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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第四章 命削りの嘆願
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再来

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 今回で、「第二章 2節 虚偽的な数列」の伏線回収です。今後はこんな感じで、題名の伏線が回収されている回はここで書いていきたいと思います(*´∀`*)

 次回の更新は25日金曜日20時となります! 少しでも興味を持っていただけた方、もしくは読んでくださっている方、ぜひぜひ次回もご覧になっていただけると幸せです☆(´ε`



 ストラスは探し出したボイスコレーダーを再生する。

 すると、一番最初にケイティを紹介したミラの声が鳴り始める。

「ストラス、こちらがうちのスポンサーであるアルベルト・ミラーのご令嬢、ミス・ケイティだ」

 適当な紹介をした後、ケイティは喋りだす。

 しかし一番最初に発した言葉は非常に辛辣な一言である。

「あの、非常に優秀な人の集まりっていう話じゃありませんでした? 貴方の話と矛盾しますが……どういうことです? この子どもみたいな連中の集まりは……」

「ミス・ケイティ、佇まいはこんなのですが、非常に優秀な人材の宝庫です。どうぞ、安心してお話ください」

「はぁ……まぁ別に、カーティスが見つかれば私はそれでいいですが」

 ケイティは、高圧的な態度を示し大振りな仕草でソファに座り込む。そして、続いて大きな音を立ててテーブルの上に何かを置く。

「こちら着手金です。もし、依頼を受けていただけるのならば差し上げます」


 その着手金を見たストラスは、若干息を荒げた調子で、首を大きく縦に振る。

「わかりました。どのような依頼ですか?」

「私の恋人の、カーティスという青年を探してほしいのです。詳しいことはこちらの資料に書いてありますから、参照してください。それでは、私は忙しいので失礼します」

「ちょっと待って下さい。いきなりそんな……せめて連絡先くらいは教えていただかないと……」

「資料に連絡先を書いておきました。2ページ目ですから、そちらをどうぞ。では、これで失礼します」

 若干急ぎ気味のケイティは、そのまま立ち上がる。

 そして、ミラは急ぐケイティを街まで送っていくと言って二人して去っていってしまう。

 そこでボイスレコーダーは切れてしまっていた。


 2人は、その音を聞き込み、不自然さを思わせるやり取りに首を傾げていた。

 その間、廻とミライは時計塔に戻ってしまっていて、天獄の中にはルネとストラスしか残っていない。

 ストラスは、あまりにも急に消え失せた2人のことをルネに尋ねようとするが、それを打ち消したのはルネの大きな声だった。

「あー!! わかったわかった!!!」

「何かわかったのか?」

 ストラスは一旦聞きたかったことをおいておき、すぐに話しを促す。

 一方のルネは、大声を上げながら資料の2ページ目をストラスに見せつける。


「このページ! さっき”連絡先は2ページ目に書いてある”って言ってた。でもこのページにはさっきから意味分からないっていう内容のページで、どこにも連絡先が書いていない。それを考慮したら、このページに書かれた不自然な記述の意味がつながる!!」

「落ち着いて話してくれや」

「一つ一つ説明しよう! この記述は確かに部分的に正しいけど、所々意味がわからない記述があったってことは今までの通り。その意味は連絡先を伝えるための暗号だ!」

「で? どこが暗号の答えなんだ?」

「記述には8月9日14時57分に行方不明になったと書かれている。その次に、26分間トイレには誰も入ってこなかったっていう部分で僕らはこの記述に違和感を覚えた。一番最初は、”違和感を意図的に作ったもの”だと思ったんだけど、それにしては26分って言う数字がすごく微妙なんだよね。もし、違和感を作るだけなら30分とか切りの良い数字にしたほうがいい。でも、これだけなら確証はなかった。ボイスレコーダーの会話を考慮すると、これが”連絡先”をこちらに伝えるために作られたことだとわかる。だって、依頼人はこのページに連絡先があると言い張りながら、実際に見るとそんなものがないからだ」

「うーん……根拠は理解できたが、ここからどうやって連絡先を導くんだ? 出てきた数字をつなげても”89145726”、電話番号とは到底思えないぞ? とりあえずかけてみるけど」


 ストラスは、出てきた数字を読み上げ、電話を手に取り浮かび上がったを打ち込んでいく。その間、ルネは「何かが違う」と言わんばかりの表情を浮かべて、すぐ傍にあったノートパソコンで検索エンジンを立ち上げる。

「……全然だめ。おかけになった電話番号は使われておりません、だと」

 とりあえず電話をかけてみたストラスは、呆れた口調でそう呟く。

 その一方、ルネは検索エンジンに出てきた数字をとりあえず打ち込んで見る。


 その結果は、電話番号としてはヒットしなかったものの、代わりにザイフシェフト郊外の住所が引っかかった。

「これ……もしかしてここのことなのかもしれない」

 ルネは、検索結果を見てぽつりとつぶやく。

 それに続いてストラスも、パソコンのディスプレイを覗き込む。

「どういうことだ?」

「この数字、座標だったのかもしれない。電話よりも遥かに見つかりにくいし、情報を隠すのに一役買っている」

「でも、場所は僻地だぞ? 何もないじゃないか」

「そう考えるのは早計だよ。この土地、管理しているのはアルベルト・ミラー、つまり依頼人の父親だ。ここにある電話番号、かけてみる?」

「……かけてみるか?」

 ルネとストラスは、そう言いながら顔を見合わせる。そして、一寸の沈黙の後、ルネが喋りだす。


「やっぱり、ちょっと待って。少し考えてからにしよう。多分大丈夫だとは思うけど、ここで失敗したらこっちが一気に窮地に立たされる可能性もある」

「そりゃそうだな」

「少し疑問だけど、どうして依頼人であるケイティ・ミラーはこんな回りくどいことまでして連絡先を伝えたんだろう? あの人の行動って、どこか作為性を感じるんだよ。例えば異常なほど高圧的な振る舞いをしているのに、口調はびっくりするほど丁寧なときもある。そして、必要最低限の説明しかしないでとっとと、帰ったりね」

「そこは疑問だが……」

「僕の仮説としては、ケイティ・ミラーは誰かに脅されているんじゃないかな。その脅した相手っていうのが、天獄から仕事を奪ったやつとイコールであると思う。そしてこの資料についても検閲されているから、ここまで回りくどい暗号作ったんだろうね。26分人が誰も入らないなんて記述、実際にその場所を知らないとわからないし」

「なるほどねー。それなら、電話かけてもいいんじゃない?」

「確かにね。じゃ、よろしく」

 ルネは当然のごとくストラスに電話を差し出す。

 それに対してストラスは冷ややかな視線を浴びせる。


「おいこら、お前本当にコミュ障だなおい」

「だって僕、君ら以外とお話しないもん。大体さ、ミラ以外の人と話したのって、意識持ってから19年後だからね。長年のコミュ障を舐めんな」

「コミュ障がなんでそんな堂々としてんだよ馬鹿! たまにはお前が電話しろ!!」

「いーやーだー!!」

「お前自分のこと見直してみろやコミュ障!!」

「頑張ってねストラス」

「こりゃだめだな」

 ストラスは、あまりにも悲惨すぎる状態にため息を付きながら、検索結果の電話番号をプッシュする。


 2人は、電話の奥で聞こえてくるコール音に耳を澄ませて息を呑む。

 すると、3回目のコール音で「お名前を」という女性の声が鳴り響く。恐らく、ケイティなのだろう。大人びた声色で探るような態度が実によく似ている。

「先日依頼を受けたストラスだ。ミス・ケイティ、貴方だろう?」

 ストラスの断定的な声が、ひっそりと鳴り響く。

 一方、電話の主はストラスの科白に一度呼吸を止めるが、すぐに「見込み通りです」という言葉とともに話し始める。

「まさかここまで早くこの電話番号にたどり着くとは思いませんでした。盗聴についてはご安心ください。この電話は特別な回線を使っていますから」

「盗聴されて困るのはそちらだろう。こんな回りくどいやり方と、盗品の金まで使って俺たちを貶めようとしたのはどういうこと?」

「詳しいことは直接会ってお話しましょう。ただ、恐らく貴方達も私がどういう状態なのかを考慮しているはずです。会って話すことも相当なリスクであるということは分かっているでしょう?」

「会って話す理由はあるのか?」

「いくら特殊な回線を使っていると言っても、記録を残すのは好ましくありませんから」

「なるほどな。会うほうがリスキーに思えるが?」

「勿論です。ですが、貴方達にも関係する事があるのです。天獄を潰そうとする存在のことについてですからね」

「……なるほどな」

「1つ信用してほしいので、ジェラルミンケースのお金を調べてください。確かに、予定では盗品を渡す予定でしたが、私の判断で同じジェラルミンケースに盗品ではないお金にすり替えています。一番上の、見えているお金のみですが」

「あえて情報を開示する意味は?」

「この程度で信用してもらえるとは思えません。これがせめてもの誠意です。それでは、明日の12時、貴方達が今日、お茶していたカフェで会いましょう」


 電話はそこで切れ、ルネとストラスは、その会話に不審な点が多すぎて頭を悩ませることになる。


***



 同刻 ザイフシェフト グルベルト孤児院



 子どもたちが寝静まった夜、職員室に残っているセフィティナとアイザックは、軽い口論になっていた。

「いい加減にしてほしい。カーティスがいなくなってもう2ヶ月も経ってるんだよ? 幾ら外部に漏らすことができない情報だからって、ここまで情報を秘匿にされたら、苛立つってわかんない!?」

「落ち着けって……俺だって、あの子がどこにいるかなんてわからないって」

「嘘つき……、君っていっつもそうだよね。黙ってふらっといなくなったり、その割に自分は心配してますよってアピールしてきてさ。”サイライ”の時だって、そうだった」

「おい……お前落ち着けよ! カーティスのことは大丈夫だって、安全な場所にいるんだから」

「お前やっぱり知ってんじゃん!!」

 残念すぎる失態を見せたセフィティナは、やばいと言った面持ちで顔を背ける。

 一方のアイザックは、そのミスを突き口撃を続ける。

「やっぱり嘘ついてた。いい加減にして、あの子はどこにいる? 少しだけでいいから教えて!」

「えー……そんなこと俺に判断できるわけ……」

「弱虫! 出歯亀野郎!」

「てめぇ……」

「25年前だってほとんど事件収束したときに来たじゃん。遅刻魔!!」

「お前ふざけんなよ!? 俺がどんな想いで……」

「いいからどこにいるか教えろって言ってんだよ! エプロン固結びにするぞ!?」

「してみろやバカ! お前それしかできないだろ!?」


 喧嘩の熱が強まったときだった。

 職員室の玄関を開けて2人の職員が入ってくる。

 どちらも中性的な青年で、似たような髪型と似たようなエプロンを着用してまるで双子のようだ。

「2人共煩い。頼むから子どもたち寝たあとにバカみたいな喧嘩するなよ」

 どストレートに2人を蔑んだのが、青色のエプロンを着用している青年だった。顔は恐ろしく歪んでいて、その表情は極めて強い怒気を示している。

「今フギン、ちびっこ達を寝かしつけたから、2時間かけて」

 そう補足したのは赤いエプロンを着用しているムニンである。しかしその表情は怒気をはらんでいるフギンから比べると幾分マシなもので、割とすんなり寝てくれたのだと言わんばかりである。


「2人は何か知らないの? カーティスのこと!」

 アイザックは性懲りもなくカーティスのことを尋ねる。

 すると、フギンとムニンは顔を見合わせて首を傾げる。

「えー、知ってるけど、口止めされてるからなぁ」

「ムニンと同じ。口止め組だから」

「お前ら口止めされてること言ってんじゃねぇ!!」

「誰に口止めされてるの!?」

 すっかり大混乱状態の職員室は、更に熾烈を極めていく。

 だが、その直後にムニンの口にした言葉で一旦の鎮火がなされる。


「そういえば誰に口止めされてるんだっけ」

「忘れちゃったけど、確か、えっと、4人位?」

「え、そんなに同じこと話した人いた?」

「確か4人だよ。えーっと……」

 フギンは思い出すように考え込むと、セフィティナは慌てふためき、フギンの口を手で塞ぐ。

「バカ! 口止めされている相手を言おうとしてんじゃねぇ!」

「えー、だってカーティスのこと聞いてないのミラとアイザックくらいだよ? 流石に可哀想だよ」

「もうお前らどっかいけ!」

 2人はセフィティナの言うことに従い、そそくさと職員室を後にする。

 しかし、もはや取り繕う事はできず、アイザックの鬼気迫る視線に、セフィティナは無自覚に後ずさりするが、状況改善には一切貢献されず、迫り来るアイザックを手で宥めようとする。

「……どういうこと? 僕と、ついでにミラが知らないって、説明してもらえますか?」

「これは……その、あの」

「どういうこと?」

「ごめんなさい」

「謝らなくていいんだよ? 私は、ただカーティスの居場所を教えてくださればいいのですから」


 アイザックは途端に敬語になって、セフィティナを睨みつける。

 口調が急激に変わるということは、相当な怒りを持っているということである。それを知っているセフィティナは、暫く苦しんだ後、1枚の写真をアイザックに見せる。

「これで勘弁してくれ!」

「…………これは?」

 写真には、どこかのベッドで眠っているカーティスの姿が写っていた。

 それを受け取ったアイザックは、まじまじとその写真を睨みつける。

「それ渡すから、本当に勘弁してくれ。もうすぐ終わるから、頼む!!」


 アイザックは少しだけ考えた後、写真をしまって「おやすみ」と残し職員室をあとにする。



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