呪いの方舟
前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)
今回も前回に引き続き結構短めとなっています。実際、どのくらいの量かは決めていませんが、ここいらから明確に一話分の量を決めたいなと考えています。
打って変わって、この部分に出てくる3つの単語はこの物語の中核となるので、最初から読んでいただている方は頭の片隅にでもとどめておいていただけると幸いです(*´∀`*)
次回の更新は来週月曜日7月9日20時となります!興味がある方はぜひぜひどうぞ!☆(´ε`
ルネはその後、再びグルベルト孤児院を訪れる。しかし、前日も来ていることに加えて、セフィティナに追い返される可能性があるので、慎重に職員玄関から侵入した。勿論窓から人がいないことは確認済みであるが、忍び足で進むことを忘れないように、ルネは常に一歩おいて考えながら職員室に到着する。
職員室は、職員各々に1つ机が与えられている他、正社員以外の非常勤講師が使用する机が4つ設けられている。そのうちの一つはほぼ正社員と同じような佇まいのルネの机であり、ここ最近は授業の問題で使われていない。実際に正社員として働いているのは、アイザクとセフィティナ、フギンとムニンの4人で、そのどれも机に鍵がかけられている。しかし、同僚としてフギンとムニンが情報を握っているとは思えない。狙うのであればアイザックか、セフィティナの机だろう。
まず最初に、カーティスの出生について何か知っているであろうアイザックの机だ。見た目としては、仕事道具のパソコンと丁寧に整理された生徒の資料がファイリングされブックスタンドに並んでいる他、幼少期のアイザックとセフィティナの写真が並んでいる。と言っても、今の彼とほとんど変わっておらず、ちょっと身長が伸びている程度だろう。それについてはさほど気にすることはないが、丁寧にファイリングされている資料は、子どもたちごとにインデックスが飛び出ているのだが、その中にはやはりカーティスのものがない。彼の性格からして、カーティスのものはまとめて隠して保管しているのだろう。隠し上手な彼の私物を確保することは不可能だろうが、何かしらの手がかりを求めて、机の中を引っ掻き回す。
意外にも一番下の机はあっさりと開いたが、そこにあったのは大量に資料が一纏めにされており、今にも捨てられてしまいそうな佇まいである。多分廃棄資料を一旦まとめているのだろう。資料はアイザックの癖である乱雑な固結びでまとめられており、ハサミでもない限り解くのは困難である。廃棄資料を閲覧することができないと踏んだルネは、すぐに上の引き出しを開く。
しかし、以降は鍵がかかっていて、開けることができない。無理やりこじ開けることもできるかもしれないが、流石にそこまで強硬手段に出れば信頼を欠いてしまうかもしれない為、そこまではしたくない。ルネは一旦アイザックのところを離れて、隣のセフィティナの机を調べ始める。
セフィティナの机は、アイザックと比べると雑然としているものの、その根源はアイザックの写真だった。もはやアルバムと言ってもいい状態になっており、発達過程の順番に並べられていて、これだけを見ると実験の記録のようだ。それ以外に関しては基本的にアイザックと変わらない。パソコンとファイリングされた資料のみで、写真以外は整然としている。
ルネは先程の通り机を調べ始める。今度は一番上だけが開き、その他は開かない。性格の違いが出たところで、そこに入っているものを一つずつ調べる。
入っていたものは、何かしらのメモ複数枚と、事務道具、そして見覚えのない本の表紙という当たり障りのない内容だ。普段使い用の引き出しのものらしく、若干心苦しさを感じつつも、中から出てきた物品を調べていく。
事務道具に関してはセフィティナが普段から使っているペンケースであるため、中身をちらりと確認するだけにとどめ、すぐにメモを一枚ずつ調べる。
メモは3枚あり、1枚は仕事中のメモらしく見覚えのある名前が書かれている。しかしその他の3枚のメモは理解できない単語が書かれている。1枚目のメモは、「”ウロボロス”の所在について確認。対象については必ず生かしておくこと」とのみ書かれていて、2枚目のメモに続いているようだ。
2枚目には、「ウロボロスの確保はリーダーを中心に行動すること。この街で行動している者は、アメジストが観察し不要になったら処理すること」、これも3枚目に続いているようで、「”テンペスト”に備え、ウロボロスの確保を早急に行う必要があるものの、”方舟”についてはどの者にも絶対に悟られないように。方舟の所在については現在捜索中」、これが全文であるようだ。
「(テンペストとか、ウロボロスとか……何なんだろう。字義的なことじゃなくて、コードネームか何かかな?)」
ルネは疑問に思いながらも、出てきた「ウロボロス」、「テンペスト」、「方舟」の単語をメモし、一応メモに書かれていた内容についてもまとめてメモを取る。見る限りは何かしらの計画の指示のようだが、内容が単語についてのものであるがゆえ、どのようなことを意味しているのかは完全に不明である。しかし、情報としては結構なものと勝手に判断し、ルネは更に本の表紙も調べ始める。
本は「R&H著 クラックアップとダブルミーニングから発生する災厄」という本だ。勿論表紙だけなので、どのような内容なのかは不明である。よく考えれば、セフィティナはよく本を読むときに表紙を剥いで読んでいたので、本体は本人が持っているのだろう。
ルネは不意に、面倒な癖を持ってくれたものだなどと思いつつ、本の名前もメモしてすべての物品をもとに戻して、今度はセフィティナのパソコンを開こうとする。
勿論、コンピュータを開くためにはパスワードが必要だ。
「(……あの人が入れそうなのって、記念日関係かな。アイザックの誕生日とか?)」
そんなこと思いながら、ルネはアイザック関係の数字を打ち込んでいく。すると、見事に一発目でパスワードを引き当てる。内容としてはそのままアイザックの誕生日であり、恐ろしく短絡的である。
パソコンの中身を調べていくと、基本的に入っているデータは仕事で使うものばかりで、めぼしい情報はないが、なんとカーティスのここ最近の動向についてデータが残っていた。しかしそのデータは彼の出生に関するものではなく、つい最近彼がどのようなことをしたのか、現住所などが書かれているだけで、目ぼしいものは少ない。と言うより、既存の情報がほとんどである。
とりあえず、現住所に関してはこの後訪ねる為にメモを取る。
一方、がさごそと音を立てる職員室の扉をひっそりと開けるものがいた。




