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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第十三章 揺らぐ接触面
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被害者の目的

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 多分今までで一番大切な部分ですが、真面目なときに不真面目なことをするのが割と好きです。この物語は全体的に重めなので、もう少しライトな方向性を目指したいと思いまする。

 次回は今週の金曜日22日20時となっています! 次回もご覧いただければ幸せです!


 ディスプレイには「解析終了」の文字が出ており、ビアーズはそれを視認すると立ったままキーボードを操作する。

 そして、とある人物たちのDNAデータと照合し、その結果を一瞥したビアーズは、とある面白い事実にたどり着く。



「アゲート……いや、”ベリアル”だったのか」

 行き着いた答えは、アゲートの正体だった。

 ベリアルという名前は、正式な名前ではない。というのも、彼に名前を与えたのは人間である。


 ベリアルは、100年ほど前のサイライ事件の時に誘拐された被害者である。そして彼は、現メルディスことベヴァリッジにより延命措置を受けていたメルディスとトゥールの実子であり、誕生した直後にサイライ事件に巻き込まれてしまった。


 このとき、彼に与えられた名前が「無価値」を意味するベリアル、という名前だった。その後彼は、サイライの解体により消息を絶ってしまったため、どのような経緯でアゲートとして区域Aに入ってきたのかは不明である。そもそも、この「ベリアル」という人物についての情報が入ってきたのは、それこそ25年前のザイフシェフト事件によって得られたものであり、詳細な情報はほとんどわからない。


 ベリアルがアゲートと自らを偽って、第三の組織のスパイとして入ってきたのならば、ベヴァリッジが不自然に彼のことを区域Aに所属させたのも合点がいく。

 恐らく、ベヴァリッジもアゲートの正体を知っていて区域A職員として手元においたのだろう。どのような目的があるのかは不明だが、大方自らの手元に彼のことをとどめておきたかったと推測できる。


 そこで、ビアーズはベヴァリッジが持っているメルディスとトゥールへの強い執着について思い出すことになる。

 ベヴァリッジは元々孤児であり、メルディスとトゥールはほとんど彼女の両親のような存在であった。そのため、2人からかなり影響を受けていて、最高権力者となった今でも人間との協同を強く表明し、魔天コミュニティの安定を目指していた。

 その傍ら、ベヴァリッジはエノクβ事件により命を落としかけ、コールドスリープを施した2人の命を救おうとして、必死にその治療方法を探していた。だがそれもコールドスリープの制限が切れてしまったようで、結局彼らの命は尽きてしまったと聞いている。


 このことでかなり心に傷を負ったベヴァリッジは、続いて彼らの唯一の遺産である、ベリアルすらもサイライによって失ってしまう。更に、その後のザイフシェフト事件で誘拐された被害者たちはすべてメルディス派の人物、つまりベヴァリッジに縁のある人物ばかりだったはずだ。

 そしてその理由は、トゥール派がメルディス派の戦力を削ぎ落とそうとしたことが原因であろう。この2つの事件は、人間側の能力と誘拐という事実があまりにも噛み合っていないため、恐らくはメルディス派が標榜していた目的とは逆の目的を標榜する連中が行った妨害行為と捉えるべきだ。

 状況的に、2つの事件を画策したのは、トゥール派だろう。そしてそれは現トゥールのイルシュルが行えるようなことではない。主犯は彼の秘書であるパールマンと考えて問題ないだろう。



 これらの事実から、ビアーズはとある厄介な事実に到達する。


 もし仮に、今回の一連のトラブルにベヴァリッジが知っていたのならば、また違ったニュアンスを持つことになる。

 少なくともベヴァリッジは自分の愛する多くの者たちをトゥール側により失っている。そして今、トゥール派は次に行われる最高権力者選挙の票を稼ぐために25年前の舞台となった街を滅ぼそうとしている。もしかしたら、ベヴァリッジはこれらの騒動を利用して、トゥール側に復讐しようとしているのかもしれない。


 それならば、彼女がやすやすとスパイを入れた理由に十分な確証を持つことになる。

 恐らく、ベヴァリッジは今回のトラブルを利用してトゥール派に対して復讐を行おうとしている。そしてほぼ同時期、目的が不明瞭であるが、やや特殊な目的を標榜する第三の組織が動いていることを察知し、すぐにそれを利用しようと考えていた。そして、上手くスパイを隠れ蓑にし、着々と自らの復讐の計画を進めていると考えるのが無難である。

 それがどのような計画かはわからないが、ここまで厄介な状態になっていればとっとと動いたほうがいい。

 恐ろしく複雑かつ厄介な状態であるが、この状況で敢行できるアプローチが一つ存在する。


 この状況で二家会議を行う、という方法である。

 二家会議はそもそも、このような国家的危機がある場合に行うものである。そして、権力的な側面では二家に圧倒的に強いと言っていい。ここでこれを開催することで状況を明確にする事ができるだろう。

 それならば、次に行うことは明確である。二家会議を開催し、相手の動向を確認することが最も楽な手段であろう。


 ある程度方針を決めたビアーズは、何食わぬ顔をして、細胞分析室の隣りにある応接室に戻り、ベリアルことアゲートに対して、二家会議への参加を要請する。



「さ、君が行動しないっていうから、俺は一つ考えました」

「……なにか?」

「二家会議を催したいんだよ。だから君にも、参加を願いたい。というより、参加してもらおう」

「二家会議、ですか? 私は別に構いませんが、不審に思われませんか?」


 アゲートの冷静な言葉に、ビアーズは大きく首肯する。


「勿論思われるだろう。二家会議には、メルディスとトゥール双方の代表が来るからね。そこで、君は適当にエノクに対しての対応について述べてもらいたい」

「具体的な方法案とか、ありますか?」

「なにもない。そこらへんは、アゲートくんが考えてよ」

「随分と無責任な事を言いますね」

「こちらとして直近でしなければならないことは、どいつがどういう目的で動いているのかを明確にすることだ。その動向を二家会議で把握したい。君としてもそれは同じだろう?」


 ビアーズが率直に意図を伝えると、ひとしきり考えた後、ゆっくりと肯定しビアーズに訪ねてくる。


「えぇ。ビアーズさんに聞きたいのですが、ビアーズさんは、今回の事件をどのように考えていますか?」


 アゲートの問いかけに対して、ビアーズは今回のトラブルの筋書きを考え、それを素直にアゲートに伝え始める。


「少し長くなるが、俺の考えを伝えよう。事の発端は、トゥール側が引き起こしたサイライ事件と25年前のザイフシェフト事件だ。このとき、トゥール側は人間が危険な存在であるというデモンストレーションを行い、それと同時にメルディス側についていた強力な魔天の排除を行おうとした。そこで犠牲になったのが、ベリアル、イェル、グルベルト、オフィリア、ルーク、スベルン、どの人物も極めて高い戦闘能力を持つ、メルディス側……一連の事件は、これらを排除するための策略だった。そして、この選挙戦の前に、トゥール側はとあることを考えた。”ザイフシェフト事件の舞台をぶっ叩き、票を獲得する”という馬鹿げたことをだ。そして、そのことを気取ったメルディスは、逆にとある画策を行う。それが”今までの一連のトゥール側への復讐”だろう。その手段は不明であるが、その目的に板挟みにあっていたのがゲリラ団体宴だ。そして、その不明になっている手段が、君たち第三の組織を動かした……違うかい? ベリアル?」


 その言葉と内容を聞き、アゲートことベリアルはすべてを悟る。

 目の前にいるビアーズ・アーネストという怪物は、恐らくすべてのことを把握してしまっている、ということだ。


 このとき、ベリアルは少し悩んだが、第三の組織が活動している目的について話し始める。

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