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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第十九章 不条理成る管理人
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 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 実は前回、記念すべき150部目だったらしいのですが、全く知らずにそのまま無視していましたね。ちょっと残念だったり残念じゃなかったりしました(´・ω・`)

 やはりこの部分が一番長くなったので、少しくらいは構成力が上がったのかもしれない……。


 次回の更新は来月11月1日金曜日22時となっています。次回もご覧いただければ幸いです。



「ペリドット~……ちょっと遊びすぎたんじゃないの?」


 それは、つい最近コクヨウに加入していたネフライトだった。ネフライトは半袖短パンというフォーマルには全く似つかわしくない服装をしていながら、露出している皮膚が人の顔のように変形しており、両手足の関節に浮かぶ顔はそれぞれ苦悶の表情を浮かべているようだった。

 その不気味な形相に、その場にいた全員が訝しげにネフライトを観察する。


 しかし、そんな視線を気にすることなくネフライトから言葉を投げられたペリドットは、睨みつけるように「煩いよ」と吐き捨てる。

 そんな言葉をかけられても気にした様子なく、ネフライトは余裕たっぷりの笑みを浮かべていう。


「僕は君のことを思っていってるだけだよ。流石にそこまで追い込まれるとは思っていなかったと思うしね」

「こんなところで油売ってる暇があるのなら、とっとと目的のために尽力してほしいんだがな」

「だからここに来たんじゃないの。もうバレてるよ、君が本体の影武者って言うことくらいね。それに、ある程度戦える君でも、この場にいる全員を相手取るのは厳しいでしょう?」

「……だから?」

「だから~、僕も参加させてよ」


 ネフライトがそう言った途端、皮膚が弾けるような破裂音が聞こえた後、背部から無数の触手と形容していいのか悩む物質が4本出現する。

 それは、今まで魔天が出していた鋭利さとしなりを持つ鞭状のものとは程遠く、それぞれ人間の手足をモチーフにしたような奇怪なデザインをしていた。とある一本は大量の腕をつなげたようで、他のスポアと異なりしなりは一切ない関節単位で動くグロテスクなものだった。

 他にも足と手をそれぞれ交互に繋げたような形状のものや、大量の指が浮き出た吐き気をもよおすものもあり、その場にいた全員があまりの気味の悪さに顔を歪める。

 同時に、それまでのどんな敵よりも禍々しい風貌に、ビアーズですら顔色を変えた。


「たまに僕も、すっごく遊びたくなっちゃうんだよね~」

 その言葉を皮切りに、ネフライトは凄まじい速さで動き出し、ペリドットを攻撃しているビアーズらをまとめて攻撃するように腕状の触手をドーム状に変形させる。

 これにはさすがのビアーズもすぐさまペリドットらから距離を置くように全員に促すが、ドーム状にまで変形したネフライトの攻撃は、確実に全員に捉え、ドームの内側を全方位貫くように腕が伸び始める。

 ドームは人が通れる隙間など一切なく、短時間で破壊することはまず不可能である。おまけにドーム内側には今にも数千と並ぶ大量の腕状の触手が凄まじいスピードで迫ってくる。


 その場にいた全員が攻撃を避けることはできないと判断し、全員が自らのスポアを自分だけにまとわせ、防御壁を形成する。

 一方、ドームから生じた攻撃はその防御壁を易々と破壊していき、中にいるすべてを破壊しようと攻撃を激化させる。


「さ~、誰が生きるのかな~」


 全員が本気の殺意を強く感じ始めた頃、追い打ちをかけるようにネフライトの楽しそうな声が響き渡る。

 しかし、その言葉を放った数秒後、ネフライトが形成した巨大なドーム状の触手が急激に朽ち果てていき、最終的にすべてががらがらと瓦解していく。そして、朽ち果ててしまった大量の瓦礫を放置するように、ネフライトは嬉しそうな声を上げて誰かに抱きついた。

 なんとか窮地を打開したと安堵したビアーズらは、なんだなんだと言わんばかりにネフライトの方を一瞥する。

 すると、ネフライトを抱きしめているミラと、死んだような無表情で手を握っているルネがあった。



「ペリドット、ネフライト、俺はここまでしろとは言わなかったよね?」


 ミラは冷静かつ優しい口調でそう諭す。

 すると、ミラに抱きついているネフライトは若干焦ったような笑みを浮かべながら反論する。

「でもでも、こいつらミラの言うこと……きっと聞かないよ!?」

「仲良くなるためにネフライトたちに動いてもらってたし、それは大丈夫なんだよ。ペリドット、君も皆殺しまでしなくていい。少し休んでいて。ここから先は俺たちがする」

 ミラのこの言葉に、ペリドットは傷を修復しながら従い、そっとミラとルネの後方に移動して臨戦態勢を解除する。


 一方、一連の動きを見ていたベヴァリッジは、沈黙を破りミラに尋ねる。


「貴方は……本物の、エノクδですね?」

「本物、という形容に対してどう反応していいのかわからないですが、貴方たち風に言えば“第三の組織”のボス、ということにしておきましょうか」

「これはこれは……、それでは、ここに実力行使に来た、と?」


 ミラは、ベヴァリッジがそう告げながらも、余裕たっぷりの笑みを浮かべて周りを一瞥する。

 そして、即座に現状を理解しつつ大きく首を縦に振る。


「実力行使、というよりかは交渉に来ました。まさかここまで出ることになるとは思いませんでしたけどね。もう少し簡単に達成できると思ったのですが……」

「お褒めの言葉、誠にありがとうございます。それでは、以降の交渉には武力行使はないと判断してよろしいでしょうか?」

「今のところは……、としておきましょうか」

「つまり、貴方たちのの目的に沿う行動をこちらが取れなければ、武力行使も辞さない、ということですね?」

「察しが良くて助かります。椅子をお借りしますよ」


 ベヴァリッジの言葉を待たず、ミラはルネ分の椅子を用意し、そのままネフライトを膝の上に乗せて椅子に腰を下ろす。


 ミラがこれから行うことは、この場の状況を見てある程度方向性を決す予定であったが、その場に現れたときの惨状を見れば、ある程度の状況を把握することができる。恐らく、その場が凄まじい戦場と化していたのは、「第三の組織の目的を言及したコミュニティサイドが反発し、そのまま戦闘に発展した」というくらいであろう。

 それであれば、ペリドットが目的を隠蔽したということから、その目的をでっち上げ、さらなる圧力を与えることが必要である。

 そして、その適当な目的は、すぐにミラの頭に浮かぶほど単純だった。それまでペリドットが徹底的に目的を隠した理由と繋がり、今までの第三の組織との行動に矛盾しない目的を。


「さて、恐らく貴方たちが求めているであろう目的を先に話させてもらおう。俺たちが望んでいるのは、なんとなく貴方たちのほうが知っているのでは?」

「その前に、貴方についていくつか質問をしてもよろしいでしょうか」

 目的をストレートに話そうとしていたミラは、「そう出るか」と内心思いながらも笑みを浮かべ、丁寧に首を縦に振り「どうぞ」と手で促す。


「感謝します。私共は、第三の組織はエノクδが首謀者となった組織であると考えています。そして、貴方は分身の動きを止めて交渉に現れた……」

「大分複合的な質問をはらんでいるようですが、一つ一つストレートな質問を積み重ねたほうがよろしいのでは?」

「そうさせていただきます。第一に、貴方は何者ですか? エノクδ本人ですか? それとも、それとは別の協力者ですか?」

「協力者であり、首謀者であるという立ち回りしているといえばいいでしょうかね。エノクδ本人はこっちのルネの方です。俺は保護者兼首謀者といった具合でしょうか」

「貴方と、ルネさんとの関係性は?」

「随分とプラベートな内容まで言及するんですね」


 ミラは揺さぶりをかけるように皮肉っぽく尋ねる。続けて、更に皮肉を被せるように「この子にした仕打ちは、貴方たちのほうがわかっているのでは?」と吐き捨てる。

 すると、ベヴァリッジはこれに対して「勿論です」と続ける。


「我々が彼にしてしまったことは許されることではありません。ですが、我々の情報網には貴方の情報は殆どありません。何者でしょうか?」

「俺が何者であるか、ご存じないと? そう仰るのですか?」

 ベヴァリッジの言葉に、ミラは鬼気迫る調子でそう尋ねる。突然変わったミラに、その場にいた全員が張り詰めたような緊張感が室内に漂い始める。

 そして、続けざまにミラは25年前の事件について言及する。



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