくはないか、ということだよ」

「知っているんですか? 僕のことを……」

「勿論だとも。俺は君のことをよく知っている。だが、君のことを知っているのはこのコミュニティの中でも最古の連中だろうな。そして、その中核の情報を持つものが、ベヴァリッジだ」


 ビアーズは、ベリアルがこのトラブルに参加した理由が何となくわかっていた。

 彼は、まだ物心がつかないうちに人間と魔天のゴタゴタに巻き込まれ、人間からの過激な洗脳教育を受け、完璧な実験素材として教育された。恐らく、今回のように魔天コミュニティに密接に関わる問題は彼にとっても「嫌なこと」なはずだ。

 そこまでしてこの危険な状況の身を投じたということは、それなりの理由があると考えて然るべきだ。

 ベリアルの複雑な出自を知るビアーズは、その目的を「自分の出自を調べること」であると推測できる。


 そのことをほとんど確信しながら、ビアーズは取引を持ちかけたのだ。

 そしてそのことは、ベリアルも察していた。



「…………取引をしようというのですか?」

「そういうことだ。今回のトラブルの収束に貢献してくれれば、そのことについて教えよう。君にとっても素敵な取引じゃないの?」

「貴方、人の心理状況でも読めるんですか?」

「君ほどの実力者にそんなこと言われるなんて嬉しい限りだな。どう? する?」


 ベリアルは元々、自分の両親探しも目的の一つである。それを考慮すると、ビアーズの提案はまさに答えへの一本道である。

 しかし、アプローチに関してはどうすればいいのか悩むものだ。

 それを表現するように、ベリアルは暫くの間悩み続け、最終的にとある決断をする。


「リーダーに相談してからで、いいですか?」

「今すぐであれば、いいよん」

「なるほど。ビアーズ様、貴方は絶対的に、こちら側に協力していただけますか?」

「勿論。お互いに、フェアである限りはね」

「……わかりました。我々がやろうとしていることをお伝えしましょう」



 ついに話を収束させたビアーズは、してやったりと言わんばかりの顔で笑う。

 しかし、それを既のところで遮るものがいた。


 一瞬にして、辺りは閃光に遮られる。狂気的な光に応接室にいた2人は驚きながらも自らに何が起きたのかを案じ、ゆっくりと周りを見回した。

 一方で出現したそれは、一切身を隠すことはせずに楽しげに笑う。


「いやいや、うちの構成員に取引をふっかけるなんて随分なことしてくれたね。ビアーズ」

「こんにちは、ノア。久しぶりといったほうがいいか?」


 現れたのは第三の組織のリーダーであるノアだった。

 どうやってこんなところに出ているのかは不明であるが、正直なところビアーズもノアという存在の奇怪さは十分理解している。そのため、特段驚くことなく訪ねていく。


「ていうか、どうしてこんなところに湧いてきたんだ?」

「ゴキブリみたいな言い方するね~。ま、こっちとしてはうちのメンツが誰とお話しているのかも把握済みっていうことだよ。それにベリアル、とりあえず君が今回のプランに参加した別の目的について容認していたけど、これ以上情報を漏らすことは勘弁だ」


 まさかの紊乱者に対してベリアルは早速悪態をつく。


「だってノア、彼は僕ら側じゃないの? 協力関係を結べばいいんじゃないの?」

「こら、僕を貶めようとしても駄目! 君は二家を舐めすぎだ。いいかい? 二家っていうのは究極の偏屈愛国者の団体と言っていい」

「そいつは心外だ」

「もはや変態の境地と言っていいだろう」

「あんたが言うのかよ。どっちにしても、この際だから全部話してうまくことを運べばいいのでは?」


 しれっとノアにそう告げたベリアルだったが、勿論のことこれの意図を理解したノアは、呆れた調子で言及する。


「君ねぇ、両親を知りたいだけでしょう?」

「ね~お願い、一生のお願い! フォローは全力でするからさ!」

「全くもう……可愛い君のためならいいかなとも思えて来るよ」

 そう言いながら、ノアはもの一つ考えた後に、イレギュラーな存在であるビアーズを取り入れた考えを思案し、一つのプランをビアーズに提示する。


「なぁビアーズ、お一つ取引と行こうじゃないか」

「あぁ~、俺もその取引乗った。従わないとコミュニティを吹き飛ばすっていうことだなぁ?」

「相変わらず察しのいいんだね~。そういうことだ。絶対に、こちらのプラン通りに行動してもらうからね?」

「ありがとうノアく~ん」


 楽しそうな2人の会話を聞き、ベリアルは頭に疑問符を浮かべる。


「そういえば、2人ってどういう関係なの?」

「大人の事情ってやつだよ。かつて同じ夜を過ごした仲さ」

「嘘言ってんじゃねーよ。てめぇこっちが下手に出てれば調子こきやがって」

「すいませんでした」

「俺が熱い夜を過ごしたのはキャノンだけだっつーの」

「そんな情報いらねー」

「いいからとっとと話してよ。全く、さっきまで切迫してたのに緊張感はどこに行ったんだか~」


 ベリアルの促しに、ようやくノアは第三の組織がプランしていた計画を話し始める。


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