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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第六章 復讐と厄災
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もう一人の管理者

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 この物語に登場するある人物が、2人いる本作のラスボス格のうちの一人となります。プロット通り進行していて、年内に終われる見込みがついてきたところで一安心ですね(*´ω`*)

 今回は、後書きの部分にこのお話の裏話を書いております。お暇な方はぜひ、そこまでご覧になっていただけると幸せです(゜∀゜)

 次回の更新は今週金曜日7月20日20時となります!興味がある方はぜひぜひどうぞ!☆(´ε`


・ミラー邸宅


 ルネがグルベルト孤児院を後にしたのとほぼ同刻、ティルネルショッピングモールを後にしたケイティとストラスは、早速ミラー邸に赴いていた。

 ミラー邸はグルベルト孤児院からさらに南に進んだ小高い丘に位置しており、かなり大きな邸宅だ。荘厳な佇まいから醸し出ている空気はひどく陰惨としていて、如何にも汚いことをして成り上がってきたような傲慢さを醸し出してる。形だけで主張する門構えをくぐれば、人間離れした技量で手入れされた庭園と、その整然さからはみ出すものすら存在しないオブジェクトが邸宅に来る者を迎え入れ、嘲笑に似た居心地悪さを与える。


 それはケイティも同様なのか、特にそれらのものに目を向けることなく、玄関まで進むと、ストラスに対してとある忠告をする。

「此処から先は監視カメラの山です。どれも入った者の顔を記録するようになっていますが、それよりも盗聴器に気をつけてください。つまり余計なことは口走らず、あくまでも自然体でお願いします」

「監視カメラの山なのに安心なのか?」

 ストラスの疑問に対して、ケイティは苦笑いしながら答える。

「監視カメラと盗聴器は、管理しているコンピュータが違うのです。監視カメラ映像は私でも管理できるのですが、盗聴器は父などの一部のものしか管理できません」


 その言葉を聞き、ストラスは素直に疑問を呈する。

「……すごく疑問だけど、あんた何者なんだ? いくら令嬢だからって、どうしてそこまでの権限がある?」

「私は一応、父の片腕として育てられましたから。表立って行動しておりませんが、一定の業務に携わっているんですよ。と言っても、父がオーナーをしている事業の管理が中心ですがね」

「なかなか大変な生活を送ってるんだな」

「そんなことありません。慣れればですが。さ、開けますね。人にあったとき、護衛であると紹介します。その時、とある人になりすましてもらいますから、私の演技に合わせてくださいね」

 ケイティはそう言いながら、ゆっくりと扉を開き、空いた片方の手で中へと促した。

 ストラスはひとまずそれに従い、室内に入っていく。

 入った瞬間から警戒心を強め、ゆっくりと室内を見回すと、外装よりも遥かに嫌味っぽい内装が敷き詰められていた。絢爛豪華な家具の羅列に加えて、重々しい空気感がその場に鎮座している。


「私の部屋へ行きましょう。どうぞこちらに」

「わかりました。ケイティ様」

 適当な小芝居を混ぜつつ、物音の不審さを消して彼女の部屋へと進んでいく。

 廊下も嫌味な装飾は一切変わらず、むしろ過激さを強めているようだった。

 数分程度回廊を歩けば、その中で最も装飾の強い扉にたどり着く。その部屋は、ケイティの父親であるアルベルトの部屋のようだ。

 勿論ストラスは、疑問にまみれた表情をするが、ケイティは予定通りといった表情で扉を開き、室内に入る。


 部屋は綺羅びやかな邸宅の中で最も装飾が美しく、ひと目で凄まじい費用をかけて作られているとわかるものだった。クリスタルを連ねたようなシャンデリアの下には、複雑な装飾が施された家具一式、特にソファとテーブルに関しては同じベクトルの装飾と素材が用いられていて、それ単体だけでも相当な価値がありそうだ。恐らく、この部屋が最もこの邸宅の中で中核の部分なんだろう。


 まさに金持ちの佇まいというの空気感に圧倒されているストラスの一方、ケイティは一切気にすることなく、サイドボードのメモを手に取りながら、玄関のときと同じようにソファへ促す。

「どうぞおかけください」

「失礼します」

 それに従いソファに着地するストラスは、座ったことのない高価なソファに驚きつつ、怪訝な素振りであたりを見回した。

 そんなストラスに対して、ケイティは喋りながらとあるメモを差し出す。

 メモには、「此処から先は筆談で。ここにある資料を準備します」とあり、そのままサイドボードに入っている数々の資料を取り出し、そっとテーブルの上にそれを広げた。


「貴方に護衛を頼んで正解でした。私から、折り入って頼みがあります。聞いてくれるでしょうか? ”パールマン”さん」

 いきなり先程言っていた「パールマン」の名前が出てきた瞬間、ストラスは驚いたような顔をして目を見開いた。

 その瞬間、ケイティは再びメモをストラスの前に出す。メモには、「パールマンになりきって、私の演技に付き合ってください。口調はそのまま敬語で」と書かれていた。

 それを確認したストラスは、すぐに従い演技を始める。

「勿論です」

「それはよかった。実は、ここ最近動いている不審な事柄を、調べて欲しいんです」

「……と言うと?」

「オフィリア、アレクシア、知っていますか?」

 聞き覚えのない名前に対して、ストラスはどういうわけかよくわからなかったが、そのまま探るように尋ねる。

「その人物たちは?」

「とある情報筋から、今回のトラブルに関わっているようです。貴方には、私の護衛をしつつ、そのことも調べてもらいたいのです。よろしいですか?」

「勿論です」

「貴方でしたそう言っていただけると思っていました」


 彼女は満足げな顔をしながら、とある資料を開き、ゆっくりととある部分を指でなぞった。

 そこには、ミラー家が過去旧リラにおいて、「サイライ」と呼ばれる悪魔宗教を用いた新しい軍事力を用いることで巨万の富を得たということと、それ以降ミラー家は魔天との仲介部分となっていたことが書かれている。

 それを見てストラスは目を疑った。悪魔宗教「サイライ」は、ストラスが過去滅ぼした場所であり、同じ天獄で失せ物探しをしているベリアルが実験体となっていた場所でもある。

 「サイライ」は、幾人かの魔天を実験体として、人間に対してその力を組み込む「プラグ」という実験を行っており、後のザイフシェフト事件でも活用された最悪の技術だった。ストラスはベリアルを助けるため、「サイライ」内部の協力者とともに壊滅させたものの、その残党がザイフシェフト事件を引き起こしたことが、25年前の事の発端であった。

 しかしそのこと以上に、この街のあらゆる厄災の発端とも言える団体を使って巨万の富を得ていたと言うのは、経済を回す側の資本家にとって致命的な情報である事に驚いていた。そのことを知っていて、ケイティはこの情報を提示したのだ。

 このことを知ったストラスは、彼女の覚悟の深さを知るとともに、今回のトラブルが単純な失踪事件ではないことを改めて理解する。もっと直接的に言えば、この失踪事件は明らかに魔天コミュニティ内のトラブルと繋がっているということだ。


 それを理解しつつ、ケイティが示した更なる資料を提示していく。

 内容としては、仲介先になっていたのは、イルシュルという人物であり、その人物は現在のトゥール派の中で最も地位の高い人物で、「サイライ」の実験体となった幾人の魔天の提供や、魔天に関する知識などを秘密裏に提供していたらしい。この資料を信じるのならば、イルシュルは魔天コミュニティに対して明らかに裏切る行為を行っていた事になる。

 ストラスはイルシュルについて噂程度にしか知らないものの、碌な人物ではないことは噂で聞いていた。具体的には、「野心家で手段を選ばない人物」などという噂がどこに行ってもあり、その噂と違わず、過激な選民思想的な行動が目立つ人物で、敵対している現メルディスであるベヴァリッジは相当問題視していたようだ。

 あくまでもゴシップの範囲から抜けないが、ストラスはそのことが真実であると確信していた。


 これらの情報以外にも、色々な情報があると思われるこの資料を持ち出すことはできないだろうか。ストラスはそう思い、すぐにその旨をメモに書きケイティに伝えるが、彼女は無残に首を横に振り、メモを書く。

 メモには、この資料にマイクロチップが埋め込まれており、持ち出しは不可能であることが書かれている。かなり厳重であるその資料が、ミラー家にとって相当重要な資料であることは言うまでもない。しかし、その量は凄まじい。ただでさえこの場にいることはリスキーであることを考慮すれば、この資料全てに目を通すことはできないだろう。

 ストラスがそんなことを思っていると、ケイティは再びメモをストラスの前に出す。そのメモには、この資料は閲覧する時間が決められており、30分経過すると警報が鳴り響くシステムになっているらしい。

 全くもってどういうシステムなのかと疑問に感じながら、ストラスは写真を撮影できる記憶媒体で記録可能かを尋ねる。

 すると、それについては問題ないらしく、無音カメラで行ってくれれば良いとメモで伝えてくる。


 メモを見たストラスは、すぐに記憶媒体で写真を撮り始める。大量の資料すべてを撮影し切ることはできないだろう。残り時間で撮影できたのは、資料の半分にも満たない。それだけの資料にまとめるほど、資本家というものは真っ黒だということだろう。

 ある程度情報を撮影したところを見届けると、ケイティは時計を確認し、万が一に備えきっちり制限時間の5分前に資料を戻し始める。


 完全に資料を戻し終えたケイティは、更に演技を続ける。

「さ、そろそろ行きましょう。貴方のこと、もっと知りたいですからね。依頼人として」

 ケイティはそう言いながら、そそくさと資料を戻しながら、扉を開く。

 勿論ストラスは、それに従いながらミラー邸を後にする。


 ある程度場所を離れた時だった。ケイティはストラスに対してこう持ちかける。

「情報については、ルネさんと共有してください。私はもうそろそろ戻らないと怪しまれますから、また会いましょう。次のアクションについては、こちらから電話します」

「大丈夫なのか? そんな頻繁に連絡して」

「えぇ、あの回線は特定の時間以上になればホストコンピュータに送られますが、短時間であればこちらから削除可能です」

「あんたがそういうのなら心配なさそうだが、慎重に行動しよう。お互いに」


 ケイティは、その言葉を聞き「勿論」と残し、そのままその場を後にする。

 取り残されたストラスは、とりあえずルネと合流する為にグルベルト孤児院に向かった。




 ここまでご覧になっていただいた方がいましたら、今までご覧になっていただいたことに対して深い感謝をさせてください。

 どこかにこの物語について書いておこうとは思っていたのですが、場所がないのでこの後書きを借りて書いていきたいと思います。


 まず、どうしてこの部分でこのことを書いているのかというと、この部分である程度の場面設定が終わるからです。書いているうちにかなり複雑な場面が多くなってしまっていますが、実はこうなってしまっているのは、この物語が本来2部であるからなんです。

 元々、この物語の世界観は私の趣味を全部ぶち込んだもので、1部はあまりにも私の趣味しかなかったので、連載ということに主眼を置いて、私が好きで書くことができ、尚且ある程度お話としての体裁を成しているものとしてプロットを組みました。

 しかし、このために作ったプロットが問題でした。元々は2部として作ったものだったので、1部で盛り込んだ情報を前提としたプロットが出来上がり、尚且それが私にとってドンピシャだったのがここまで複雑化した原因です。


 流石に1部で出てきた情報を平然と打ち込むことはできず、この物語の視点がかなり錯綜するのは1部の前提を補っているからなんですね。読み手としては見にくいことこの上ない状態ですが、奇数章と偶数章で場面転換をして解消を図っています(結果的にそこまで解消されていませんが)。

 ちなみに、偶数章のキャラのほとんどが1部の続投で、作中で出てくる「25年前の事件」はそのままそれが1部だったんですね。

 そんなこんなで続いているこの物語なのですが、これからもお休みすることなく、完走に向けて更新を頑張っていきたいと思います。


 連載ということから、クオリティよりも連載することを中心にしているので、適宜矛盾点等が出てくるとは思いますが、とりあえずは完結を最優先にこれからもこの物語は続いていきます。ここまでご覧になっていただいた方、改めてありがとうございました。少しずつ変化するPV数がささやかな心の支えになっていますので、ご覧になっていただいた方全てにお礼申し上げます。


 それでは、後書きはこれにて失礼します。

 次回は今週の金曜日20時となっているので、続きをご覧になる方がいましたら、その時間にまたお会いしましょう。

 完走までがんばります(*´ω`*)

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