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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第五章 物性質の支配主
20/169

共通項

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 この部分は私が本来このお話に求めていたような部分でして、長すぎたため少々変なところで切れていますが、この部分については特例で明日投稿となります(´・ω・`)

 ということで、次回の更新は翌日23日土曜日20時です!興味がある方はぜひぜひどうぞ!☆(´ε`

「にいにー!! 起きて!!!」


 翌日、カーティスらに対してかけてもいない目覚ましが鳴り響く。

 それは、どういうわけか赤ん坊の姿では全くないレオンだった。背丈はいつのまにやらイレースとほぼ同じで、楽しそうにカーティスの体を大きく揺さぶった。

 一方、それにより起こされたカーティスは、眠そうに瞳を擦りながら、ハマりきらないピントでレオンの頭を撫でながら、彼のこと手を制止する。しかし、その後異常事態に目を丸くし、驚きながらレオンを見据える。


「あー待て待て……って誰?!」

「レオンだよ!」

「あーレオンか……あれ、おっきくない?」

「早起きしたからかな!」

「なるほどなるほど……イレース!!」


 カーティスは、不意にイレースの名前を叫ぶ。イレースは意識の中で爆睡していて、全く起きる気配がない。恐らく普段から朝が弱いのだろう。よくよく見ればベッドの周りに異常な量の目覚まし時計がセットされている。勿論今は、時間を設定していないためならないが、ぱっと見るだけで5つほどある。

 その形相に違わず、カーティスはイレースの名前を何度も呼ぶが、全く起きない。これでは暫くは無理だろうと判断したカーティスは、とりあえず成長したレオンを見据え、再び彼の頭を撫でる。


「本当に……あのレオン? 確かにぷにぷにの頬とかは変わってないけど……」

「えへへ~にいにー」

 レオンはそう言いながらカーティスに抱きついてくる。そして、満足したように瞳を閉じた。

「あ、こりゃレオンだな」

「お腹すいたー」

「確かにな。イレースには悪いが、冷蔵庫漁らせてもらおう」


 カーティスは、そのままレオンの手を引きながら寄宿舎の中を進んでいく。

 室内のほとんどは蔵書で覆われており、いかにも学者的な家であるが、キッチンは普通の佇まいである。それを見てカーティスは、意外にもキレイにしているんだな、などと思いながら冷蔵庫を開ける。


「うわー、性格出てるなー」


 冷蔵庫は丁寧に整理整頓されていて、普段から使うものは袋でしまっているらしく、日常的に料理をする人の冷蔵庫である。食文化は基本的に変わらないらしく、ご飯や見覚えのある根菜、お肉等の食材が袋に詰まっている。

 その中で、お惣菜が入った袋を見かける。手にとって見ると、つい最近作られたもののようだ。


「これでいいか。煮物か? これ」

「お野菜なの? あんまり好きじゃないよ」

「お肉もあるし、だいたい好き嫌いしないの!」

 レオンは煮物と聞いて若干顔を顰めるものの、その後仕方なさそうに項垂れる。

 一方のカーティスは、取り出した煮物らしき袋を解こうとする。

 しかし、その袋は固結び状態で、手で開けることが不可能な状態だ。

「たっく……なんで固結びにしてんだよ」

 カーティスは思わぬ足止めを位、近くにあったハサミでそれを開封し、器に入れて電子レンジにかける。

 その間、レオンに「もう少し待ってな」と声がけしつつ、他の食材にも視線をやる。


「(あいつ……なんで綺麗に全部固結びにしてんた)」


 恨み言のようにそんなことを思うと、他のすべての結び方が固結びになっていることに気がついた。ダストシュートに入れられているゴミ袋も、捨てられている雑誌の結び方も、全てが固結び状態だ。

「呪いかよこれ」

 イレースの嫌がらせのような癖に、カーティスは思わず大きくため息をつく。

 

しかし、それが原因で内部のイレースが目を覚ます。

「今、何時?」

「知らん。ていうかお前、なんで悉く全部固結びにしてんだよ」

「何言ってんだよ……あれ、そちらの男の子は何者?」

「レオンだぞ」


 そのことを聞くと、イレースは一瞬フリーズすると、声を震わせながら「理論通りだよね」と口にする。その反応から、その光景について見たことはなかったらしい。

 確かに、こんな状況を目の当たりにすれば誰だって同じような反応をするだろう。

「ということで、レオン含め俺も飯を食いたいから食べてもいいものを教えてくれ」

「冷蔵庫の中に何が入ってた?」

「色々」

「開けろよ」

 イレースに従って再び冷蔵庫を開いたカーティスは、レオンの頭を撫でながら冷蔵庫の中を一瞥した後、電子レンジの音が聞こえてすぐに煮物を取り出す。

 一方のイレースは、冷蔵庫の中に入っていたものに記憶がなく、とりあえずはなんでもいいよとカーティスに伝え、突如変形したレオンの観察をしたそうにカーティスの見ている視界を眺める。


 カーティスは適当にご飯の用意をしたあと、ダイニングにそれらを並べ、レオンを座らせると、自らも椅子に座りレオンに対して頂きますを教え込む。

「レオン、いい? こうやって、両手を合わせて頂きますって言ってから食べるんだ」

「頂きます?」

「そう、ご飯に対する敬意って言うのかな。感謝を伝えるんだ」

「そうなんだ! じゃあ頂きますする!」


 レオンは無邪気にそう言うと、カーティスの仕草に従って両手を合わせて大きく「頂きます」と言ってご飯を食べ始める。

 意外にも食べ方は綺麗で初めてにしてはカトラリーの使い方もしっかりしている。

「レオン、食べ方キレイだな」

「いろいろな人の食べ方見てたから、使い方はわかるよ! でも、こういう礼儀とかは知らないから、すごく新鮮なんだ!」

「ほう、これからも面倒事になると思うから、最初に謝っておくわ」

「それは別にいけど、にいにと一緒じゃないと嫌!」

「それについては頑張る」


 ご飯をもぐもぐしているレオンを見るカーティスの一方、イレースは思い出したように端末に送信されているであろう解析データを調べるように指示する。

「カーティス、食べ終わったら寝室にある端末に解析データが届いているから、確認してほしい」

「了解。もう食べたから今行く」

「早すぎるだろ」

 いつの間にかたらふく食べたような佇まいをしているカーティスは、すぐに端末を調べ始める。パスワードやアカウントを入力してログインすると、解析データがメールで届いている。


「これか。使い方はザイフシェフトのやつと同じっぽいな」

「そりゃそうだよ。ここの機器関係はルイーザから来ている。やっぱり資源的なものや、発達しているものとかは違うからね」

「なるほどねー、あ、これか。レオンのデータ解析」

 カーティスが当該データの解析データを調べると、先程までご飯を食べていたレオンがひょっこりと顔をだす。

「レオンも見るか? わかるか知らないけど」

「みるー」


 そんなこんなでカーティスとイレース、何故かレオンという異色のメンバーで解析データを眺める。

 表示されているデータは数字だらけで殆ど理解できず、実際どのようなことを指し示しているのかはわからない。

 このデータはイレースが見てこそ意味があると理解したカーティスは、さほど興味なさげに視線を落としていく。気がつくと指先はレオンの髪の毛に向かっていて、わしゃわしゃと髪先を弄る。


 対してイレースは、それが示すデータをかいつまんでカーティスに伝える。

「カーティス、色々と厄介なことがわかったぞ」

「なんかあったの?」

「すっかり飽きてるけど、重要な話だ。まず、レオンの能力は体から漏れ出たエネルギーの相を司る能力と見てまず間違いない」

「そう?」

「そこから説明が必要? 相っていうのは、物体の状態のことで、気体とか固体とかだよ」

「あー理科で習ったな」

「うん。普通魔天の力は相を一形態ずつしか表現することができないんだ。スポアは常に固体だろう? レオンの力はそれを自在に変えることができる。僕らが一番最初にレオンの力を見たのはアーマーをまとった襲撃者だった。あのときは、液体としてアーマーに染み込ませたエネルギーを一気に固体に変えることで内側からアーマーを割ったんだ」

「待てよ。流石にそれについては俺も不可能だってわかるぞ。どうやって物体の中に入った液体を固体にするんだよ」

「そんなことが解析されたらダウンフォールが謎になんてなってない。物理学を根本的に割っていくのがダウンフォールの力なんだ。どんなことが起きても不思議じゃない」

「つくづく意味不明だな。ま、そういうところは学者の管轄だから俺の関与するところではないがな」

「そりゃそうだね。で、この物質は相の状態で構造がかなり違うようで、液体状の場合はほとんど真水と同じ構造をしていて、個体の場合は物質化したスポアと同じ構造。気体の場合は水素に近いらしい。相によって扱いをかえないと危険だと思う」

「留意点は分かったが、どういったことに活用できるかとか、どういったことが想定されるかとかはわからないの?」

「そりゃデータを解析しただけだから、そういうことはこっちで想定するしかないもの。この手の想定はやっぱりイリアとかのほうが有能でしょう」

「言っちゃ悪いが、イレース全く役に立ってないよな。室長なのに」

「だから僕は専門外だっつーの!」


 カーティスとイレースの会話に、レオンは不思議そうな表情で聞き入っている。

 それを見たカーティスは、珍妙な表情を浮かべているレオンに対して「どうしたの?」と尋ねる。

 すると、レオンはまるで2人の会話を聞いていたように笑う。

「にいにたちが話してるの、楽しそうだなって思っただけよ」

 その言葉を聞いて、2人はひどく凍りつく。


「レオン……イレースの声も聞こえてるのか?」

「あ……マジなの?」


 レオンのことを見据える2人に対して、レオンは大きく首を縦に振る。

「勿論! パパとママだもんね!」

 聞き取っていた割には謎の勘違いをしているレオンであるが、とりあえずカーティスのことをパパ、イレースのことをママだと認識しているらしい。


「ママだって、良かったなイレース」

「いやいやいや……僕はレオンのママじゃ……」

 そこまで言いかけてイレースは、レオンの笑みを見て出かけていた言葉を引っ込め、改めてレオンのことを見据える。

 それは、それまで向けられたことのなかったキラキラした瞳に、謎の母性を感じているようだ。そして、それに続いて「本気でこの子のママを目指すべきだね」と自らに言い聞かせて何やら張り切っているようだ。

「ママだよ!」

「ママー!!」

 カーティスの意志とは逆行するように、2人は熱い抱擁を行った。当のイレースとしては兵器とかもうそんなことは頭にないようで、レオンのことを全力で可愛がっている。

 若干の現金さを感じているものの、とりあえずは仲良くなってくれたことは好ましいことである。心のなかで自分に言い聞かせ、盛り上がっているイレースに話しかける。


「前向きになってくれたのはいいことだが、これからどうするんだよ。大体俺たち今どういう状態なんだよ」

「大混乱だよね」

「見りゃわかるわ。ちょっと整理したほうがいいだろ」

「そうだね。今の状況を整理しよう」


 イレースは、カーティスにパソコンのテキストエディタを開かせ、そこに情報を整理し記録してほしいと頼む。


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