偽証の箱庭
前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)
この物語は、自分の中で新規キャラが多いものだったのですが、特にこのコクヨウのキャラたちは結構頭をひねった記憶があります。なにせ最初の伏線だったはずなので(;・∀・)
この物語はいままで作ったストーリーの中で最も複雑だったので、頭が定期的にパンクしていたりしていなかったり…。
次回の更新は今週金曜日14日20時となっております! 次回もご覧いただければ幸いです(*´∀`*)
内容については、相づちばかりで分かりづらいが、どうやら現在開催されている二家会議についてのトラブルが話されているようだ。
ひとしきり話をしたフラーゲルは、すぐさま通信機を切り、二家会議がどのようなどのような事になっているかを説明する。
「どうやら、面倒なことになっているようね。今まさに、二家会議が第三の組織によって襲撃されたみたいよ。結構な惨事らしいわ~」
この情報を聞いたハートマンは、今までの自らの仮説を確信し、これからの行動について言及する。
「……今のフラーゲルの情報が真であれば、恐らく私の仮説はかなりの確度であると判断していいわ。この状況で、そして私たちを強制的に拘束したビアーズ様の首尾の良さを見れば、指示を出した段階から彼は第三の組織側にあるといえる。そして、その妨害を第三の組織がするとは考えにくい。それならば、この襲撃は間違いなく”プラン通り”、確実ね。第三の組織とビアーズ・アーネストは繋がっている」
ハートマンの言及に対して、「待て」と異議を唱えたのはパートナーであるキャブランであった。
しかし、ハートマンはこのキャブランの制止を手で遮り、ニッコリと笑いながら続けざまにフラーゲルにこう告げる。
「今の情報が、本当に”真”であり、”行動の信頼として値するのなら”、ね?」
「あら、ハートマン、副隊長に向かってなんて口の利き方かしら?」
「ごめんなさいね。口の利き方なんて習ってたらここに所属していないのよ。フラーゲル? 副隊長を自称するくらいなら、上司が部下に持つ責任くらいわかるわよね? アカウンタビリティ、説明責任を果たしていただきましょう」
ハートマンがあえて小難しい言葉を口走ったのは、時間稼ぎである。
アカウンタビリティという言葉を口にした瞬間から、フラーゲルの後方で臨戦態勢をバッチリと準備したバートレットとジャーメインが構えている。2人は今すぐフラーゲルの首を掻き切ろうと「僕らの出番だね?」とニコニコしている。
「……私、裏切り行為なんてしたかしら?」
「別に、ありませんよ。”タイミングが良かった”だけです」
ハートマンが吐き捨てた言葉を聞き、フラーゲルは自分がどうしてこの状況に立たされているのかを理解する。
「なるほど。第三の組織と協働して大事を起こしたタイミングで、都合よくコクヨウがそれを知るのは難しい。そして、ここで私がそれを知らせるのは不自然……なるほどぉ?」
「そういうことです。なので、それが本当に真であるとするのなら、情報提供者を教えていただきたい。あわよくば、今すぐにでも、その情報提供者とスピーカーホンで説明していただきたいですね」
「で、出来なければここでお別れですよ、副隊長さま?」
ニンマリと笑って得物を携えたバートレットがそういえば、フラーゲルは「あらあら」と口火を切る。
「しょうがないわね。私も地位が惜しいわ。情報提供者に、ご助言いただきましょうか?」
「ぜひ、よろしくおねがいします。ですが、私達に会話が通じていることについては伏せておいてください。妙な動きをしたら、後ろで刃を研いでいる元気な男の子が首を狩りに来ますよ」
満場一致の見解に対して、フラーゲルはすぐさま通信機をスピーカーホンに設定して、情報提供者との会話を始める。
「ハロー、メアリー様?」
フラーゲルは、メアリー・ベルベットの名前を口走りながら、要件について唱える。
「おや、フラーゲル? 何かあったのかい?」
「ごめんなさいメアリー様、二家会議の襲撃について、情報の出どころについて詳しく聞きたくて連絡しました。なにせ、現段階では情報の確度は重要です。少しでも、保険をかけておきたい」
尤もらしい理由付けに対して、メアリーはさほど興味をもつことなく、出処について話し始める。
その間、ハートマンはメモ帳に次の指示を書きながら、話し続けるフラーゲルにひっそりと手渡す。その内容は「できる限り話を伸ばして、詳しく」というものである。
「あぁ、そりゃそうだね。こいつはお宅のボスであるビアーズからの情報だ。正確に言えば、ビアーズの妻であるキャノンからの与太話さ。コクヨウは一応、ビアーズの指揮下にあるものの、全体の責任としては二家だからね。君たちなら、しっかりと情報と状況を精査して行動できるだろうから、情報として伝えさせてもらった。キャノンは恐らく嘘は言っていない。まぁ、長年の勘だから判断は任せるね。じゃ、僕も忙しいからこれで失礼するよ~」
「あ、ちょっとメアリー様……」
「ばいばーい」
フラーゲルの言葉を待たずにメアリーは通信機を切ってしまい、まるでフラーゲルが窮地に陥っていることを知っているかのような振る舞いだった。
これにはフラーゲルも呆気にとられてしまい、無残な機械音だけ残す通信機を持って、首をかしげる。
「……ということで、私はこれで」
「ま、メアリー様らしいというかなんというか」
「ていうか、私の疑いは晴れたのかしら!?」
フラーゲルはそう叫びながら、後方を振り向くと、つまらなさそうにスポアを体にしまい込むバートレットらが平常運転に戻っている。
それを確認したフラーゲルを一瞥したハートマンは、すぐに笑顔を作り「疑ってごめんなさいね」と返した。ハートマンとしては、フラーゲルにカマをかけたつもりだったが、しっかりと相手に回避されたことを認識しつつ、次の一手を講ずるために、一旦はフラーゲルへの疑念を沈めて話をふる。
「だって、副隊長様、前科があまりにも多いんですもの。それにこんなベストタイミングで電話かかってきたら疑いますってホント」
「もう、いい加減にしてほしいわね! 前科多いのは認めるけど」
「そういうところですよ」
嘲笑的な視線を向けたハートマンは、早速後方でスポアをしまいこんだバートレットらに対して、「貴方たちはどう思う?」と声を掛ける。
すると、バートレットは早速自らの意見を述べ始める。
「一つ言わせてほしい。コクヨウをここに拘束した時点で、ビアーズさんが第三の組織についていることは確定している。そして、その上で俺たちはここに拘束されている。それをみれば、次の取るべき行動は明らかだろう」
「事実確認ということね? 勿論それは重要よ。だけど、重要な部分が抜けている。第三の組織とはなにか、そしてその目的はなにか、という部分よ。実際、この問題にある程度のあたりを付けないと行動は危険すぎる。例えば、第三の組織の目的はこの国家の存亡の危機に対して、好意的なことをしているにもかかわらず、コクヨウがコミュニティ側として動いてしまえば、この国家の存亡に関わる”厄介事をしてしまう”可能性だってある。どちらにしても、第三の組織がどの目的を、具体的には方向性を標榜しているのかを考える必要は必須であると私は考えているの。そこで、これからの方針として、第三の組織の目的について、考えられる事柄について話してほしい。それでいいかしら? 裏切り者候補のフラーゲル副隊長も」
「それがお願いする態度なのかしら?」
「今すぐにでも国家反逆罪で拘束してもいいのよ」
ハートマンのこの言葉に対して、フラーゲルはワケありげに大笑いした後、「勿論協力させていただくわ」と急に態度を翻す。
「私から言わせてもらいましょう。第三の組織の目的は、私としてはこの国家の存亡に関する事柄であると認知している。対して、それは明らかに二家の目的、いわば国防に符合すると考えているの。つまり、彼らは明らかにこちら側に敵対的ではないわ」
「つまり、我々コクヨウ側の目的と符合する、ということね?」
「そういうこと。根拠として、貴方が言った二家の目的を公理とするということに則って、ということね?」
「なるほどね。流石変態ね」
「なんかサラッとディスられてないかしら?」
流れ弾を食らったようにディスられたフラーゲルを尻目に、ハートマンは大あくびをしつつ、確実に存在しているであろうスパイの存在について話し始める。
「どっちにしても、こっち側にスパイがいることはまず間違いないでしょうね。この状況で、ビアーズ様がコクヨウ全体を拘束するとして、自発的な行動をしないわけがないことくらいわかっているはず。この状況で拘束が意味を成すのは、こちら側の動向を明確に把握できるという手段があってこそ……、そのためにはスパイは必須でしょうからね」
「それで、ハートマンが考えているスパイは誰なわけ?」
すっかり得物をしまい込んだバートレットは、怪訝な調子でハートマンを視認した後、周りを取り囲んでいるコクヨウのメンバーを一瞥していく。
それを確認したハートマンは、早速その目的について言及を始める。




