怪訝な行動
前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)
今回の部分は元々は省略予定でしたが、とても重要な情報がさらっとあったので、そのまま投稿となります。若干短く、重複した事項が多いので、ここについては確実に今後変わるとは思いますが、一旦はこのまま投稿となります。
次回の更新は来週月曜日11日20時となっています! 次回も御覧になる方がいましたら幸いです(*´∀`*)
※投稿時間の遅延が発生し、22時の更新となってしまいました。申し訳ございません。
「ささ、なんの情報を知りたいの?」
この言葉を聞き、イレースはすぐさま想起阻害システムについて尋ねる。
「想起阻害システムの使用履歴を最初に見たい。調べることはできる?」
「おっけー。んじゃ今ディスプレイに使用履歴を表示するね」
そう言いながら、メアリーは手慣れた調子でさくさくとキーボードを操作し、すぐに早期阻害システムの使用履歴を表示させた。
そこに、書かれていたのは、衝撃の真実である。
想起阻害システムが使用されていたのはたった一回だけだった。そして、その使用者名と対象者は、2人のよく知る人物であった。
「使用者、ベヴァリッジ、対象者が……僕?」
「あららー、あの子、ついに完遂したのね」
かなり衝撃的な事実であるが、それに対してメアリーは酷く冷静である。
そして、そのまま続けた「完遂」という言葉は妙に意味深である。その言葉の真意を解体するために、イレースは尋ねる。
「メアリー……? 完遂って、どういうこと?」
「それについて、僕から言うことはできないね。でも、この想起阻害システムは、元々ベヴァリッジが君のために作ったものだ。このシステムが完成した暁には、君のとある記憶を消そうと考えていたんだ。君の様子を見ると、あの子は成功したんだね」
「僕の……記憶?」
「うんうん。ま、それについてはまた、ベヴァリッジに聞いてよ。現メルディスっていうことから、あの子と会うのはちょっと難しいかもしれないね」
「……なにか、僕に言えないことでもあるんですか?」
「僕は別に言ってもいいんだけど、それはベヴァリッジの意思に反することになる。僕もベヴァリッジは可愛いからね、あの子にすべて一任するよ」
「僕には言えない、そういうこと?」
「うん。まー、他の部分も調べてみましょうか。次、なんか必要な情報ある?」
はぐらかすようなメアリーの言葉に対して、イレースらはやはり怪訝な調子を隠さず一瞥するが、彼は特段気にした調子もなく疑問符を浮かべている。
どうやら、是が非でも話すつもりはなさそうだ。それを察したイレースは、次に得るべき情報を確認する。
予定ではノアの情報を確認するべきだが、それ以上に必要なのはエノクについての情報である。具体的に行動している人物がエノクであるのならばそれについての情報を得ることのほうが優先されるだろう。
というより、ノアについての情報は少ない。恐らくは調べても無駄骨に終わってしまう可能性が高い。それならば、エノクについて更に詳細な情報を調べるほうがより有意義であろう。
「エノクについての情報の検索をしてもらっていい?」
「おっけーおっけー。まずは経歴からだね、一人ひとりディスプレイに出しておくね」
メアリーはそう言うと、そそくさとディスプレイにエノクαの出自と経緯について表示される。
「エノクαは、魔天コミュニティという国家が形成される直前に誕生したようだ。彼の両親は行きずりの者だったらしく、国家として収束する前のならず者によって誕生した。そのため、彼がダウンフォールであることが判明したのは、彼の暴走によるところが大きい。魔天は元々、極端に強い家族の絆を形成するわけでもないことから、孤児として暮らすことが多い。その中でもエノクαは特に異質であり、幼い頃からその強い力を使い多くの魔天を攻撃していた。そのため、彼に名前を与えるものはおらず、エノクαはそのまま魔天コミュニティを後にする。その後の経緯は不明であるが、25年前のザイフシェフト事件時、当時の最高権力者であるベヴァリッジに対して、アイザック・マクグリンの情報を削除することを条件にエノクについての情報を記録した、エノクαレポートをコミュニティに残してそのまま逃亡した……、ようだけど、随分と彼についての情報はないんだね。経歴くらいしかない」
「そうだね。彼についての情報は恐らく最も少ない。なにせ彼は、国家誕生とほぼ同時期だからね。続いて、エノクβの経緯についても表示するね」
そう言いながらメアリーは早速キーボードを操作する。
そして、表示された情報をイレースは読み上げる。
「エノクβは、コミュニティが形成されて程なく誕生した。エノクαの詳細な情報が乏しかったがゆえ、ダウンフォールがどのような存在なのかすらわからず、魔天間の性交渉のより誕生した。彼は誕生してすぐ、身体的な数値異常により厳格な監視下にあり、多くの検査を強いられ、所謂最も”実験体”としての色が強い人物であろう。ある程度解析が終了すると、彼はすぐに大きすぎるエネルギーを封印するために物理的な拘束に見舞われる。その後、エノクγが投獄されるまで、彼はたった一人でエネルギーを溜め込み続けていた。しかしそれはエノクγが投獄され、力が更に過剰に膨張し、エノクβ事件を引き起こすきっかけとなった。エノクβ事件は、ノアの手により擬似的な収束をすることになったが、その後は彼に連れ去られたのか、エノクγとともに消息を絶った。これも基本的には既存情報だね」
「んじゃ、続けてγね」
続いてメアリーは、ササッとディスプレイにγの情報を出す。
「エノクγは、エノクβの解析がなされている最中に誕生した個体だった。彼の両親により、ダウンフォールが魔天のハーフであることが解析され、彼らの両親は投獄されることになった。当のエノクγはそのままβが投獄されている場所に投獄されたが、これによりエノクβ事件が発生し、そのままノアによって連れ去られてしまったと考えられる。これも情報は既出だね」
「はいはーい。次にδだね」
更にメアリーは、δについての情報を出す。
「エノクδは、エノクβ事件が収束後に誕生したダウンフォールである。彼を元に、ダウンフォールへの対処を確立しようとしたものの、エノクδは数値上、他のエノクとは比にならないほどのエネルギーがあるようで、本来封印を司る二家が放棄したことから、人間の国家である旧リラ(現在のルイーザ)に投棄される。その後、人間の実験を受け旧リラで大虐殺を引き起こし、その後はリラとザイフシェフトの国境で生活していたようだが、その後の行方は不明である。なお、エノクδの両親はともに高い潜在能力を持ち合わせるものであったらしく、エノクδが特に強い力を持つ個体になったようだ。恐らく、魔天すべての個体の中では最強の存在になるだろう。これは結構、新しい情報があるね」
「最後に、直近で誕生したエノクεだね。どうぞー」
メアリーはそう言うと、既にディスプレイに表記されたエノクεの経緯が書かれていた。
「エノクεは、魔天コミュニティの中で初めて軍用に作られたダウンフォールである。両親はそれぞれ、δのときと同じように、10代程度の魔天による交配により行われたが、かなりの時間を要し彼が誕生した。このときに弾き出された数値は、ダウンフォールが誕生する確率自体がかなり低く、ダウンフォールは稀な現象であることが判明した。エノクεの計画は主にベヴァリッジにより行われ、その軍事的利用が検討されているが、そのコントロールの難しさゆえ、どのような活用がなされるかは現状曖昧である。恐らくは、喫緊の課題となるトゥール派に対処するためであろう。レオンはこんな経緯があったんだ……」
「それぞれの能力について君が知っているだろう? ここでわかるエノクについての情報はこんなところかな……他になにかある?」
メアリーがそういった瞬間、ドタバタとなにかが落ちる轟音が響き渡る。
その音を聞き取った二人は、疑問符を浮かべながら扉の前に突然落ちてきた2人の人型の物体を一瞥する。
それは、廻によって飛ばされたストラスとアイザックであった。




