表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不条理なる管理人  作者: 古井雅
第九章 嗤う鵜篝
44/169

無題の宝石

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 この部分で色々と暗躍していた団体の名前が与えられるのですが、果たしてこの名称を名前が出ていると言えるかは微妙ですね。黒の組織みたいなものでしょうか。ちなみに「第三の組織」には名前はありません。

 次回は来週月曜日10月8日20時となっております! 興味がある方はぜひぜひどうぞ!☆(´ε`


「皆さん、とりあえず現状の説明を説明させていただきます。よろしいでしょうか?」

 イレースがペンを手に取り、そのペンをくるくると回しながら全員に語りかける。

 すると、その場にいた全員がそれに対して好意的な反応を示した。それを確認してイレースは、現状を報告する。


「現在この魔天コミュニティでは、メルディス派とトゥール派がありますが、その中でも後者が宴と関与していることがわかっています。そして、宴の中にはエノクδが所属している可能性が強く、僕とレオンのことを襲ったのもエノクδであると想定されます。この喫緊の脅威に対して手立てを考えるため、アーロン・ベック先生とコンタクトを取りました。ですが、ベック先生は別の何者かがなりすましていて、エノクεことレオンの解析データを欲しているらしく、僕らは偽の情報を送信したのですが、それに対しての返信は”嘘つき”とだけ残されていました。この異常な行動に、僕らは一旦戦闘のプロである貴方達の協力を仰ぐことにしたのです。どうでしょう?」


 イレースは自らの言ったことを図に近い形でホワイトボードに書き記し、現状を伝える。

 すると、最初にそれに対して言葉を発したのはフラーゲルだった。


「随分不気味なメッセージだな……相手は相当な変態と見える」


 フラーゲルの言葉に対して、意識化に現れていないカーティスは大きく吹き出し、「変態なのは当たってる」と独り言をつぶやき、それに対してイレースも連鎖的に笑みをこぼしてしまう。

 すぐさまイレースは自らの顔を繕うように表情を戻し更に続ける。


「この状況でこんなメッセージを入れるなんて普通は考えられない。フラーゲルは、これからどうすればいいと思う?」

「相手がどれほどの力量があるのかわからないから具体的には言えないが、なりすました目的や手段、ついでにアーロン・ベックが今何処にいるのか確認したほうがいい」

「それについては僕らも同じ考えだけど、手段について浮かばないんだ。君たちはそれについて対処できるほどの知識や技量があると思ってね」


 イレースがそう言うと、ハートマンが挙手をする。


「いいかしら?」

「どうぞ」

「この時点で”嘘つき”なんて言葉を残すっていうことは相手にある程度の勝算があるっていうこと。それに対して、相手は不気味なほど何も言ってこないなら、ずいぶんと相手は不思議な目的を持っているようね。この状況でこんなことをするなんて、切迫した状況には変わりないはず……こちらに対する嘲笑、または撹乱が目的であると考えたほうがいい。しかも、相手はこんなことをする余裕がある。相手はかなり厄介な人物と推測できるけど、この状況で迂闊に動くのはどれも危険すぎる気がするの」

「つまり、今は様子見したほうがいいってこと?」

「今の情報なら、それが最も適切でしょうが、我々の情報網を持ってすればまた状況は変わります。キャブラン、説明を」


 ハートマンの一言に、キャブランはやれやれといった調子で腰を上げる。


「はいはい。今回のトラブルの中核にある者たちは、メルディス派でもトゥール派でも、宴でも人間でもない。情報提供者はそいつらを”第三の組織”と呼んでいた。どうやら、魔天コミュニティの中にその第三の組織が侵入していて、今回の騒動を引っ掻き回しているらしい。そのリーダーが、いつぞやの犯罪者であるノアらしくて、その中には行方不明のエノクが何人か加入しているらしい。それ以外にも実力者を集めているようだが、何を目的に動いているのかは一切不明。恐らくは、アーロン・ベックになりましたのはその一派であろう。宴に所属してるっていうエノクδも、第三の組織のスパイである可能性が高いだろう。イレース君たちに襲撃をしたタイミングを考慮すれば、第三の組織であるエノクδが宴の動向を撹乱するためにあえて行動したと考えて然るべきだ。あんなに目立つ感じで襲撃なんてしないだーろしね」

「この状況を考慮すると、単純に”動かない方がいい”とも言えなくなる。第三の組織がこれほどまでに活発に動いているとなると、彼らが想定しているプランが佳境に入っていると推測できるし、今動かないと手遅れになりかねない。私とキャブランは今動くことを支持するわ~」


 ハートマンの意見に対して、バートレットは首をかしげる。


「ちょいまってー、言いたいことはわかるけど、第三の組織なんて本当にあるの? ちょっと懐疑的なんだけど」

「というと?」

「もし第三の組織なるものが本当にあるのなら、どうしてノアらはこんな回りくどいことしているの? ノアとかエノクが手を組んでプラン作ってるなら、そのバカみたいな能力で正面突破すればいいじゃん。今の話聞いてたら、まるで戦略立てて丁寧にプランを作ってるじゃん。第三の組織に戦略なんて必要ない。それは相手も理解しているはずなのにさ。そういう簡素な疑問が出てくるのに、情報元がわからないなんて信じられるわけ無いじゃん」


 痛いところを突かれたハートマンだったが、それに答えたのはキャブランだった。


「情報元はパールマンだ。まぁ、あの秘密主義者に直接あったわけじゃないがな」

「代償は?」

「旧ザイフシェフトの不祥事について、唯一こっちが握っていた証拠の隠滅だけど?」

「なかなかアグレッシブな提案したんだね」

「メルディス様もこの取引には好意的だったし問題ないよね~」

「お前らー少しはリーダーたるアタシに報告しなさいよ!」

「リーダーはティエネスでしょう? 勝手に役職詐称しないでよ」


 話が逸れ始めた時点でイレースが軌道修正を始める。


「皆さん話逸れ始めてるけど、情報にある程度の信憑性があるっていうことですよね?」

「そういうことです」

「じゃあ具体的な行動について、どうすればいいのかを講じていただけないでしょうかね」


 イレースの発言に対して、挙手をしたのはハートマンだった。


「では私から。現状、アーロン・ベックに成りすましているものがわからないことも相まって、まずは第三の組織の目的把握でしょう。しかしながら、第三の組織は自らの痕跡をできるだけ消しているようですから、闇雲に彼らを追うのは得策ではありません。彼らと我々を結びつけるのはアーロン・ベックのみですが、攻め込んでくるのも彼らの想定通り。術中にはまる可能性があります」

「結論から言ってくれない?」

「フラーゲルのリクエストにお答えすると、私は”待ち”だと思っています。確かに状況は切迫していますが、彼らもこちらの動向を見て行動しているでしょうから、それを考慮して一旦は彼らの動きを見ます。嘘つきなんて挑発的なセリフを出してきている以上、彼らはこちらが焦って動くことを想定しているでしょうから、それを逆手に取るのです。他の勢力という大きな問題を度外視にすれば、最適でしょう」

「結構厄介な問題を度外視にするんだな」


 異議を申し立てたフラーゲルに対して、ハートマンは失笑しながら「確かに」と続ける。

「否めませんが、こちらもただ待ちをするなんて言ってません。コクヨウとして、というよりもメルディス様の力を用いて、この国家全体の情報収集も行い、適宜まとめて状況を常に把握しましょう。まずは現状把握が大事です」


 ハートマンの回答を聞き、バートレットは好意的な意見を示す。


「まぁ理にかなっているんじゃないの? 僕はそれで賛成かな~。まぁ、ただそのプランには厄介な点が多いっていうリスクが有るから、その点どうやって解消するかだよね」

「それについては問題なのよね。待ちをすれば確実に一歩出遅れるし、相手のプラン通りに遂行されてしまう可能性ももれなく高まる」

「つまりはこれを遂行するためには、あくまでも情報収集が必須ってことね。じゃあ、ハートマンたちはすぐに情報を探索してほしいなぁ」

「なんでバートレットに指示されなければいけないのかしら? 一応、リーダー代理のフラーゲルの指示で動かないと」

「ここに来て体裁を気にするなんて頭おかしいと思うよ」


 辛辣な言葉を浴びせられたハートマンは、微笑を浮かべながらフラーゲルの顔を一瞥する。

 すると、フラーゲルは「お前たちの任せるよ」と口走り、どこからか持ってきていたコーヒーを啜り始める。すでに今回のことに参加する気はないらしい。


 しかし、そんな時にとある紊乱者が現れる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ