空欄から至るもの
前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)
今回、ギリギリ遅延がなさそうな時間だったので、ツイッターのほうで連絡が遅れてしまいました。大変申し訳ございません。
次回の更新は9月23日22時となっております。次回もご覧いただければ幸いです。
そして、アイザックはその根拠を語りだす。
「ここまでで、第三の組織が取ろうとしていたプランの内容です。しかし、このプランを練るためには、魔天コミュニティ内の正確な情報が必須であること、何より各機関にできる限り自然にスパイを侵入させることが必要になります。これらのことから、第三お組織の中には、それらの条件に当てはまる協力者がいる、ということになります」
「……だが、それでイレースが首謀者であると判断することはできないのでは?」
「勿論です。一連の話の中で、イレースが第三の組織を動かすほどの役割を担うという証拠にはなりません。ですが、第三の組織は通常の組織とは大分性格が異なるものです。それは、構成員すべてがボスレベルの発言権と行動における自主性を持っていることです。恐らく、第三の組織は上下関係というものではなく、お互いの利害と手段の一致により行動している、組織というよりはむしろ個人間の協力関係により構成された共同体であると考えられます」
「つまり?」
「もっと簡単に言いましょう。第三の組織には、ボスはいません。このプランを練ったのは確実にイレースであり、ノアらはそれに乗っかって自らの利益につなげようとしているだけです。ですので、実質的な首謀者はイレースであるが、ボスではない。ということです」
第三の組織の複雑な事情を知ったキャノンは、未だ頭に疑問符を浮かべたような顔をしている。
その尤もな表情にアイザックも苦笑いを浮かべながら、更に話を続ける。
「難しい話であることは十分わかりますが、更に先に続きます。まず、第三の組織のアプローチはそういう感じだったんですけど、ここでプラン変更を余儀なくされるトラブルが起きたんです。それが、イレースの記憶がなくなってしまった、ということだと思います」
「確かに……イレースはこの2ヶ月の記憶はなくなっていたけど、それがどうしてプラン変更に繋がるの?」
「その理由は、“内部からこのプランを補完する人物が確保できなくなった”からだと思います」
「なるほどね? 保険がかけられなくなったから、っていうのはわかったけど、ここまで暗躍していたらひっそりと事の真実をイレースに教えてあげることも出来たんじゃない?」
これを聞き、アイザックは「それができなかったんです」と切り返す。
「キャノンさん、どうしてさっき、僕やストラスの前でイレースの話をできなかった理由……なんででしたっけ?」
「え、イレースに真実が伝われば膨大な力が暴走して……あ、まさか……」
「そうです。恐らくイレースは、自らがどのような存在なのかも、事件が起きる2ヶ月前に知っていた。そしてベヴァリッジがしようとしている復讐に勘付きそれを止めようとした。だが、ベヴァリッジはそのイレースの行動も読んで、先回してイレースの記憶を消した。その時、イレースは自分が何者であるかすらも消えてしまい、完全に第三の組織としてのプランまで忘れてしまった。しかし、予めリスクを伝えられていたノアたちがプランを修正、またはイレースが知らせていたプランBに基づいて行動していると見るのが無難です」
「……そのプランBが、実際にコミュニティで起きた顛末である、そういうこと?」
「えぇ。そのプランBも、僕の考察も交えて話します」
アイザックが本筋に話を戻すと、キャノンは「既に数多が混乱しているんだけど」と苦言を呈しながらも自らで用意した筆記用具を使って事態を整理していく。
「ゆっくり話しましょう。プランBとして、第三の組織は徹底してコミュニティを叩くことにしたんです。いわば、今までは交渉によりウロボロスを起動させようとしていたが、それとは対照的に、武力で脅しをかける方法に出た。いわば、元のプランよりも相手を手詰まりに近い状態にしてウロボロスの起動へと導く手段に出たんです」
「あんまりしっくり来ていないけど、具体的にどういうこと?」
「えぇ。僕がそうだと思った原因は、ノアが臨床実験を行うための重要な要素であるレオンの力を拘束する選択をしていることからです。これは、当初のプラントは矛盾する行動です。このことから、プランBは“手詰まり状態にしてより誘導する”という形をとっているはずです。ただし、これはベヴァリッジによって容易く覆されてしまう危険性を孕んでいます。相手は第三の組織の行動から、十中八九方舟のことを知っているはずです。適当な言い訳を用意するのは簡単でしょう。そのため、第三の組織は“ベヴァリッジが方舟の起動する”という判断を下さないように、少しずつ圧力をかけていってここまで話を持っていった……今の所、テンペストの影響により方舟が起動しておらず、そしてこの状況にできているのは完璧と言っても過言ではないはずです」
かなり遠巻きな言い方をしているアイザックに、キャノンは首を傾げながら話を促す。
「さて、既に頭が混乱して大渋滞だけど、最後まで聞いて質疑応答させてもらうよ」
「そうしましょう。僕も正直、若干混乱しているというか、煮えきっていないところがあるのは事実なので」
「ここまでややこしい話を分析して、筋道立てて話しているだけでもヤバいと思うんだけど」
「こういう仕事だったので」
アイザックが楽しそうにそう笑うと、キャノンは「僕には理解できない世界だね」と微笑む。
それを確認したアイザックは、「僕も戦いについては同意見ですよ」と返して早速、第三の組織がこれから先行おうとしていることを推測する。
「第三の組織は、あれほどまでに隠密行動をしていながら、さっきの会議で襲撃をしました。ここが明らかな方向の転換であり、一気に畳み掛けに入っている事がわかります。ただし、そこであえて、一旦逃して、体制を立て直してから交渉に臨んでいるのは何かしら意味のある行動でしょう」
「それはビアーズも同じことを考えていた。どういうことかな?」
「これについては、僕の勘の側面が強いのですが、恐らく彼らの目的につながるものだと思います」
「具体的な目的って言うことだよね? 彼らはどういう状況を目指しているの?」
「その具体的な目的を導き出すためにも、僕の息子であるカーティスが関わってきます」
ここで出てきたまさかの要素に、キャノンは狼狽するようにカーティスの名前を反復する。
「カーティス? どうしてそこでつながるの?」
「考えても見てください。彼らはどうして、魔天コミュニティ外部の者であるカーティスを利用したのか。それについては、カーティスの出自がベヴァリッジの復讐を決意させたグルベルトに由来していることが原意であることと、もう一つの意味があると思います」
「意味?」
「えぇ。第三の組織……というよりイレースは、カーティスの意識をトランスニューロンという施術により意識化に取り込んでいると想定されます。これはあくまでも仮説ですが、①魔天エネルギーは膨大であれば精神運動に何かしら影響を与えること、②トランスニューロンによって人格を埋め込んだ場合、管轄する魔天エネルギーはその人格に対して等量で分割される、という2つの性質があります」
「あ……はい」
アイザックの難しい内容に、キャノンは苦しそうな声を上げつつそう言うと、アイザックは笑いながら大きく首を振る。
「難しい話であることは十分わかりますが、更に先に続きます。まず、第三の組織のアプローチはそういう感じだったんですけど、ここでプラン変更を余儀なくされるトラブルが起きたんです。それが、イレースの記憶がなくなってしまった、ということだと思います」
「確かに……イレースはこの2ヶ月の記憶はなくなっていたけど、それがどうしてプラン変更に繋がるの?」
「その理由は、“内部からこのプランを補完する人物が確保できなくなった”からだと思います」
「なるほどね? 保険がかけられなくなったから、っていうのはわかったけど、ここまで暗躍していたらひっそりと事の真実をイレースに教えてあげることも出来たんじゃない?」
これを聞き、アイザックは「それができなかったんです」と切り返す。
「キャノンさん、どうしてさっき、僕やストラスの前でイレースの話をできなかった理由……なんででしたっけ?」
「え、イレースに真実が伝われば膨大な力が暴走して……あ、まさか……」
「そうです。恐らくイレースは、自らがどのような存在なのかも、事件が起きる2ヶ月前に知っていた。そしてベヴァリッジがしようとしている復讐に勘付きそれを止めようとした。だが、ベヴァリッジはそのイレースの行動も読んで、先回してイレースの記憶を消した。その時、イレースは自分が何者であるかすらも消えてしまい、完全に第三の組織としてのプランまで忘れてしまった。しかし、予めリスクを伝えられていたノアたちがプランを修正、またはイレースが知らせていたプランBに基づいて行動していると見るのが無難です」
「……そのプランBが、実際にコミュニティで起きた顛末である、そういうこと?」
「えぇ。そのプランBも、僕の考察も交えて話します」
アイザックが本筋に話を戻すと、キャノンは「既に頭が混乱しているんだけど」と苦言を呈しながらも自らで用意した筆記用具を使って事態を整理していく。