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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第十章 因果律の不協和音
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25年前の墓標

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 サブタイトルは毎回違う言葉にしていますが、、今回は既出情報ばかりでかなり悩みました。しかし、ここ最近は文字数で区切っているのですが、実際にどのようなことが最良なのかは手探りですので、ご容赦頂けれると幸いです。

 次回の更新は今週金曜日30日20時となっています。続けてみていただければ更に幸せです(*´∀`*)



・ルイーザ旧ザイフシェフト ティルネル-サウスハイツ・グラナダ



 前日、カーティスの正体について知った天獄のルネとストラスは、情報提供者のアイザックとついでに巻き添えを食らったミラとともに行動に出る。


 行動する事になったミラ、ルネ、ストラス、アイザックの4人は、カーティスの新しい自宅である「ティルネル-サウスハイツ・グラナダ」に向かう情報収集役と、グルベルト孤児院の地下にある軍事施設を調べる探索役に別れて行動する事になり、前者にルネとミラが、後者にストラスとアイザックが担当することになった。


 早速二人一組になって行動を始め、ルネとミラはカーティスの新居となったティルネル・サウスハイツの前までやってきた。


「いいアパートだね。なんか手がかりあればいいけど」

「期待するだけ無駄な気もするがな。とっとと済ませよう」


 ミラの淡白なセリフに対して、ルネは特に気にした調子も見せずに、管理人から鍵を借りてきて、すぐにカーティスの部屋に侵入する。


「お邪魔します……、ちょっとカビっぽいけど」

 扉を開けたルネの第一声はそれであり、その言葉とおりのカビの纏わりついた空気がひっそりと外気と混じっていく。


「人に入った感じじゃないな。まぁ誰か入ってたら怖いけど」

「その時は守ってよ」

「はいはい」


 2人はゆっくりとカーティスの自宅へと足を踏み入れる。


 アパートはキッチンとリビングが一体になった部屋と、もう一つ書斎のような形をした寝室で構成されている。一人暮らしにしては随分と広い印象を受ける部屋で、それと同時にかなり整理整頓がなされているように見える。玄関から見えるのはリビングルームで、食事を摂るダイニングテーブルの奥に、ソファとテレビが備え付けられている。出来としては非常にシンプルで、不必要なものが何一つ存在しない。

 そのままの勢いで、2人は左側にある寝室に移動する。寝室は、壁には漫画や雑誌が大量に敷き詰められた本棚が並び、その隣には机、ベッドと並んでいる。


 机の上には何も存在せず、使われた形跡も殆ど無い。


「なんか、殺風景だね」

「随分変な部屋だな」


 ミラのポツリとそうつぶやき、リビングにあるダイニングテーブルを調べる。

 すると、そこにはホコリがほとんど無く、つい最近使われた痕跡が残っていた。


「ほら、このダイニングテーブル、明らかについ最近使われている。それに対して、書斎側の机は使われた痕跡どころか、置かれたままだ」


 それを聞いて、ルネは机の引き出しを開けていく。すると、引き出しは空っぽで、どの所にも何も入っていない。


「……ブラフ?」

「恐らくはな。でも、本棚に関してはかなり生活感があるから、もともとこういう配置だったと推測するのが妥当だ」

「つまり、カーティスは引っ越し直後にここを離れたってこと? 時間としては一致しているけど、その割に争った痕跡とかなにもないし、ダイニングテーブルは使われている。どういうことかな……」

「それだけじゃない。明らかに使った形跡のあるダイニングテーブルがあるのに、この部屋の空気は明らかにカビ臭い。少なくとも、かなり長い時間扉が開けられていないだろう。つまり、窓も扉も開けずにこの部屋に侵入した奴らがいるってことだ」

「そんな事ができるのは、少なくとも魔天の類ではマリウスだけ……マリウスもグルってこと?」

「そう考えたほうがいい。それなら、マリウスがフギンとムニンに忠告した4人のうちの2人目か。なら、3人目は今まで姿を一切表していないベリアルの可能性が高い。だが、それなら最後の一人は誰なのか……」

「フギンとムニンにそんなこと言えるのは天獄のメンツだけだろうし、確実にバカンスに行っているイェルとアロマは除外される。それなら……残ってるのはミライ?」


 それを聞いてミラは大きくかぶり振る。


「流石にそれはない。あの子の性格的に、お前やストラスの前でキレイに嘘を付けるとは思えないし、そもそも4人忠告する意味がない。セフィティナとマリウスは、それぞれ別の機関として動いているからだし、ベリアルはここまで姿を消していることから何かしらの潜入に関わっている可能性が高い。対してミライは天獄で居残り組だし、忠告する意味がないからな」

「ぶっちゃけ、忠告者忘れた時点で意味もないだろうけどね」

「立案者がセフィティナたちならある程度論理的一貫性のある行動をしているはずだ。とちってる所には目を瞑るとして、すべての行動はちゃんとした意味があるはず。それなら、残り一人は誰だったのか……」

「うーん、残り一人になりうる人物は限られるはずなんだけどね……誰?」

「知るか」


 ミラのぶっきらぼうな一言に、ルネは無言のままゆっくりと室内を見回す。


 辺りは恐ろしく何もない。物が置いてあるにもかかわらず、生活感が感じられない部屋が広がるばかりで、手がかりとなりそうなものはなく、異常なほどの無機質がさが室内を漂っていた。


「家具、動かした痕跡とかないよね」

「そうだなぁ……あぁ、なるほど。そういうことか」

 ルネの思考を読み取るように、ミラはそう言うと、ルネは続ける。


「整然としすぎているよね。時期的にはカーティスがここに居を構え始めた直後で、それ以外はなにもない。普通なら荷造りのダンボールとかあるはずだろうし、もっとごちゃごちゃしているはず。だけど、カーティスは自室を整理している最中に誘拐にあったはず。そしてケイティさんの話を考えると、明らかにカーティスはすべての事情を知った上で誘拐にあった……それなのに、まるで便乗したかのように、天獄を社会的に潰そうとする戦力が出現した。偶然と見るか、意図的と見るか。どっちかな?」

「明らかに意図的だろうが、どうなんだろうな。意図的なら、その情報を仕入れる手段が必要だし、どこからそれを仕入れたんだ? そもそも、天獄を潰そうとしたのは何者だ?」

「それがわかればある程度確定するよ。こんなに複雑な事になってるとは思わなかったし、ちょっと頭痛くなってくる」


 苦しそうに声を上げたルネに対して、ミラは続ける。


「そういえば、お前は今回のことどこまでわかってる? 一旦、今わかっている情報から、お前の考えをまとめたほうがいいだろう」

「そうなんだけど……あまりにもわからないところが多すぎてもうゴチャゴチャなんだよね~」

「まぁ、とりあえず状況列挙して、一緒に考えようぜ」

「そうだね」


 ミラの科白に対して、ルネは一つひとつトラブルを羅列し始める。


「まず、一番の発端は、”カーティスの失踪”で、その次に起こったのは”カーティスを探そうという依頼”、そしてそれを追っていくうちに、”天獄の面々がトラブルに関わっていた”、更には、”カーティスも今回のトラブルに関わっていて、彼もまた魔天に縁のある人物である”、いくつかの段階に分けるとこんな感じになるかな?」

「一見バラバラに見えるが、今回トラブルに巻き込まれた人物は、25年前の事件と関係している。カーティスはその時に犠牲になったグルベルトを元にしていて、天獄の面々もあの事件にはかなり深く関わっている。事件に最も関わっているセフィティナやマリウスも、同様にあの事件に深く関わっていた……。どうにも、欠如している情報が多すぎるな」

「だからこそ悩んでるんだ。どの事件が、どれに影響しているか全くわからない。この事件、一体何なんだろう」


 ルネの悩ましい一言に、ミラは敏感に反応する。


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