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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第六章 復讐と厄災
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グルベルト

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 すべての部分が、作成した後投稿直後に変なところがないかを確認しているのですが、この部分にてついに重大な場面ミスがありました。次回の投稿が不安ですが、おやすみゼロを目指して頑張りたいと思います(´・ω・`)

 次回の更新は今週金曜日7月23日20時となります!興味がある方はぜひぜひどうぞ!☆(´ε`


 ストラスがグルベルト孤児院に到着した頃、ルネがとぼとぼと正門から出てくるところだった。

 ストラスはすぐにルネに声をかける。


「ルネ! なんかあったか?」

 それに気がついたルネは、一瞬ビクリと体を震わせたものの、すぐにストラスだと分かり安堵したような表情で言葉を返す。

「ストラス、こっちは人から話は聞けなかったけど、幾つか気になる情報があった。今からカーティスの家に行こうと思ったんだけど、一旦情報を共有しよう。とりあえずどこか目立たない場所で!」

「わかった。じゃあ近くのカフェにでも」

 ストラスの提案に、ルネは大きく首を縦に振る。


 その後2人は、グルベルト孤児院の近くにある「スティンガー」というカフェを訪れた。そこはかなり落ち着いた作りで、清潔感漂う内装と食欲をそそる芳しい香りが特徴的なダイニングカフェである。

 2人はカフェの中で最も目立たない奥側の席に座り、いつも通りおやつと酒を注文し、お互いに出てきた情報を開示始める。

 先に情報を出し始めたのはルネの方だった。


「こっちは明確に有益な情報がなかったけど、セフィティナの机から変なメモが幾つか出てきて、そこに”テンペスト”、”ウロボロス”、”方舟”って言うよくわからない単語が出てきた。これがその時のメモを書き写したものだから、見てみて」

 ルネはストラスに対して、書き取ったメモの内容を渡すが、ストラスも意味はわからないようで首をかしげる。


「うーん、全然わからんなこれ。このアメジストっていうのは、コードネームかなにかか?」

「さぁ。知らないけど恐らくはそうだと思う。何者かはわからない」

「内容的には指示なのか? でも、その割には随分と発言力がありそうな内容だが……いやそれよりも、ルネが言ったように3つの単語を探ったほうがいいのかもしれないな。これも何かしらのコードネームだろうが、それぞれ何を指してんだろうな」

「どっちにしても、このメモはこれらの単語がわからないとあんまり意味が無い気がするからね。勿論、これからわかることはあると思うけど、それだと無駄に状況混乱するだけだし。ストラスの方の情報は何かある?」


 ルネの言葉に、ストラスは従い記録媒体に記録した写真を出して説明を始める。

「結構エグい情報だ。サイライのことは知ってるだろう?」

「あんまり知らないけど、君が滅ぼしたってやつでしょう?」

「そうだ。この大資本家であるミラー家は、そのサイライを活用して今の立場を身に着けたらしい。つまり、魔天を使った兵器運用を利用して、ここまでのし上がったんだ」

「うわー、最低じゃん。だから、魔天と繋がってたんだ」

「驚くところはそこだけじゃない。その繋がってたっていう奴は、ケイティさんを脅していたメルディスと敵対関係にある、イルシュルだった。つまり、ミラー家と繋がっているやつと、俺達を潰そうとした不届き者は別人だ」


「なるほど……」

 ストラスの言葉を聞き、ルネは大きく頷きながら納得する。

 一方のストラスは、その様を見て何を納得しているのかわからず、素直にそれを尋ねる。

「何納得してんの?」

「いや、ケイティさんと繋がっている人たちがどうしてケイティさんに危害を加えないのかって話のとき、僕は何かしら親しい関係にあるっていう感じに考察してたけど、結果的にズレてたのは、対象が異なっていたからだったんだなぁって思って」

「あぁ確かにな。別の役割を期待してるか、それとも親しい仲かってやつ? それなら対象が2つあったと考えれば合点がいく」

「親しくもあり、何かしらの役割を期待していたのもあるのか……どっちにしても話が大分面倒くさいね」

「一つ一つ解体していかないと変な勘違いに引っかかることになるな……どうする? 行動とともに」

「カーティスの家も行きたいけど、今は他の資料も撮ってるんでしょう? とりあえずそれ見ようよ」

「それもそうだな」


 方針が暗澹とした状態であったが、ルネの提案にストラスは従い2人して小さな記憶媒体のディスプレイを覗き込む。

 一つ一つの資料はかなり細かく、スワイプしてもスワイプしても資料は底をつかない。それをすべて見終わる頃には、テーブルには注文しておいたストラスのおやつと、ルネのお酒がいつの間にやら並んでいた。


「……これ、結構えげつない内容じゃない?」

「もはや俺はこれを然るべきところにリークするほうがいいと思う」


 2人は目の前に転がっている情報の重さに驚きを隠せなかった。

 資料には、ミラー家が25年前のザイフシェフト事件に関わっていたことを示す証拠が大量にあったのだ。具体的に言えば、旧ザイフシェフトや共犯国となった旧リラに対しての送金履歴や、それらの実験体の資料、そのときに関わった魔天の名前が書かれていた。

 その中で、2人が着目したのは、旧ザイフシェフトにより誘拐された魔天の名前だった。

「あの事件で誘拐されたのは、”オフィリア”、”スベルン”、”ルーク”、”グルベルト”の4人……グルベルトって、孤児院の名前だ。何かしら関係があるのかな?」

「確かにな。スベルンとルークは俺達も知ってるが、オフィリアとグルベルトは知らない。っていうか、このオフィリアって名前、ケイティさんも知っていたな……キーマンであることは確かか。でも、どうしてグルベルトって言う人だけ、孤児院の名前になってるんだ?」

「それはわからないけど、ケイティさんがオフィリアっていう人のことについて、なんて言ってたの?」


 ルネは読み飛ばしてしまいそうなストラスの言葉を拾い上げ、それについて尋ねる。

 すると、ストラスはその時の情報を話し始める。

「なんか、この資料を提供してくれたとき、護衛として演技してほしいって言われてたんだけど、その時”オフィリアとアレクシアという人を調べてほしい”っていうことを言ってきて、それについて全く触れなかったんだよなぁ。何だったんだ? あれ」

 ストラスの反応を聞いて、ルネは冷ややかな視線でその意義について述べる。

「いや、それさ、盗聴器で聞いている人を揺さぶってるんでしょ? 状況的には、ミラー家に縁のある人物に対して向けたって考えられるでしょ」

「あぁ、そっか」

「……それ、聞いてこなかったの?」


 ルネの問いかけに対して、ストラスは「聞いてないけど」とだけ答え、ルネは無表情のまま憤りを顕にする。

「ふーん。僕、今すぐ帰ってもいいんだけど」

 流石にそれについて、ストラスはすぐに頭を下げる。

「すいませんでした」

「今度から気をつけるように」


 ルネは一旦その怒りを沈めて、グルベルト孤児院について話を戻し始める。

「まぁこれはおいておくとして、グルベルトっていう人についてはアイザックに聞ければいいんだけど……聞けるかな」

「それこそ、カーティスのことを脅して吐かせればいいんじゃないの?」

「エゲツない発想だけど、意外にいいかもしれないね……」


 物騒な話になり始めたとき、ルネはこの資料の存在意義について話し始める。

「この資料、どうして厳重に保管されていたんだろう」

「そんなの、あの事件に大資本家が関わっていたのがバレたら信用なんて地に落ちるだろ。だからじゃないのか?」

 ストラスの意見に対して、ルネは大きくかぶり振る。


「いや、そりゃ見ればわかるんだけどね。どうしてこんな危険すぎる資料を残す必要があったって話だよ。天下の大資本家だよ? 発達したネットインフラを持っているはず。オフラインのメインサーバーとかに保存することだってできるだろう? それなのにどうして、紙での資料まで残したんだろう」

「うーん……リスク考慮じゃないか? いくらオフラインでも、電子データとして保存するよりは、紙媒体で保存するのは妥当な選択肢じゃないか?」

「勿論だとも。でもそれなら、保管されている場所がおかしすぎる。いくら監視カメラ盗聴器がわんさかぶち込まれた部屋に保管されているからって、君の話じゃ普通に棚から出てきたんだろう? これはありえない。確かに電子媒体を用いないデータの保管として、紙媒体は優秀だ。だけど、それならばもっと厳重に保管されるはず。ケイティさんの助けがあったからって、こうやって情報があっさり流失している点が問題なんだ。棚にそのままの状態で入ってたってことは、ほとんど襲われる危険性を考慮していない。つまり、君がケイティさんに連れられて行った邸宅は普段遣いのものじゃなくて、取引か何かに使う場所だと思う」


 ルネの考察に対して、ストラスは疑問を呈する。

「なるほど……でも、それならどうして取引をするのにそんな重要な資料を保管する必要があるんだ?」

「あくまでも過程だけど、紙媒体って言うことから推測するに、取引相手はこの場所のネットインフラとは異なる環境にある場所の者、状況から推測するに魔天コミュニティとの取引場所であると推測するのが妥当だ。もう一つの証拠として、君がケイティさんに連れられてあの場所に行ったということだ。君が魔であることは向こう側に完全に割れているから、君を連れて行ったんだろうね」

「なるほど……だから、妙な雰囲気だったりしたのか」

「あくまでも推測だけどね。もう一つ根拠とするなら、盗聴器にのみ警戒したってことかな。魔天なら、身体的な変化はないし、音声データを重視しているのもなんとなく頷ける」

「お前の話を聞いてたら、どんどん信憑性が増してくな」

「いや、こじつけの部分も多いから、あくまでもそういう可能性があるってこと。資料の保存が適当だったのも、ケイティさんが管理しているからっていう可能性だってあるしね」

「あ、普通そっちか」

「まぁね。でも、なんか不自然な点が多かったから。いくら管理しているからって、そのまま棚から出てくるなんて考えにくいし。だから、ストラスに少し聞いておきたいことがある。少し長くなるけど大丈夫?」


 ルネは少し真剣な面持ちでストラスに尋ねる。するとストラスは、興味津々といった調子で大きく首肯する。

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