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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第十六章 戦いにおける非対称性
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唯一眠った時

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 この部分は前回「粗い」と言っていましたが、問題はこの次で、ほぼ未完状態になっております。あと数日でどこまで練れるかは私の気力にかかっています。ちなみにこの部分にサブタイトルはかなり大事な伏線になっていたりします。

 次回の更新は来月金曜日2日22時となっております。なお、今日から月曜日の更新も22時にさせていただきます。ご了承ください(´・ω・`)


 コノプカはジャーメインらが行き着いた答えと同じ結論になったことを続ける。


「ちょうど私たちも同じ結論に至ったわ。まぁ、私たちの場合は推測よりも、もっと情緒的なものだけどね?」

「パールマンから受けた依頼を聞いた時から、微妙にこの結末に行き着きそうな感じはしたけどな」

「うちらとしては、かの戦神とも戦えたし、流れ弾で“名無し様”とも戦えたし、大満足!」


 すっかりもめているバートレットたちだったが、このコノプカの発言には耳ざとく反応し、怒りを露わにして問いただす。


「は!? お前らが戦ったのって、まさかストラス・アーネストか!?」

「それに加えて、“名無し”って、25年前の事件で暗躍してた魔か。美人だったかー?」

「それ以上に! 僕もストラス様と戦いたかった!」

「楽しかったわよね? リンデマン?」

「あれ程の力量はコミュニティ内にはいないな。一騎当千という言葉では生ぬるいほどだ。コクヨウ全員でかかっても返り討ちだな」

「流石、戦神……やっぱり僕も!」


 4人の話が激化した頃だった。ガサゴソとベッドから軋む音が鳴り響き、大あくびをしながら背伸びをするレオンが目をこすっている。

 当然それを見た4人は、一瞬フリーズしたのちにバートレットが声を上げる。


「あ、起きた!」

 この声に反応したレオンは、眠そうな目でキョロキョロと辺りを見回し、ポツリと呟く。


「…………お兄ちゃん? ママ……? どこ?」

「お兄ちゃん? ママ? って誰のこと?」

「いや俺に聞かれてもちょっと」

「室長じゃないの? あーでも確かにママっぽい気もする」


 2人はそう言いながら笑うものの、レオンにとってはママことイレースも、お兄ちゃんことカーティスもいないということが致命傷だったのか、レオンは大声を上げて泣き出してしまう。


 わーんと大声で泣き始めたレオンに対して、いち早く反応したのはバートレットだった。


「わわ!! えっと、その……泣かないで!!」

「お兄……ちゃん、どこ……?」

「あ……、僕らはね? お兄ちゃんたちから君のことを頼まれたんだ! とってもいい子だから、お留守番を頑張ってねって言われたし!」

「お留守番……? 僕がするの?」


 レオンは、即席のバートレットの言葉に対して訝しげな態度で見るものの、その一方で「お兄ちゃん」の正体を知っていると思われるバートレットに親近感が湧いたのか、露骨に目の色を変える。

「お兄ちゃんはどこにいるの? ママは?」

「えーっと……ママ、ママは……お仕事! 僕らはレオン君のベビーシッターかな?」

「べびーしったー?」

「僕らが……いや僕が!!」


 語尾を強めてバートレットがそう言うと、ひっそりとジャーメインが「限定したな」と笑う。

 それを知ってか知らずか、バートレットは更に続ける。

「君の! お世話をしたいんだ!! どうかな!?」

「……お兄ちゃんかママがいい」


 ストレートなレオンの言葉に、バートレットは若干表情を固くするが、すぐに表情を翻しあどけて笑う。


「それなら、どうすればいいかな?」

「お兄ちゃんたちに会いたい……どこ?」

 その問にすっかり返す言葉をなくしたバートレットは、ひっそりと顔を伏せてちらりとジャーメインを一瞥する。

 すると、ジャーメインは父親のように優しい表情で笑いながらレオンに言う。


「それなら、俺たちと一緒に探しに行こうか。レオン君はお父さんたちが大好きなんだもんね」

「……お兄さんは、誰?」

「そこのベビーシッターのパートナーなんだ。でも、君がそんなにお母さんのことが大好きなら、俺はそれに協力するよ?」

「うん……僕は、お兄ちゃんたちを探したいんだ。手伝ってくれる?」

「勿論さ。けれども、今は少し難しい。俺たちも今は仕事中でね、だから少しだけ、俺たちと一緒にいてほしい。すぐにでも君のマミーたちを探せるようにね」


 ひときわ優しい口調で続けたジャーメインだったが、対してレオンは渋い顔でいう。


「えぇ……僕は今すぐお兄ちゃんたちに会いたいよ」

「そうだね、だけど、案外、俺たちの仕事と君のマミーは繋がってるかもしれないんだ。だからさ、いいでしょう?」

「え!? それなら早く言ってよ!! それなら僕も仕事する!!」

 途端に態度を翻したレオンは、ジャーメインの手を引きながらやる気満々と言わんばかりに続ける。


「僕、仕事する!! 何するの!?」

「そうだねー、オッサンたちもようわからんのよ」

「えー!? お兄ちゃんたちはすぐに分かって動いているよ!?」

「君のお兄ちゃんと違って無能だからさ」


 そこまで話が進展したとき、扉を壊すような勢いでハートマンらが入ってくる。


「ポンコツ共、次にどう駒を進めるか考えついたわよぉ~」

「誰がポンコツだボケ、ぶち殺されたいんだったら今一度その名前を言え」

 殺意を込めて言い放ったジャーメインは、レオンを抱っこしながら頭を撫でる。

 すると、ハートマンはレオンの顔を見て楽しそうに笑う。


「あらー可愛い天使様ね! 貴方のご両親様もさぞかし喜ぶわ」

「ママたちを知ってるの!?」

「もちろーん、貴方のマミーは私の恋人みたいなものよ~。さ、ボンクラども、作戦会議よ。この子をマミーに会わせるために飯も食わずに馬車馬のごとく働きなさーい」

「はたらけー!」


 ハートマンは当然の如き表情でレオンを抱えながらリンデマンらを睨みつける。

 すると、リンデマンは笑いながら「あぁ、俺たちが話すんだな?」と呟いた。しかし、これに補足をしたのは不貞腐れているバートレットだった。


「あーはいはい! そいつら、ストラス・アーネストと殺し合ってたらしいよ! あー僕もやりたかったな!!」

 投げやりにそう言うと、ハートマンは手をたたきながらその話を促した。

「私の推測通りよ! どうやら、厄介なお仲間は最高のアドバンテージを持ってきてくれたようね」

「これで最良の結末に持っていけそうな予感」

「なんなんだコイツら、自分だけ分かってるみたいな感じ悪ーい」


 少し不満げにそう言ったバートレットに対して、ハートマンは「いじけないの」と説明を始める。

「まずそこの2馬鹿がストラス様と交戦したという事実はどうでもいい。大切なことは、普段はルイーザで便利屋を商む彼がこのタイミングで、コミュニティに現れて、戦いにまで発展したの? 大方考えられるのは一つだけ……“トラブル収束のため”、でしょうね」

「そこまでは幾ら僕でもわかる。その先は?」

「急かさないの。問題はストラス様がどういう状態でリンデマンたちと戦ったのか、そういうこと。早く話しなさい」


 突然話を振られた2人は、顔を見合わせながらその時の状況を少しだけ話した。

 勿論、依頼主のことや戦闘の目的については予め「話せない」ことを前提にして話を進めた。


「私たちは依頼を受けて宴と一緒にストラス様を襲撃しただけ。こっぴどく返り討ちに合ったのは言うまでもないわね。まぁ、宴はストラス様に復讐したいなんてアホらしいこと考えてたらしいから、それに加勢したくらいかしら。依頼主の目的は言えないけどね」

「目的に関しては別にいいとして、この指示をしたのがパールマンであることが大事なの。このことで幾つかの謎が解けることになる。ここであからさまな妨害を始めたということは、そうまでしてストラス様のアクションを妨害しなければならなかった、と考える事ができる。この際宴がどっち側についているとか別にいいわ。大事なのは、パールマンが宴を動かしたか、動向を把握して妨害につなげたかのどちらか……」

「なるほどな。パールマンは宴が先刻ストラス・アーネストとかち合うことを知っていた、もしくはそう仕向けたかのどちらかか。リンデマンの話を聞けば、奴らは自分たちの意志で行動していることを考えれば、パールマンがそうなるように仕向けた、もしくはここまで推測していたというのが濃厚か」


 ジャーメインの補足に対して、ハートマンは大きく首肯する。


「その通り。あの状況で、宴の動向をパールマンが情報を得るには人員的に不可能でしょう。そうなれば、ジャーメインの説が遥かに濃厚ね」

「あー……で、他のところは?」

「整理させてほしい。これで今まで出てきた組織の力関係がある程度ハッキリするの」


 ハートマンはバートレットの質問に対して、紙とペンを持って一つ一つ出てきた団体をまとめ始める。


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