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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第十九章 不条理成る管理人
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 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 そろそろこの前書きに書くこともなくなっているので、ここからは裏話でも書こうと思います。実は、このお話元々もっと早く終る予定でした。だったのですが、丁度これを書き始めた頃、国家資格取得のための勉強も同時に始まり、結局この物語に割ける時間があんまりなくなり、クオリティを配慮する余裕もなく、結局自分の大好きを詰め込んで大好きで固める事になりました。


 この後、こういう裏話をメインに前書きに書いていこうと思います。

 次回の更新は今週金曜日11日22時となっております。次回もご覧いただければ幸いです。


「ペリドット様、一つ質問をよろしいでしょうか?」


 ベリアルはあえてペリドットに直接名指しを行った。これは、あえて不適切なことを行いながらお互いの不和をアピールする戦略の一つであるが、実際のところかなりの賭けである。

 此処から先、お互いがベストなアドリブができない限り完全な逆効果に終わってしまうことを考えれば、ハイリスクな博打である。


 第三の組織のボスことイレースが打ち出した計画において、「第三の組織とコミュニティ内部の繋がりが明らかになる」ことが最も危険な状況であり、これを悟られた場合一気に失敗のリスクが跳ね上がる。

 ベヴァリッジならば、微かな疑問を感じ取って新しい策に打って出ることは間違いない。このことから、ペリドットは汗を握りつぶして発言する。


「……どうやら、状況があまり理解できていない奴がいるようだな? ベヴァリッジ……」

「ベヴァリッジ様、ペリドット様、どうか発言に許可をいただきたい。これは、我々にとってとても大切な話になる……。いや、貴方は聞くべきだ」

 かなり強い言い方をしたベリアルに、ベヴァリッジは冷静な口調で尋ねる。


「アゲートさん、なにか気づきがあったのでしょうか?」

「えぇ、この場でウロボロスを起動することは、我々だけではなく、ペリドット様、貴方にとっても痛手になるのではないのでしょうか?」


 この言葉を聞き、すぐさまペリドットはベリアルの意図を汲み、大きく鼻を鳴らしながら続ける。


「痛手、とはどういう意味でしょう?」

「その意味を説明するには、貴方がどうしてウロボロスの起動を行おうとしているのか、その真意が知りたい。いや、貴方の利益のためにも、それは説明すべきだ」


 ベリアルはあえて遠巻きに話し始める。

 勿論、この曖昧な言葉の意味についてペリドットはちゃんと理解している。そして、更に演技を行うように続ける。

「……何を言っている? これ以上事態の遅延は……」


 ペリドットは、相変わらずの素振りで話を突っぱねようとする。しかし、この時、2人の期待通りベヴァリッジが挙手をする。


「アゲートさんの代わりに、私が説明させていただきます」

「説明だと?」

「実は、私共の間では、本来DADのシステムはエノクには不適応と考えていましたが、つい先日その仮説が覆る事案が発生しています。それは、エノクへのDAD適用の可能性が出てきたのです。アゲートさんが言っていることはそういうことです。ウロボロスの起動そのものは、こちらとしてもすぐに取り掛かりたい……ですが、それを行えば貴方も危機に陥る。流石の貴方も、エノクとしての力がなければここから逃げ出すことはかなり困難になるのでは?」

「……ベヴァリッジ様の言うとおりです。もし仮に、貴方にウロボロスの力が適用されるのならば、貴方は一気に窮地に陥る事になる。そうなるのは貴方の本意ではないでしょう?」


 アゲートの態とらしい言葉は、ペリドットに強い指示を与えることになる。

 十分にそれを理解したペリドットは、すぐさま狼狽した態度を取り始める。


「どういうことだ? 今までの話では、DADはエノクに対して作用しないはずだが?」

「こちらもその理論に則ってこれまで貴方たちと対峙してきましたが、どうやら“エノクでも特定の条件下であればDADが適用するのではないか”、という結論に至っています。それにはついては、まだ明確なエビデンスがあるわけではありませんが……」

 これに補足するように、ベヴァリッジは続ける。


「アゲートさんの言う通りその事例は確認されています。ですが、貴方はそれを十分に周知しているはずです。なぜなら、その事実は貴方であるから……よもやお忘れでは、ございませんよね?」


 ベヴァリッジの指摘はほとほと完璧である。この時点でのペリドットの明らかな違和に気がついていた。

 そして、これはペリドットが話した「明確な嘘」を指摘するものになる。

 

「ペリドットさん、私は貴方のことを、ただの一度も、我々の都合により手放したエノクδその人とは思っていません。現に、私は貴方のことを一度もエノクδとは呼んでいません。そうでしょう?」

「…………どういうことだ?」

「端的に言わせてもらいます。貴方は、本当にエノクδ本人ですか?」


 クリティカルなその指摘に、ペリドットは完全に押し黙る。若干想定と違うものの、ここまではある程度想定通りである。完璧とまでは言えないものの、ベヴァリッジの鋭い指摘は確実にこの展開になることはプランの範疇である。

 そして、ある程度話が進行したタイミングでノアが堂々と扉からはいってくる。


「はいはいはい~、皆さん失礼~。遅れて着席失礼します」


 ノアは扉を蹴破る勢いではいってきて、そのまま余っている椅子へ飛び乗るように着席する。

 一連の動きはまるでスタントのようであるが、それに対して反応を示すものはおらず、呆れた調子でビアーズが指摘する。


「また余計なものが出てきたな」

「いやいやー、正直なところここまで見透かされるとは思わなかった。ベヴァリッジさん、貴方もうこっちのプランには分かっているんでしょう?」

「あら、なんのことかしら? それにノア様、貴方も議論に参加なさるのであれば、ぜひ自己紹介及び立場をお話ください」

 ノアはベヴァリッジのことをちらりと一瞥した後、大きな口を開けて笑いだし、一頻り笑い終えればすぐさま真顔に戻し、つらつらと話し出す。


「君たち風に言えば、第三の組織の“利害関係者”、とでも言っておこうか」

「……というと?」

「残念だけど、第三の組織はさほど強固な組織性を持っているわけではない。僕は僕の利益のために、第三の組織……いえ、エノクδ“たち”と共同歩調をとっているだけ。僕とエノクδが、今回の事件で得る利益はある程度共有されるからね」

「その利益は?」

「それを喋るほど優しくないさ。ここから先はゲームだ。僕の要求に対して、君たちが答えてくれれば、僕も君たちの知りたいことを話してあげるよ」

「なるほど。貴方流の交渉というわけですか。それでは、ここから先の一挙手一投足が大切になりそうですね」


 ベヴァリッジは不気味な程の笑顔で言い放つ。そして、続けるようにノアに尋ねる。


「さて、それでは貴方流の交渉(ゲーム)を始めましょう。ゴングを鳴らすのは私でもよろしいでしょうか?」

「勿論だよ。さてお話は簡単だ。ベヴァリッジさん、貴方……これから僕らが何をしようとしているか、いや何をしようとしたかを既にわかっているね?」

「推測程度ですよ」

「僕は君がとても優秀な人物だと思っている。君の想定を聞かせてくれ。可否はそれから決めるよ」


 あくまでも同じスタンスを崩さないノアに、早速ベヴァリッジは口火を切る。


「それでは失礼します。貴方たちの主訴は一貫して“ウロボロスの起動”でしたね。そしてここまでややこしい手順を踏んだことを考えれば、貴方たちの計画はこうだったのではないのですか? まず、魔天コミュニティ内の多くの機関にスパイを侵入させ、少しずつ内部を引っ掻き回す。その後、あえてゲリラ組織の宴にて、“エノクに対してもDADのシステムは作用する”ということをアピールした。その後は簡単ですよね。先のように会議を襲撃した。そうなればこちらとしては、圧倒的な力に対処しなければならなくなる。そしてその対処としてこちらが選ぶ妥当なものは、ウロボロスを起動してコミュニティ内のリセットを掛ける方法です。これができれば、こちらにも物量としての利が生まれる。そうでしょう?」

「根拠が弱いね。たしかにそうだと画策して、君たちがちゃんとウロボロスを起動するという確証はない。その点はどう説明するの?」

「だから内部に協力者を作ったんですよね? わざわざ、コミュニティ内の権威ある学者、アーロン・ベックに化け、この場で本物のアーロン・ベックに主張させることで、確証を与えた。そうでしょう? 扉からこちらを伺っていることは知っていますよ。ベック先生……」


 ベヴァリッジがそう言いながら扉を一瞥すると、そっとアーロン・ベックが顔をだす。

 続けざまにベックは、ベヴァリッジにこう述べる。


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