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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第十二章 標榜される三首
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ドミノ遊び

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 ここ最近異常なほど寒いので、面白いタイプミスが目立っています。発見時点では面白いで済むのですが、公開されてから発見すると恥ずかしいので何度も読み直しているのですが、結構ミス目立つので、連載の難しいところです。

 ということで、今回も切り方が残念ですが、この物語の背景がこのあたりからまとまり始めます。ぜひとも、終わりまでお付き合いいただければ幸いです。

 次回の更新は今週金曜日18日20時となっています。インフルにはお気をつけください……(´・ω・`)



・ルイーザ 旧ザイフシェフト グルベルト孤児院



 ミラとルネが、旧ザイフシェフト地下道の探索に行っているストラスらを招集する少し前、2人はカーティスの新居のエントラスでとある連絡を受ける。


 その相手は、カーティス探しの依頼を行ったケイティである。すぐにその電話に出たミラは、ただ一言「相談室で待ち合わせしましょう。全員でそこにいてください」とだけ残して電話を切ってしまい、今に至る。


「もしかしてまた何か、面倒事?」


 ルネは率直に本音を漏らし、項垂れるようにミラの肩に凭れ掛かる。一方のミラはため息を付いて不可解な言い回しを行ったケイティについて、ルネに尋ねる。


「なぁ、どうして彼女はこんな伝言板みたいなことしてるんだろう?」

「それって、彼女が不可解な行動が多いってこと? それなら僕も疑問に思っていて、天獄を潰そうとしている連中が彼女のことを監視しているか、彼女に役割を与えているかのどっちかだと思ったけど……違うのかな?」


 ルネの言葉にミラはかぶり振りながら、もう一つ考えられることについて話し始める。


「いや、それも考えられるが、もう一つ考えられる事がある。彼女自身が、今回のトラブルに絡むアクションを起こそうとしている、ということだ」

「どういうこと?」

「単刀直入に言おうか。俺はもしかしたら、彼女はミラー家が握っている25年前の真実を解き明かそうとしているのではないか、と思っている。25年前の事件でミラー家が関わっていたことは明白だし、彼女の正義感の強い性格ならそれを実行してようとしているのだろう。どう思う?」

「うーん……それを言われたら、彼女の行動は、父親である現在のミラー家当主にばれないように行動しているようにも見えるね、確かに」

「ミラー家はなにかときな臭いところだからな。彼女がミラー家の関わった事件を解き明かそうとしているのならばここまで慎重に行動しているのも頷ける」

「待ってー、そうなると今回の事件って更に複雑になっているような気がするよ?」

「残念だけどそうなるな」


 それを聞いてルネは辟易させられる。今までも何度かこのトラブルの複雑性を感じる機会はあったが、ここまで話が難化するとは思ってもなかった。

 そこで、ルネは自らが感じたことをミラに話し始める。


「……ね、今回のトラブルって、何組もの組織とかが、各々のプランを遂行していて、それが幾つも重なっているような重なっているような感じだよね」

「どういうことだ?」

「いや、例えばさ、天獄を潰そうとしている団体は、そのことを目的に行動にしていて、更にその団体を利用しようとしている人たちがいて、更にその人たちと敵対している人たちがいる、みたいな感じ!」

「……あながち、的外れではないさそうだな。何より、今回のトラブルは脈絡のあるものとないものの差が激しすぎるし、幾重にもトラブルが重なっているっていうのは確かにあるな」

「でも、それならどうしてこんなことを?」

「さぁーな。でも、25年前の事件からの問題であるっていうことはわかる。つまりは、この街そのものに絡む問題だろうなぁ」

「とりあえず、一旦はグルベルト孤児院まで戻ろうか。そこでみんなで話し合えば、次の行動が明確になると思うしね」

「そーだな。全く、今回も面倒事に巻き込みやがって……それ相応の報酬がないとやってられんな」

「期待できそうもないけどね~」


 ルネが虚ろな目をしながらそう言うと、ミラも同様に苦笑いをしながらグルベルト孤児院相談室まで移動し始める。



 相談室まで移動した2人は、一番乗りであったようで他のメンツが来るまで待つことになった。


 相談室は非常に小さな個室であり、正方形の机に4つの椅子が対面に設けられているため、ミラとルネ、そしてアイザックとストラス、ケイティが来ればちょうど一人分椅子が足りないため、他の部屋から椅子を持ってきて空いている場所に設置し、準備していた。

 そうこうしているうちに、地下道の探索を行っていたアイザックらが姿を見せ、やつれた調子で今度は何があったのかと尋ねる。


「急に呼び出してなにかあったのか? こっちはまだ何も調べられていないが……」

「でも、地下道のマップは作れたし、実験闘技場の発電機に不審なところがあったっていうことはわかったから、完全に何もなかったわけじゃないよ~」


 そそっかしく入ってきた2人は慌ただしく情報の共有を行う。

 すると、ミラは怪訝な調子で地下闘技場の発電機について訪ねてくる。


「ちょっと待て。どうして発電機が起動しているのに電気がつかなかったんだ?」

「そこは僕にもわからないけど、もしかしたらセフィたちがカーティスのことを攫ったのと関係しているのかもしれないよ」

「確かに、カーティスの誘拐にも関わっているかもしれないけど、あのレベルの発電機を使用しているとは思えない。もしかしたら、アルベルト・ミラーが言っていた”朽ちた方舟”と関係があるのかもしれないぞ……?」


 ミラがそう言うのとほぼ同時に、ケイティが「そのとおり」という言葉とともに入ってくる。


「御機嫌よう皆様、集まってもらったのは、今ミラさんが言っていた”朽ちた方舟”に関係しています」

「ケイティさん、随分と慌ただしく我々を呼んだということは、それ相応の理由があるのですね?」


 ミラがそう尋ねると、ケイティは話し始める。


「勿論です。実は前回、ルネさんとストラスさんに話したことで私の活動について話していないものが幾つかありました。そこで、私が今伝えられるすべての情報を話したいと思っています」

「それでは、ぜひお話ください。我々も全力で、仕事に取り掛かりましょう」

「そう言って頂けると嬉しい限りですね。実は、私の家系、ミラー家は、サイライ事件と25年前のザイフシェフト事件において、魔天コミュニティの内通者でした」


 その話を聞き、その場にいた全員が、ケイティが今回の事件に対して深く入り込んでいることを察した。そこには、前回の辿々しい彼女の話しぶりはそこになく、すべてを見透かしたような凛々しさがあった。


「我々ミラー家は、サイライ事件からザイフシェフト事件まで、魔天コミュニティと唯一のインターフェースとして行動していました。元々、人間が魔天に関しての生物学的知識を持つものはおらず、現在のトゥール派が、人間と友好的な関係を築こうとしたメルディス側に対して、”人間は魔天にとって最悪の存在である”と認識させるために、意図的に魔天の情報をサイライに渡し、更に実験体まで提供をしたのです。その実験体はストラス様のパートナーであるベリアル様……言うまでもないでしょうか?」


 ケイティはそう言いながらストラスのことを一瞥する。すると、ストラスは殺気立った笑みを浮かべながら言う。


「どうやら、アイツのことまでご承知のようだな」

「えぇ。それについては、ミラー家が厄介なことに首を突っ込んだのは確かです。私から、改めて謝罪させてください」

「謝罪はいいですよ。あのとき、何があったのか、俺はそれを知れたら満足だ」

「満足と言いながら、元凶をぶっ殺そうとしているのはどうしてなのかなー」


 ストラスが狂気的な笑みを浮かべながらおぞましい程のスポアを出現させて憎しみを全面に表している。

 それを見たアイザックはそのことを咎めながらも更にケイティに促す。


「ま、これに構わず話を続けてくださいな、ケイティさん」

「勿論です。私は、すべてを伝える義務がありますから。実験体についての詳細の情報はわかりませんが、トゥール側がメルディス側の認識を改めるために行動していました。恐らく、それを提案したのがトゥール側の参謀であるパールマンでしょう。パールマンは、参謀だけではなくザイフシェフト政府にもスパイとして活動していました。しかしそのパールマンは、人間という証拠を吹き飛ばすためにとあるものを作り出しました。それが、先程ミラさんが言っていた”朽ちた方舟”でした。これは、元々ザイフシェフト政府により、魔天に対抗するために作られたものでしたが、それをパールマンは利用し、意図的に威力の高いものを作り、それを爆発させる予定でした。けれど、パールマンはそれを起爆せずに、一つの切り札として、この街の地下にそれを安置しました。それが、20メガトンを誇る最強の水爆、”方舟”です」


 その言葉を聞き、その場にいた全員が目の色を変えた。

 特に、すべての事柄が繋がったことを悟ったルネとミラは、互いの顔を見合わせる。


「……エネルギー飽和を意味するテンペスト、周縁DADエリアウロボロス、そして20メガトンの超巨大水爆、これが一連の事件の繋がりか」

 ミラのつぶやきに補足するように、ルネが話し出す。


「方舟っていう水爆がここにあるのであれば、それが自然界に多くの影響を与えるテンペストによって誤爆する可能性がある。しかもそんな中で魔天絡みの連中がエネルギーを振りまけば更にその可能性は跳ね上がるから、セフィティナたちはそれを防ぐために色々と行動している。主な目的は、魔天コミュニティでウロボロスを起動させることであると推測していい」

 ルネに続いてアイザックが話し始める。


「旧ザイフシェフト地下道の実験闘技場の不自然な作りと切り替わった発電機から、水爆の位置がそこだろう。そしてあの施設を作り出したのは旧ザイフシェフトの政府、その中に入っていたパールマンだったことを考えれば、今回の問題は紛れもなく25年前の事件からの系譜……、そしてあの事件に関わったカーティスも巻き込まれた。この状況からあの子が巻き込まれた理由はわからないけど、セフィたちは方舟を止めるために他に何かしら必要であることを悟った。だから、カーティスを巻き込んだ……」


 一つ一つ繋がってくる事実に、ケイティがとどめを刺すように話し出す。


「えぇ。概ねそういうことでしょう。もう一つ、魔天コミュニティは確かに、この街をその水爆により吹っ飛ばそうとしていますが、それを引っ掻き回している組織、コミュニティは第三の組織と呼んでいます。その中心人物は、コミュニティ屈指の犯罪者、ノアという人物だそうです」


 その名前にいち早く反応したのはミラであり、ゴミを見るような表情で吐き捨てる。

 それに続いて、ケイティを除く全員が苦言を呈する。


「またあのトラブルメーカーかよ」

「結局、トラブル作ってるのも25年前と同じだよねー……」

「俺たちはあいつに慰謝料でも請求すべきなんじゃないの?」

「こっちは息子まで巻き込まれてるんだから100京くらい要求してもいいかな」


 文句爆発状態の全員を宥めるように、ケイティが更にもう一つ情報を提示する。


「怒り心頭なのは構いませんが、ミラー家内部の人間としてもう一つ情報があります。我々ミラー家はサイライ事件、ザイフシェフト事件どれもトゥール側と関係していますが、その中でも2ヶ月ほど前からとある計画を進めていました。それは、コミュニティと結託してこの街を吹き飛ぶす計画でした」

「どういうこと?」

「ミラー家は多くの魔天関係の事件に関係していて、ミラー家はその証拠を常に紙媒体で所持し、いわば常に互いのことを脅す関係でこの関係を保ってきました。それが、こちら側の不手際であり、その均衡が崩れたのです。その発端が、資料の流失でした。と言っても、それは私がしたことですが」


 まさかの科白に対して全員が声を上げるものの、それを振り切るようにケイティは続ける。


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