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前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)
ここから物語は一番の佳境に入り、一番書き手殺しの部分だったりします。大切な部分ではありますが、実力が伴う場所なので気を引き締めていきたいところですね!
次回の更新は今週金曜日4日22時となっております。次回もご覧いただければ幸いです!
・管理塔-M 大会議室
その後、中止された二家会議は各々の派閥からメンバーを揃えて開始される。
場に揃ったメンバーは、メルディス派からは最高権力者であるベヴァリッジ、イレース、ベリアル扮するアゲートが出席していた。対してトゥール派からは同じく権力者イルシュル、そして宴のリーダーであるエンディースが出席している。
更に、中立的な立場である二家からはビアーズ、そのパートナーであるキャノン、そして先程合流したアイザックである。
管理塔-Mの会議室は、そもそも軍事的な事柄についてがメインであることから、とても強固な作りになっていて、外壁はスポアの攻撃にすら耐えうる構成になっていた。
そのため、トゥール派筆頭のイルシュルは第三の組織の襲撃をさほど臆した様子はなく、いつもの調子を崩さず毒舌を奮っていた。
「やはり会議は管理塔-Mで行うのが無難だったな。仮に襲撃にあったとしても、ここでは迎撃も比較的やりやすいからな」
強気なことは言いながらも、その場にいた全員が冷ややかな視線とともに、その言葉を自らに言い聞かせているとすぐに理解し同情的な視線も浴びせていた。
それについてあまり気がついていないイルシュルに対して、呆れたようにベヴァリッジが苦言を呈する。
「イルシュル様、先の戦いにてなにか有力な情報は得られたのでしょうか? でなければ、あの圧倒的な力を前にしてそれが言えるとは到底思えません」
「戦闘に従事しない貴方の指示は受け入れられないな」
「いえ、私が言っているのはそうではなく、どうして第三の組織があのタイミングで襲撃をしてきたか、戦闘中に有益な情報を得ているようですね、というニュアンスで言ったのですが」
皮肉っぽい言葉遣いに、イルシュルは途端に黙り込む。
そして、それに追い打ちをかけるようにベヴァリッジは言い放つ。
「皆様、先刻中止された会議の続行を宣言させていただきます。相手の目的が不明瞭な以上、早急な対処が必要です。つきましては、先の戦いにおいて彼らの目的を明瞭する手がかりがあると思われます。状況の説明をお願いします。以降、ビアーズ様にて司会の方をお願いします」
丁寧な口調により話を振られたビアーズは、これにより作戦を開始するように表明を行う。
「これより二家会議を改めて行うこととする。最初の議題は、先の戦いにおける意義についてだが、これについては俺の方から説明をさせてもらい、次に今回の事件の協力者であるアイザック・マクグリン氏から意見を求めることとする。しかし話を円滑にするためにも、最初にアイザック氏より今回の事件への関与を説明していただく」
ビアーズの発言にアイザックは小さく頷きながらゆっくりと立ち上がり、若干こわばった口調でいう。
「ご紹介に与りました、魔天関係の研究を専門に行なっているアイザック・マクグリンです。私が本件に携わった具体的な経緯については違和感のない範囲まで省略させていただきますが、ルイーザ側でのエノクδの活動が顕著に確認されたことです。同時にこの魔天コミュニティでもトラブルがあったことを知り、ビアーズ様から依頼を受けてここにいます。最初に確認させていただきたい。現在の状況についてはこちらも把握していますが、各々、これからの策をお話ください」
アイザックの冷静な言葉に、露骨な敵意を向けてイルシュルが反論の意思を呈する。
「権威ある学者であることは承知の上だが、この場でそれを話す意義について教えてほしいね」
「勿論です。今回の件について、具体的な方策を表明することは魔天コミュニティの性質上リスクでもある。しかし考えてください。今回のことで、なんの対策も取らずに行動すれば確実にそれ以上の不利益を被る」
「我々がいつ対策をしないと言ったんだ!?」
イルシュルはアイザックの言葉に強い怒りを顕にする。それでもアイザックは冷静に自身の考えを述べようとするものの、これを制したのは横で話を聞いていたベヴァリッジである。
「イルシュル様、議論は互いの話を正確に聞いてから各々の話をするのがルールだったはずですが?」
「だが彼は部外者だ。そんなヤツの意見には……」
イルシュルの排他的なセリフに対して、ベヴァリッジは呆れたように言い放つ。
「それでは私が彼の代弁をしましょうか? 彼は対策を講じていないと言っているのではない、我々が独立して己が利益を追求する手段に出れば、確実に大敗を生むと言いたいのです。アイザック先生、如何でしょうか?」
「え……えぇ、その通りです。ベヴァリッジ様、ご助言感謝します」
「お構いなく……、それよりイルシュル様、これ以上ご勝手な言動に出るのであれば、貴方の代役を立てることも検討していただきたい。勿論、私はそれを進言するのみ……。ご決断なさるのはビアーズ様ですが」
ベヴァリッジは冷静な口調ながらも、どこか陰りを残す言い方をしつつビアーズを一瞥した。それに今までにない禍々しい感情を気取りながらも、ビアーズはつらつらと答える。
「ベヴァリッジの意見の通りだ。イルシュル、議論の場において、お互いの言葉はある程度の正確性が担保されていなければならない。次、余計な茶々を入れて場を混乱させると、即刻退場させるぞ」
「お言葉ですがビアーズ様、現段階でアイザック氏に意見を求めるのはどういう意図がお有りで?」
この状況でもなお大口をたたき続けるイルシュルに、ビアーズはけたけたと笑いながらテーブルに足を叩きつけ、非情に頑丈なテーブルを捻じ曲げつつ続けた。
「はっはっは……どうやら俺の話が聞こえていなかったみたいだな。どうする? このまま対談するか、黙って参加するか、それとも死ぬか?」
「そんなこと……」
「俺はルールに則って議論をしろと言っているんだが、理解ができていないようだな。これ以上その減らず口を閉じないようなら首から上を吹き飛ばしても構わないぞ」
笑いながらもビアーズは体からスポアを伸ばしながらそう続ける。
これに対して、いち早く反応したのはベヴァリッジであり「そこまでにして議論を進めましょう」と提案する。
「ベヴァリッジの言う通りだろう。発言者に対する発言は、相手の質疑応答を待って行うことに限定する。アイザック氏、続けてほしい」
ビアーズはそう言いながら足を大きく上げながら床に着地させ、丁寧な素振りでアイザックに話を促す。するとアイザックは、緊張した面持ちを強めて話し始める。
「えぇ、話を戻します。先の話より、メルディス側として、そしてトゥール側として本件に対してどのように対応するかをお話しいただきたい。できれば、詳細に……」
「メルディス側から報告させていただきます。我々は当初から第三の組織と対抗する手段を持たないことから、彼らが何を求めコミュニティにいるのかを考慮して交渉に当たりたいと思っています。具体的には、第三の組織はウロボロス起動をメインに行動していることから、この点を切り口に相手の要求を聞きつつも、切り口をリアルタイムで探ります」
「その場面設定はどのように?」
「この場です」
ベヴァリッジの発言に、アイザックとイルシュルは大きく顔を歪めた。対して、それ以外の全員がピンと張り詰めた緊張感を気取り、想定のとおりに進んでいることへの緊迫を得る。