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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第九章 嗤う鵜篝
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第4の監視者

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 ここで一つ、裏設定的な話ですが、主人公たちの所属する「区域」ですが、このアルファベットはそれぞれ「A→Archive」、「B→Bio」、「I→Information」の頭文字をとっています。冒頭で破壊されていた「区域-A」は資料室兼研究所みたいなところでしたね。区域Aが「Laboratory」にならないのにも理由がありましたが、それはまたのお話です。急にこういうことを言い出したのは、前書きに書くことが出てこなかったのが原因ですが。


 次回の更新は今週の金曜日11月2日となっております! 次回もよければお会いできると嬉しいです(*´∀`*)



「カーティス、どうしてノアは、メモリーボックスを僕らだけで見る必要があるって言ったんだろう?」


 突然尋ねられたカーティスは素っ頓狂な声で答える。


「えぇ? 妙っちゃ妙だったが……なんでだろうな?」

「メルディス派の中にいるスパイを示唆しているのかなって思ってたんだけど、それならノアはこっちの内部情報についてかなり深く知っていることになる。そうなるためには、ある程度活発な動きが必要になるし、メルディス様がそれを許すとはちょっと思えない。つまり、ノアは”状況は完全に把握できていないけど、メモリーボックスを調べたことが内部にバレたら厄介なことが起きる”っていうことをわかっていたはず。でもそんな状況、どんな状況なのかな」


 イレースの考察に対して、カーティスは更に頭を悩ませる。


「まぁ確かに……でも、相手があの化物なら、その前てはあまり意味がないんじゃないの? 全然バレずに情報できそうじゃん、あいつ」

「確かに脅すとかしたら問題なくそうできそうだけど、それならどこかでその情報が漏れるはずでしょう? それにそんな事があるのなら、その時点で警戒するように言われるはず。この前提は崩れていないとみて間違いないと思う。それなら、どうしてノアはあんなことを言ったんだろう?」

「俺に聞かれてもわからないからな」


 当然の如くそういったカーティスに対して、イレースは自らの考えを述べる。


「少し位考えようね。これはあくまでも僕の考えなんだけど、ノアの言動は僕らの記憶に関係していると思う」

「俺たちの不自然にない記憶のこと?」


 カーティスがそう言うと、イレースは異常なほどキレイだった自分の部屋のことを絡めて話す。


「そう。ずっと不自然だったんだ。僕の部屋から推測すると、記憶を無くす前の僕らは今回のことを想定していたみたいだし、ノアもまるで同じような口ぶりだ。それに、ノアの大雑把な状況判断を考慮すれば、ノアは僕らの動向を見てそれを判断した可能性が高い」

「ちょっと待てよ。それって、ノアと俺たちが少なくともつながっている可能性があるっていうことか?」


 カーティスの言葉に対して、イレースは大きく首を縦に振る。


「そうとしか考えられない。現に、僕らは今こうして生きているっていうことがそれを更に誇張しているような気がする。彼にとって僕らを生かすメリットは少ないと思うしね」

「それについてはまだわからないが、確かに妙かもしれないな。単純に気まぐれって可能性もあるみたいだし」

「気まぐれっていうのは流石にないと思うけど、それに近いものかもしれないね。僕らにしてほしい事があるのなら、直接言ってくると思うし、あえてメモリーボックスを介すように促したのも理由があるんだろうね」

「それならメモリーボックスを調べよう。でどうすればいいんだ?」

「だからそれがたいへんなんだっつーの」



 遠巻きに方針が決まった直後、病室の扉が慌ただしく開き、ハートマンから連絡を受けたイリアらが室内に入ってくる。


「イレース! 無事か!?」

「室長、大丈夫ですか?」

「イレースさん、怪我はないのか?」


 入ってきた各々が一斉に喋るというシュールな光景を目の当たりにし、イレースは全員をなだめて一連の事柄をすべて説明する。



 すると、イリアの口からメモリーボックスについてとある言及をする。


「メモリーボックスといえば、2ヶ月ほど前から極秘に導入された”想起阻害システム”をメモリーボックスと併用することが決定したんだよな……もしかしたら、メモリーボックスで調べなきゃいけないのって、それのことじゃないのか?」


 イリアの説明に、イレースはさらなる言及を求める。


「想起阻害システムって、なんのこと?」

「お前……あれまで忘れてるのかよ。まぁ、あれを作ったのはメルディス様だったから無理もないか。想起阻害システムは、記憶の想起に関する部分の障害を軽度に発生させることで、簡単な記憶障害を人為的に発生させるシステムだ。使用方法があまりにも非人道的なものだったから、これを知っているのはごく一部の者だけだがな」

「……あ」


 イリアの話を聞いて、イレースは自分たちがそれにかけられた可能性を確信することになった。それならばイレースとカーティスの記憶が変に失われているのも合点がいく。

 だがこれならば、誰がそんなことを実行したのかということが焦点になる。しかも、状況を考えてその人物は、このコミュニティの内部の者が可能性として高いことになる。


 今の所、どちらの派閥がそれをしたのかはわからないが、少なくともその両者どちらかの可能性は非常に高い。なぜなら、「宴」にしても「第三の組織」にしても、国家の中で特定の人物しか知らないそんなシステムを知っているのならば、行動にもう少し変化が生じて然るべきだ。


 この事実にたどり着いた瞬間、イレースは一瞬それをイリアらに話そうとしたが、すぐにノアの言葉を思い出して口をつむぐ。これらのことを総合すると、ノアは「コミュニティ内にこちら側の動向を知られたらまずい人物がいる」ということを示唆しているはずだ。

 それならば、一旦は信用できるイリアにのみ話したいし、すべてを調べ終えてから話すほうが利口だ。


 しかしそれには、両派閥からの認定と現メルディスの認めた第三者の立会いが必要であるメモリーボックスを調べなければならない。一人で調べ切るのは不可能である。メモリーボックスを調べる以上は信用できる人物を当たっていくしかないが、イレースが信用に値する人物は極めて少ない。


 どうであっても、とりあえずはメモリーボックスを調べる方針は決定したことにイレースは少し安堵する。

 けれど、周りの者たちはそれに対して疑問符を浮かべることしかできないでいた。


「なにかあったのか?」


 イレースは当然来るであろうイリアの質問に対して冷静を装って答える。

「いや、それとノアとどう関係するのかなって思っただけ。どちらにしても、ノアが動いている以上はメルディスもトゥールも言ってられない。僕はすぐにメルディス様に報告する。僕がいない間はイリアに従ってほしい」


 イレースの指示に対して、異議を唱えたのは意外なことにアゲートである。


「室長、私も同行させてください」

「え!? どうして?」

「僭越ながら、室長の専攻している自然神の記述だけでは、メルディス様を説得することは困難となる可能性がございます。私であれば、ダウンフォールを専門としているので、その可能性を完全に排することができるでしょう。ノアについては室長が、その下で活動しているであろうエノクについては私が、それぞれのリスクを説明しましょう」


 それを聞いたイリアは、大きく納得しながらアゲートの意見を指示する。


「確かに、アゲートの言う通りだろう。お前はただでさえ、ダウンフォールの知識がアゲートから比べると乏しいし、プレゼン能力も皆無だ」

「婉曲的にディスられてる気がする」


 悲惨なディスりを受けたイレースに変わって、カーティスは爆笑しながら、「結構ストレートに言われてるような」と口走る。

 当然それに対してイレースは辛い視線を向けたくなるが、どこにぶつけるわけでもなく、混乱の眼差しは何処かへ向けられていた。


 しかし、そんなことを気づくことなくイリアは更に続ける。


「だからこそ、優秀なアゲートがいてくれたほうが説得しやすい。戦闘力については流石にイレースのほうがあるだろうから、護衛は難しいだろうがな」

 イリアのフォローに、アゲートは若干表情を崩してイレースに頭を下げる。


「お願いします。私も今回のことに貢献したいんです」


 アゲートの鬼気迫る勢いに負けたのか、イレースはそれを承諾し、イリアらにすることを指示する。


「それなら、アゲート君は僕と一緒に、フーさんはイリアと一緒に行動しよう。イリアたちはコクヨウと連携して、ノアの襲撃地を調べてほしい。それと、ベック先生の事も!」

「了解。それならすぐに行動しよう。フー、行くぞ」



 イリアはそう言いながらフーの手を引き、そそくさと出ていこうと扉を開けた。

 すると、そこには意外な人物が佇んでいた。


「イレース、大丈夫?」


 それは、ゆらゆらと妖艶な佇まいを浮かべるフラーゲルだった。相変わらず腕は不気味に蠢いているところを除けば、極めて優雅である。


 入ってきたフラーゲルを視認したイレースは、好都合と言わんばかりの勢いで尋ねる

「フラーゲル……ちょうどよかった。イリアたちと連携して、ノアのことを調べてほしい。というか、対策を取ってほしい。大丈夫そう?」

「勿論よ。さ、行きましょう? お二人さん」


 フラーゲルの快諾に対して、イリアは若干怪訝な調子でついていき、更にそれに続いてフーは苦労性な苦笑いを浮かべて部屋を出ていってしまう。



 そのさまを見届け、イレースとアゲートも行動に出る。




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