創作物の断片
前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)
16章のパートBですが、この部分かなり粗が目立つ場所で、添削を検討しているのですが時間が取れず結局そのまま投稿することが半ば決定しています。とりあえず完走を目指すとこういうことになると肌で実感しております(´・ω・`)
次回の更新は来週の月曜日29日20時となっております。次回もご覧いただければ幸いです!
・魔天コミュニティ フレックス病院
ハートマンらが管理塔-Iで傍若無人っぷりを発揮していた頃、フレックス病院に残ったバートレットとジャーメインは眠っているレオンの看病をしながら、今回の厄介事について苦言を呈する。
「しっかし、今回ほど大規模で、おまけに退屈なプランはなかったよね」
「それについては認めるが、どういうふうに収束されるつもりなんだろうな」
「そういう頭を使うことは僕の範疇じゃないんから君が考えて」
「考えるのは俺でもお前でもなくてハートマンだろうな。ついでにいうと、アイツは既にプランについて講じているはずだ。だからこそ、俺たちはここでお留守番なんだろう」
「あー、タイクツー!」
バートレットは笑いながら叫び、レオンが眠っているベッドに腰を下ろしながら余った部分に寝転がる。
すると、バートレットは眠っているレオンの横顔を見て、そっと頭をなで始める。
「……可愛いね」
「そうだな、俺たちもそろそろ子どもが欲しい頃合いかもな」
「え、君からそんなことを聞くなんて驚いたよ。ただまぁ、こんなに可愛らしい子どもをみれば、そういう気持ちもわかるさ」
「その子がエノクεっていうことに目を瞑れば、そのまま横で添い寝したいところだな」
「でも、今はエノクとしての力はないんでしょう? それなら添い寝しちゃおーう」
「暇すぎて頭のネジが吹っ飛んだな」
ジャーメインの言葉もすっかり無視して、バートレットは未だに意識が戻らないレオンの布団に潜り込み、さほど体躯の変わらないレオンの横に寝っ転がる。そして、ひょっこりと頭をだし、レオンのことをまるで我が子のようにほっぺたをペチペチしながら優しそうな笑みを浮かべている。
そのあまりの「母親」としての表情に、ジャーメインは驚きつつも、エノクδの出自について尋ねる。
「その子、人為的に初めてエノクを作ったんだろう?」
「一応言っておくけど、その情報極秘じゃん」
「いや、俺詳細について全く知らん。大体、命に手を加えるっていうのは俺は反対だ。その子が人格を持つっていうことがよくわかってないからこそできる技術だろうな」
「実際、今回のことを企画したのは僕ら直属の上司だし、抗えないよね」
「だが、結果としてその子は一体どうなるんだ? もし仮に、兵器運用されるようになったなら、俺はもうやさぐれるぞ」
「でも、それについてはメルディストップが方針を決めているはずだけどね。確か、結局アーネストが引き取ることになってたよ」
「じゃあなんであの子を作ったんだ?」
「そうね~……まぁよくわからないね」
少しだけ思考した後、すぐさまそう返したバートレットにジャーメインは呆れ果てる。
だが、そんな2人の話に入ってくるように、今まで留守にしていたリンデマンとコノプカが扉を開けながら言う。
「元々、トゥールがメルディスに対抗するための現実的な手段として講じられたのよ」
「さすが脳筋ども、情報の大切さがわからんのか」
悪態をつきながら笑う2人に対して、バートレットはベッドから跳ねるように飛び起き、全く笑っていない瞳で歪に口角を上げる。
「これはどうも隠匿野郎ども。公務をすっぽかして自分たちの仕事してたポンコツに言われたくないね」
「バートレットが脳筋なのは確かだが、ここまで本職を軽視した理由はなんだ?」
しれっとパートナーからもディスられたバートレットはなんとも言えない表情を浮かべているものの、それを尻目にコノプカは話し出す。
「今回の仕事は公務も兼ねてたのよね。ただまぁ、依頼主がまさかのパールマンだったからさ」
「お前ら……敵側の仕事受けてんじゃねーよ」
ジャーメインは顔を顰めながら苦言を呈すが、これに対して反論したのはリンデマンだった。
「だから、情報も持ってきたってーの。俺たちも流石に、戦況を不利にする仕事はしないさ。コクヨウは気に入ってるし」
「リンデマンの言葉通りよ。ただ、相手が相手だったこともあるからあんまり参考にはならないかもしれないけどね」
「それならそうでとっとと話してくれないかい? もう僕の腕っぷしがてめぇらをぶっ殺したいって言ってるんだけど!?」
「だから脳筋って言われんだよお前はよ」
「ジャーメインまで僕のこと脳筋っていうのか!?」
「うるさい少し黙れ」
「えぇ!?」
一連のやり取りを呆れ顔で見ていた2人だったが、その中で口火を切ったのはリンデマンだった。
「俺たちが受けた依頼は唯一つだ。“パールマンを名乗り、第三の組織と戦う”というものだった」
「あ、わかった。お前らそれで自分が戦いたい相手とやったんだろう?」
「よくわかったわね」
「お前ら2人が戦闘に異常な感情を覚えることは知ってる。相当な手練とヤったな」
「てめぇーら……まさかかの二家とヤッたな!?」
相変わらず声を荒げるバートレットに対して、リンデマンは含み笑いを浮かべながら言う。
「それは貴方の想定に任せるわ」
「どうせ二家だろうな。ありえない強さのある最強の変態集団だろうな」
「さて、私たちがしてきた行動から、状況を説明しましょうか」
「露骨に話をそらしたなこいつ」
そそくさと話に移行しようとしたコノプカだったが、それを制止したのはバートレットだった。
「ちょっと待て、もうすぐハートマンたちが帰ってくる。話はその時にしてほしい。代わりに、レオンについて2人が知っている情報を話してくれ」
「別にそれはいいけど、この状況で単なる好奇心っていう話では、ないんでしょうね?」
念を押すようにコノプカが言うと、バートレットは手をたたきながら「こういうときの与太話は好かないんだ」と言いながら話を促す。
すると、コノプカは「それならいいわ」と断定しながら口火を切る。
「元々レオンは、いやεと呼称しておこう。εが作られた本来の目的は、“およそ組織性を持って行動しているであろう他のエノク含む、他の敵対勢力への対処”だったのよ。この魔天コミュニティの国防に対して新たな兵器開発の機運が高まった理由は、貴方たちにも想像がつくでしょう?」
「そりゃーな、大方25年前のザイフシェフト事件だろう?」
「その通り。あの事件がなければ、ベヴァリッジ様が人工的にエノクを作るなんてトンデモ計画に同意しないでしょうね」
「ベヴァリッジ様が、本当にそのふざけた計画に同意したのか?」
「進んでするわけないでしょう? 当初は彼女もその計画には断固反対って感じだったんだけど、その時にザイフシェフト事件のときに死んだグルベルトのことを出されてね。ここを突かれたベヴァリッジ様は、国家の存亡の危機に対処するためにこの計画を受け入れた。ただし、エノクに十分な精神的円熟に配慮して名前をつける作業はイレースに一任し、その後見をアーネストに委ねることにして、なんとか計画を通した。ついでに、使用する、いわば親になるものはアーネストのキャノン様、ベルベットのメアリー様を使ったのよ。そういうお話があってから、エノクεは非人道的ながらもいい感じに収束させられたって言うこと。これで満足かしら?」
「うわー、ヤバすぎじゃねそれ」
感嘆の声を上げたバートレットだったが、これを聞いてたジャーメインは首を縦に振り、「こちら側にも発端はありそうだったな」と笑う。
「え、なんか分かったの?」
「オオアリだろ。25年前の事件がここに来て繋がり始めた。超巨大水爆、あのときの被害者であるエノクδ率いる第三の組織、そしてこのエノクεの後見人であるイレース室長さまは疑念の渦中。もはや推測という名前では収まりがつかないな」
「は?」
「お前まだピンときてないのかよ。第三の組織の黒幕は、エノクδでもノアでもない。現在のメルディスの懐刀、イレース・アーネストだ。どうせハートマンもここまでのことを理解して行動しているんだろう。そうすれば、ビアーズが第三の組織側についていることも頷ける」
「あらー……ヤバすぎない?」
「どうでもいいがお前の語彙力もやべーぞ」
2人の一連の行動を見ていたコノプカらは、「あら、貴方たちもそこに行き着いたのね」と口火を切る。




