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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第六章 復讐と厄災
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繋がりのない問題たち

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 前々回の後書きの方で呟いた厄介さがここに来て響いております。もう何度目かの説明ですが、生産性のない話はもうそろそろ終わりです。次回から再び視点が切り替わりますので、7章のほうもご覧になっていただけると私は幸せです(*´∀`*)

 次回の更新は来週月曜日7月30日20時となります!興味がある方はぜひぜひどうぞ!☆(´ε`


「勿論だとも。何でもどうぞ!」

 元気に頷いたストラスに対して、ルネは強い安堵を込めた呼吸を行い、早速聞きたかったことを尋ねる。あ


「良かったー……じゃあ、魔天コミュニティのネットインフラの環境は?」

「コミュニティ内部だけにつながるネットワークを構築しているはずだ。ただ、情報機器に関しては、ザイフシェフト製の物がほとんどだ」

 まさかの情報にルネは首を傾げる。


「貿易しているの?」

「あぁ。つっても、実際にザイフシェフトで作っている電子機器を貿易しているわけじゃなくて、あくまでも設計図を湯うにゅうしたっていう感じ。魔天で作ったものを使っていたんだが、スペックがあまりにも違ったらしいから、貿易を始めるようになったらしい」

「なんか不思議な話だねぇ」


 それを聞いたルネは、奇妙な話に更に追求する。

「設計図だけってどういうことなの?」

「元々、この魔天コミュニティっていう国家は魔天の肉体やエネルギーを基本とする学問からメインに発展したものだったから、コンピュータみたいな技術や文化なんて本当に発展しなかったんだよ。根本的な学術基盤が全然違っているわけで、コンピュータが導入されたのだってここ300年くらい前で、その時導入されたコンピュータは本当に初期も初期、処理能力も本当に悲惨なものだった。そんな中、ベヴァリッジが人間とコンタクトを取り始めて、現行のルイーザ系で使われるコンピュータの導入につながったって感じかな」

「そこでサクッと作っちゃうあたりすごいね」

「そういう技術人は優秀だからな」

「適当すぎない……?」

「このコミュニティはかなり特殊な風習があるからな。そもそも、最高権力者を二分してせめぎ合う上で、ほとんど本気で潰し合う感じになる。殺してでもな。うちの実家だって、めちゃくちゃおかしくて、力のある人材を早いうちにアーネストの名前を冠して血族とするっていう不思議な感じだし。んな感じで、今のメルディス派はトゥールを完全に葬ろうとしているっていう噂もあるんだぜ?」


 若干話しがオカルトめいてきたところで、ルネは怪訝な表情で彼を一瞥する。


「ふーん……どうしてそんな中核的な情報知ってるの?」

「これでも一応、行政の中核にいるアーネストの跡取りだったからな。それにうちの母親はお喋りだったし」

「いいねー、じゃあ沢山情報持ってるよね! じゃあ次、魔天コミュニティの中で人間と交流する団体、もしくは個人はどのくらいいるの?」

 ルネの問いかけに対して、ストラスは若干考え込むようにつぶやく。

「えー……どうだろうな。一般的な法人は人間界で利潤を得ても、そこまで大っぴらに人間と取引しているわけじゃないから、そこまで多くの奴、団体なんてなかなかいないと思う。交友的な関係を築こうとしている現メルディスことベヴァリッジ一派くらいだろうな。ザイフシェフト基準のコンピュータを揃えられたのはベヴァリッジの功績だし、書籍に関しても同様だ」

「それなら、ミラー家と繋がっているのはメルディス一派? それなら、ケイティさんに近づいたものとは同一の一派ということになるのかな」

「それはまだわからないが、可能性は高そうだな」

「でもそれなら、どうして男性がメルディスを名乗ったんだろう。君の話によると、男性型は信用していないんでしょう? 恐らくは別の存在であると考えたほうがいい。では、メルディスを名乗ったその人物は一体どういう理由でこんな行動に出始めたのかっていう話だねー」

「そもそも何者か……さっぱりだな」


 話が錯綜し始めたところで、ルネは今までのことを整理し、方針を決める。

「混乱してきたから少し整理ね。問題はカーティスの誘拐に関与した連中、天獄を潰そうとした連中、それぞれが全く別物である可能性があるっていうことで、目下明確に敵意を示しているのは後者だ。対して前者は目的、人物すべてが不明であるものの、セフィティナやアイザックがなにか知っているかもしれない。一方の天獄を潰そうとしている連中は、幾つもの団体が複合して動いているらしく、ミラー家と繋がりがある可能性が浮上した。しかしその団体と、ケイティさんに近づいたメルディスを名乗るものとは異なっている可能性が濃厚である、こんなところかな」

「ビックリするくらい複雑だな」

「まとめて思い出したけど、カーティスの誘拐事件はなんにもわかってないところだよね。今までの情報だと、真相に近づくものが悉く排除されてるみたいだ。僕らを潰そうとしている者たちとどれくらい関係しているかわからないけど、手がかりの量的に見ても別人であると考えるのが妥当だ。しかし時期的に完全な無関係であるわけでもない。だから今後の方針として、今手がかりが多い後者をメインに調べていこう」


 ルネの提案に対して、ストラスは大きく首を縦に振り、白紙の紙に登場人物を並べ始める。

「って言うことで、出てきた連中をまとめるぞ。①ケイティさんに接触したメルディスを名乗る者、②ミラー家と繋がっている者、③カーティスの失踪に関わっている者、こんなものか?」

「いや、君が戦った魔天のこと抜けてるよ。勿論、今挙げたどれかに含まれている可能性もあるけど、一応書いておいて」

「了解。④俺と戦闘した魔天、出てきたグループは4つ、どれがどのような目的であるかは不明だな」

「一つ一つ分析していこう。ストラスはそれ書いといて」

「りょーかい」


 ルネの一言に、ストラスはメモの準備をしたのを確認し、ルネは一つ一つの情報をまとめていく。


「①からいこう。この人物はメルディスを名乗る男性だけど、本当にメルディスかどうかは不明。ケイティさんに対して何かしらの役割を期待している。主目的は僕ら天獄を潰すことだと見てまず間違いない。1億の強奪事件を起こしたのもこの一派だと思われることから推測するに、ルイーザ全体で起きている魔天のトラブルの根源かもしれない。それなら、②の者と違うっていうことも合点がいく。ただ現在は不明」

「はいはい……っと、おっけー」

「じゃあ次②で。これはミラー家と何かしらの取引をしている魔天コミュニティの者、恐らくは団体であると推測できる。25年前の事件とも関わりがあったことが示唆できる情報を握っているかもしれないことから、当該事件と関係があった可能性がある。ただ、今回の事柄と、25年前の事件がどの程度関与しているのかは今は不明だね」

「①と②に関しては何かしらの関係があることは示唆できないか?」

「可能性はなくはないけど、今のところは切り離して考えたほうがいいかもしれない。よくわからないからね」

「それもそうだな。じゃあ次③、どうぞ」

「うん。③は現状ほとんど情報がない。関与がある可能性があるのは、グルベルト孤児院のアイザック、またはセフィティナであることから見ても、魔天コミュニティと関係は不明。でも、このトラブルはカーティスという青年自身が絡んでいる可能性があるのは確かだ」

「カーティスについても調べたほうがいいな。出生に謎が深すぎるし」

「とりあえず、これから彼の家に行ってみるけど、やっぱりアイザックに聞くしかないね」


 若干暗い顔をしたルネに対して、ストラスは苦笑いを浮かべ首を縦に振る。

「これは……吐かせましょうか」

「ただミラにも言ってないってことは、相当な事なんだろうね。カーティス君の出生は彼にとって禁忌……それぐらいのもの?」

「冷静に考えれば、出生あやふやなカーティスって子を育てるのは困難なはずだ。単純にアウトローな出生って言うわけでもないのかも」

「というと?」

「相当、非人道的な方法、とか?」


 ストラスの言葉に対して、ルネは首を傾げて追求する。

「飛躍し過ぎな気もしなくはないけど、どういうこと?」

「いろいろリスキーだろ。子ども育てるのってさ、それに加えて出生が特殊っていうことも絡めば、アイザックらはかなり負い目を持って彼の親代わりになったとかじゃないとしっくりこないなって思って」

「……彼らがカーティスのことを隠すのは、それが原因ということ?」

「いや、あくまでも推測な? 俺の勘だから!」

「あながち見当はずれじゃないかもしれないね」

「どういうこと?」


 ストラスが首を傾げると、ルネは今感じている疑問を話し始める。

「疑問だったんだ。今僕らは、①カーティスの失踪、②ルイーザ全体で起きている魔天絡みのトラブル、③天獄への明らかな敵意、つまり3つある。でも冷静に考えてこれらを分離して捉えれば、明らかにトラブルが起こりすぎている。どこかしらの繋がり、または同一の因子を持っていると捉えるのが無難なはず。でもそれぞれの繋がりがあまりにも希薄すぎる。脈絡がないんだよ。どうしてだと思う?」

「なんでってそりゃ、繋がってないから?」

「そう。正確に言えば、”繋がる情報がなかったから”だ。大きく乖離しているのはカーティスの失踪と周辺トラブル。確かにこれを結びつける根拠は現在ない。というより、最初僕らはこれらを同一犯だと思っていた。しかしその可能性が極端に薄くなったから、繋がりが途端に希薄化した。これからの目的は、これらを繋げるための情報を探すこと。でも、それをするためにはかなり危険だと思う」

「どうして?」

「ここまでは自然に入ってくる情報を羅列して来たけど、此処から先の情報は相手側に入り込んでいかないと入ってこない。そもそも、出てくる情報すらも若干作為性があることから考察するに、これらの情報すらも、裏に何かしらの意図が隠されているのかもしれない」

「なるほどな……で、どうすればいいんだ?」

 ストラスはルネにそう尋ねると、冷静に一つの提案を行う。


「アイザック、彼に今回のことを聞く。ついでにカーティスの出生についても話してもらう」

「話してくれればな」

「まーねー。まぁその前に、カーティスの家を調べよう」


 2人はそんなことを話ながら、行動を開始する。

 最初に、二人してカーティスの自宅へと向かった。


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