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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第十五章 黙り込む戦火
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裏切り者の集会

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 この物語も終わりが近いのですが、ここから先が足りない頭で考えているため時間が数倍かかっています。やっぱりこの手の話はかなり難しいことを痛感しますね。

 そしてまたまた金曜日に遅延が発生してしまっているので、今後は金曜日の更新は22時に改めさせていただきます。ここまで何度も遅延すれば、今後の遅延も少なからず出てきてしまうので、ご了承ください(´・ω・`)

 次回の更新は来週の月曜日17日20時となっております! 次回もご覧いただければ幸いです(*´∀`*)


 ハートマンは、手のひらに指を当てるような仕草をして話す。


「こういうときは基本的に消去法よ。まず、この議論を進めており、なおかつ自らの考えとして最も事を運びやすい私と、パートナーのキャブランについて、論理的な観点のもとに無実を証明することから始めようかしら。それとも、現段階において最もその可能性が乏しいネフライトに司会進行を任せようかしら?」

「どうしてネフライトがスパイじゃないって言えるのさ」

「答えは至極単純、彼を連れてきたのはベヴァリッジだからよ。あの人に連れられてきた人はいわば、二家に次いで公理として扱っていい事柄だと思っているわ。そこに鑑みれば、つい最近ここに配属され、というよりも、偶発的にもここに入ってきたネフライトは最もスパイから離れていると判断できるわ」

「そこで、自分が最も信頼できるよ、って言わない辺り、ハートマンだよね」

「勿論。我々が持つべきは感情論ではないしね。あくまでも論理性を持って行動しなければ、というより、コクヨウに論理性がなければビアーズ様にここまでのことを任せられていないだろうしね。言わせていただけば、私の話についてもできる限り批判的かつ、話半分に聞いてほしいわね。私の話は論理的を謳っておきながら、それは私のバイアスがかかっていることを前提にしていることを忘れているからよ」

「どっちでもいいけどさ、君はどう思うのさ、これから僕らはどうすればいいの?」


 このバートレットの言葉に対して、ハートマンは「良い質問ですね」という言葉とともに言及を始める。


「実際問題、我々はこれからどうするかという問題はとても重要……ですが、私たちがこれからすることは明瞭です。それは、コクヨウとして本来すべき行動を行うこと、です」

「えぇ? それってつまり?」

「ここから先は、いつもの通り仕事をするだけです。まず、役割分担でしょうね。副隊長とネフライトはビアーズ様の動向のチェックをしてもらいましょうか。バートレットたちはここでステイ、私たちは情報収集、こんな感じで、普段どおり動きましょうか。副隊長様? それでいいかしら?」


 ハートマンがフラーゲルにそう尋ねると、特段気にした調子もなく「それで構わないわ」と突っぱね、にんまりとネフライトを一瞥する。すると、ネフライトは首を傾げながら次の行動について言及する。


「つまり、相変わらずフラーゲルと行動するのね?」

「おいこらどういう意味!?」

「ネフライト、そのポンコツの手綱を握っておいてね」

「はーい」

「なぁにこの子たち、私、一応は上司なんだけど!?」

「上司らしい振る舞いをしてから言いなさい。さ、上司気取るなら、早く情報を持ってきてね。私は、管理塔-Iで情報収集でもしよう」

「あぁ、もういいわよいいわよ。ほら、ネフライト、とっとと行きましょう」

「待ってよフラーゲル~」


 ネフライトは子どもっぽい仕草でフラーゲルと一緒に駆けていってしまう。その様子をしっかりと見送ったハートマンは、しっかりとフラーゲルらが病院から出ていったことを確認し、残っているメンバーに一つ、確実に想定される可能性を提示する。



「クロね、フラーゲルはほぼ確実に何らかのスパイ……そういう見解でいいわね?」

 この言葉に、バートレットを除いた全員が大きく首肯する。対して、未だに咀嚼しきれていないバートレットは、「説明してよ」と解説を急かし始める。

 これに答えたのは、バートレットのパートナーであるジャーメインだった。


「まず、前提としてフラーゲルは元々かなりの切れ者である、ということだ。それなのに、ヤツはハートマンの虚言に対してなんの反応もしなかった。恐らく、フラーゲルは何かしらの任を受けて、ハートマンの言葉に乗っかったんだろう。だから、アイツは何も言わずに、ハートマンの言葉をスルーしたっていうことだ」

「なるほどね。ネフライトがスパイであるという根拠が薄いって言うことね? それで、フラーゲルが気づかない訳がないんだね」

「そういうこと。バートレットも少しは考えろ」

「ごめんごめん、でも解説ありがとう」

「……まぁそれでいいが、ここからどうするんだ? ハートマン?」


 一周して毒気を抜かれたジャーメインは、早速ハートマンにプランを尋ねる。

 すると、ハートマンは首を縦に振り、早速次の一手について話し始める。しかし、いくつかの前提から、ハートマンは並べ始める。


「そうね、すぐに動きましょう。ですが、プランを考える上で前提としなければならない点は多いわ。①上司であるビアーズが第三の組織に傾倒していること、②第三の組織の目的は不明、③フラーゲルに介入している正体不明のなにかの可能性、このくらいかしら」

「どれもこれも厄介だな」

「笑えるほどに、ね。ただし、この中でもいまだ言及されていない問題は③ね。そもそも、フラーゲルはこの時点で、第三の組織とも二家とも言えない立ち位置にあるということが問題になっている。なぜなら、フラーゲルは二家としても不利益になりうる情報をこちら側に提示している。それが、件の情報を教えたことだと言えるわね」


 ハートマンが言った「件の情報」は、フラーゲルが受けた二家会議での襲撃である。しかし、この言葉には幾つかのニュアンスを持っている。


「まず、フラーゲルは都合の良いタイミングで、二家のベルベットから連絡が来て、その後ベルベットは都合悪そうにそれを切った。この時点で、幾つか複合的な可能性が想定される。それは、フラーゲルが所属している団体が、必ずしも二家、引いては第三の組織の行動と矛盾しない、ということね」

「どうして?」

「意図が読めない、っていうところね。フラーゲルがこの情報を受けたことは明らかに偶然とは思えないが、これを伝えるということは、コクヨウがこの情報を知ることは確かにメリットにもなるが、デメリットもなりうる。そして、その情報を渡してきたのがベルベット家である、という情報が出回ってしまう。つまり、リスクを取ったか、全て織り込み済みでプランを組んでいるか、別組織の存在か……」

「別組織か。だから、フラーゲルが所属している団体として独立させたのか」


 ジャーメインがそう言うと、ハートマンは早速それについての考察を始める。


「私は、そちらの可能性が濃厚だと思うわね。フラーゲルの行動が第三の組織としては、少し国家側に偏りすぎているし、それでいて相手側にも傾倒している。どちらにしても、あまりいい話ではないわね」

「新しい団体を考えるのは構わないが、それぞれの行動が決定していない中で考えるのは愚行ではないか?」

「えぇ、私が言っているのは、これらの前提を汲んで動く必要があるっていう話ね。それでは、私から一つ明確なプランを提示するわね」

 ハートマンはそう言うと、すっかり考える気のないバートレットが「速くしておくれ」と急かしてくる。


「やる気満々なところ可哀想だけど、貴方たちはここでステイよ」

「え」

「私とキャブランは情報戦よ。とっとと管理塔-Iにでも行って、情報収集ね」

「つまり、俺とバートレットはここで待機して、レオンを守ればいいんだな?」

「そういうこと。次の行動は私が指示するから、それまで待機していてね。ただし、ここに襲撃者が来た場合、その人を拷問でもして情報をひねり出して」

「状況的に、捻り出せるわけがないと思うんだけど」

「その場合はすぐにこの子を連れて逃げればいいのよ。そこら辺は貴方たちに任せるわ。柔軟に対処しなさい」

「こっちの領分って言うことだな。それじゃあ、俺たちはここで茶でもこしらえるか」

「退屈ー」


 普段戦闘を生業とする2人には若干退屈そうな調子であるが、すぐに暇な時間がなくなることを心の中で呟きながら、ハートマンはキャブランを連れて、情報の収束点である管理塔-Iに向かう。



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