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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第十九章 不条理成る管理人
149/169

-7

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 7節目です。第19章は交渉と戦闘の2つから成る部分なので、文章として起こすのと、実際に伝わる文章になるかが別問題でかなり難しい内容です。私は後者の部分が致命的に苦手なので、今後の課題ですね。

 裏話なのですが、この物語における「魔」と「天」という設定のほとんどはデビルメイクライシリーズをモデルに練っています。あくまでもモチーフとして使用しているだけなので、設定に関しては自分で考えて使っていますが、戦いについては若干ゲームを自分なりに言語化して書いています。戦闘という動的な動きを表現するのって本当に難しいですねー(´・ω・`)


 次回の更新は今週金曜日25日となっております。来週については、時間がもしかしたらズレるかもしれないので、その都度更新させていただきます。


 だが、怪物の攻撃はベヴァリッジに到達することなく、後方から現れたバートレットらの攻撃により遮られる。


 バートレットは、ベヴァリッジを纏うように液状のスポアを這わせ、怪物の攻撃が振るわれる瞬間、急激に個体化させることで怪物に損傷を追わせることに成功する。

 一瞬だけ動きが止まった怪物に対して、更にジャーメインが触手状のスポアを用いて追撃を行い、ベヴァリッジを救出する。


「ベヴァリッジ様、ご無事でしょうか?」

「勿論です。コクヨウ様、とても助かりました。残念ながら交渉は破棄とのことです」

「それでは、どうすれば?」

「話を聞きましょう。交渉はそれからです」


 この状況でも、ベヴァリッジは冷静にそう話す。

 けれどもペリドットは「話を聞くだと?」と苛立った調子で話し出す。


「今更話なんて聞いてもらうことを望んでいると思うか? 僕が求めているのは唯一つ、ウロボロスの起動のみ……それだけだ」

「ですが、我々の罪滅ぼしとして貴方の話を聞くのは義務でしょう?」

「その義務として、僕はウロボロスの起動を要求している。どうしてもというのなら、僕は君たちを倒さなきゃいけない……それでもいいのか?」

 ペリドットの強烈な殺気を前に、その場にいた全員が総毛立つが、恐らくそれは演技であると解釈したバートレットらは異形の姿をした怪物と対峙する。


「それなら、僕らも全力で貴方と戦うまで……」

「崇高な感じ出してるけど、アンタと戦いたいだけだよコイツ」

「折角決めポーズ考えたのに!」

 冗談交じりな言葉にその場が凍りついたのも束の間、ダメージを受けた怪物は瞬く間にペリドットにより回復し、再び奇怪な間接音を鳴らしながらケタケタと笑う。


 その不気味な様をバートレットは興奮した面持ちでジャーメインに話しかける。

「こいつはすごい……こんなのなかなか見ないよ!」

「いいからとっととやってくれ」


 ジャーメインの言葉を待たず、バートレットは大きく跳躍しながら怪物の背部に回り、スポアで大幅に強化された手刀を繰り出す。

 それに合わせるようにジャーメインも怪物の真ん前から攻撃の準備を始め、怪物の挙動を確認する。


 対して怪物は、バートレットの手刀を受けた瞬間断末魔のような声を上げる。しかし、一切効いてる様子はなく、声とは裏腹に肩甲骨から伸びるコウモリの骨のような器官が急激に動き始める。

 その器官は、まるで蔦のように変形していき、細長いワイヤーのようなものが何重にも展開される。それはさながら羽のようであり、ひび割れたスタンドグラスを引っ提げているようでもあった。

 これを見たジャーメインはなにかに勘付いたように怪物の背部を蹴り飛ばしながら大きく距離を取り、手のひらから出現させた礫状のスポアを展開されたワイヤーに向けて投げ捨てる。


 すると、ワイヤーに着弾した礫状のスポアは、そのまま重力に従うことなくワイヤーに絡み取られてしまい、粉々に砕かれてしまう。

 これを見てジャーメインは、苦笑いを浮かべながら言う。


「こいつは……有刺鉄線強化版だな」

「触れればあんまり良くないね」

「あんまりどころか大ダメージだっつーの」

 2人がそのやり取りをした後、怪物がゆったりとした動きを翻し、ワイヤーの範囲を広げながらジャーメインへと迫る。ワイヤーはコウモリの骨のような器官からカーテンのように現れていて、ジャーメインを囲うように展開され、それがジリジリとジャーメインへと這い寄り始める。


 その状況であっても、ジャーメインは冷静に左腕からスポアを伸ばし、ワイヤーに接した瞬間、伸ばしたスポアを切り落とす。

 すると、左側のワイヤーは絡め取ったスポアにより隙間が生まれ、そこからジャーメインは窮地を脱して反撃に転じる。すぐさま背部に周り、元々背部にいたバートレットと連携で怪物の肩甲骨の中心を攻撃を必中させる。

 この攻撃でも、先程と同じように凄まじい断末魔を上げるが、一向にダメージを受けている様子はなく、断末魔はやがて不気味な笑い声へと変わっていく。そして、怪物の胸部が不気味に変形していき、何かの口のような器官が形成されドスの利いた低音で話し出す。


「何をやってもこれは倒せないさ」

「……何者だ?」

「これは本体がエネルギーを供給する限り崩壊は始まらない。構うだけ無駄さ」

「つまり本体を落とせばいいんだね?」

「尤も……、大量の怪物が闊歩するここで本体を潰せるかな?」


 ここで初めて、化け物が意思疎通を行えることを理解した全員は、一瞬動きが硬直する。

 そして、その硬直を打ち壊すようにペリドットは叫ぶ。


「最後に忠告する。ウロボロスを起動するつもりは……ないんだな?」


 その忠告に、その場にいた全員がペリドットに注目し、ベヴァリッジが話し出す。


「私の見解は変わりません。貴方の目的がわからない以上、起動できません。交渉をお願いします」

「そうか……それなら、もういいだろう?」

「交渉を、破棄するおつもりで?」

「この場にいる全員ぶっ殺して事態を初期化する。それでいい」


 ペリドットがそう口走った瞬間、その場に出ていた分身すべて解けてペリドットに収束し、全身を包み込み、半液体状の物質がペリドットはケタケタと笑う。


「もう容赦しない。全員まとめて掛かってこい」


 ペリドットの宣言と同時に、四方八方からビアーズ、イルシュル、エンディース、ジャーメイン、バートレットら全員がスポアを突き立ててペリドットに攻撃を行う。

 しかし、この攻撃すらもペリドットの半液体状の物質に阻まれてしまい、一切攻撃が通ることはなく、逆に物質に食い込んだスポアに対して固体化を行ったため、全員が大きなダメージを負ってしまう。

 見事見事に揃いも揃って吹き飛ばされてしまったものの、唯一ビアーズのみが攻撃に受け身を取りすぐさま両腕から逆手持ち状態のスポアで再び攻撃を行う。

 すると、硬質化した物質を器用に扱うペリドットと鍔迫り合いの状態になり、ビアーズはケタケタと笑いかける。


「容赦しない割には全体解除をするんだな?」

「馬鹿め……僕が遊んでやる」

「そいつはこっちのセリフだ。ガキンチョよ……」


 その言葉の次には強烈な金属音が響き渡りお互いのことを弾いた2人は、すぐさまお互いに臨戦態勢に移るように凄まじい変形を遂げる。 

 ビアーズは先のセフィティナとの戦いと同じく、体そのものを大幅に変形させて戦うが、それ以上にペリドットの形状は常軌を逸していた。


 ペリドットは全身を、先程の怪物に近い質感に覆い、本人を纏うアーマーのような状態に変貌する。これは今までの戦闘スタイルとは全く異なるもので、分身を使役する方法ではなく、それを自らに纏うことで自分自身が戦闘を行うというものだった。

 それに対してビアーズは、口笛を鳴らしながら「イカすな」と笑いニッコリと笑う。


 その言葉に似合わず、ペリドットの肉体は凄まじい変形を遂げていた。

 全身は半液体状のスポアともなにかの物体ともつかぬ不思議ななにかに覆われており、背部にかけては先程の統率役ともなる異形の怪物がペリドットを抱えるように有刺鉄線状の羽を広げて守っている。勿論背部の怪物には頭部がなく、先程とは異なり全身が鱗状なにかに覆われていてかなりの強度を持っているようだった。恐らく、ペリドットの体にはこれまでもあったような分身の能力を司り、背部の怪物で四方八方からの攻撃を守るのだろう。


 攻守ともに隙きのない、というより付け入る隙間が一切なさそうな佇まいに、ビアーズはすぐさま手のひらを握りしめ、そこから生まれた無数の礫状のスポアを引っさげて、ペリドットに対して笑いかける。



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