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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第十五章 黙り込む戦火
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二重螺旋の裏側

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 この回に出てくるメンツはみんな大好きです。正直若干キャラ小説でもあるこのお話において、この子達はギャグ要員兼マジメ君たちです。個人的な好みですが、ギャグっぽいシーンで真面目なことを話しているのが好きだったり(*´∀`*)

 次回の更新は今週金曜日31日20時となっております。次回もご覧いただければ幸せです!


 元の目的から大幅にずれて話し合いが深くなっているが、アイザックはそんなことに気づくこともなく自分の話もし始める。


「僕もそう思うんです! 最低かもしれませんが、親としては他の子どもなんてどうでもいいから一番に幸せになってほしいですもの!」

「やっぱり!! 結局自分の子どもが一番なんだよね!!」

「そうですそうです!! それなのに……僕の息子はこんなバカみたいな事件に巻き込まれて……うぅ、どこにいるの、カーティスぅ」

「え!? カーティスって、イレースの中に入っているあのカーティス君だよね!?」

「そうなんです!!」


 うぇーんと言わんばかりにそういったアイザックに、同情的な眼差しでキャノンは高らかに協力を宣言する。

「そんな……僕も協力するから、早くカーティス君のことを見つけよう!?」

「お願いします……僕、カーティスが大切なんです……ホントに」

「これは本当に、とっととカーティス君の体を探さなきゃ!!」


 キャノンがそう叫ぶと同時に、頭を包帯でぐるぐる巻きにしているストラスが扉を蹴り破ってくる。


「うるせえ! ていうかアイザック、お前情報収集が全然できてねえじゃねーか!!」

「世間話が進んでいるだけだボケ!!」

「うっせチビ! それを脱線してるっていうんだよカス!」

「あ~二人とも、お言葉が悪くなってござるよ」

「お前も変な言葉遣いになってんじゃねーか!!」

「ストラス、流石にお父様にそんな言葉はちょっと、あれ? お母様?」

「どっちでも良いござるよ」


 あまりにも収束がつかない会話風景に、ストラスは大きくため息を付いて大きく首を鳴らす。


「はぁ……もういい加減にしてくれバカ」

「そうだね~。でも、キャノンさんは協力してくれるって言ってくれたよ?」

「そいつは素晴らしい限りだな。キャノン、なにか有益な情報はあるのか?」

「ないね~」

「あぁ素晴らしい、このクソみたいな状態をなんとかしてくれ」

「動け若者、話はそれからだ」


 キャノンがあどけてそう言うと、なにか思い出したように「そういえばさー」と話を急転換させる。


「結局、君たちここに何しに来たの? ただの親孝行って言うわけではないんでしょ?」


 特段よく理解できていない調子でキャノンがそう言うと、ストラスは「なんだ言ってなかったのか?」とアイザックに言いながらも説明を始める。


「さっきアイザックが言ってたかもだが、カーティスの、今イレースの体の中に入っている子の肉体を探している。ちなみに具体的な状況はよく知らん」

「はー、意味不明!」

「それは俺たちも同じだ。コミュニティでは何があったんだ?」


 ストラスの問いかけに、キャノンは首を傾げながら疑問符を浮かべる。

 どうやらキャノンも具体的な状況確認ができていないようで、いったい自分が今何処にいるのか疑問を感じているようだった。


「えー、よくわかんないんだけど」

「……とりあえず、俺たちの知らない情報を教えてほしい。まず、イレースっていう子について教えて。弟ができたなんて聞いてないしな」

「君の個人的な興味が入ってないかなこれ。あ、でも、僕もそれについては気になってた。イレース君、サイライ事件でも絡んでいるからね」

「え」


 アイザックのこの言葉を聞き、キャノンは露骨に動揺を見せる。


 勿論のこと、この動揺を2人は見逃さなかった。というのも、二人共、先程のベルベット邸宅にて、メアリーがイレースの情報を頑なに開示しなかった。この調子では、二家全員が「イレース」という人物についての詳細な情報を知っているのだろう。そして、その情報があまりよろしくないことまでもこれにて判明したのだ。

 なぜなら、比較的饒舌なキャノンすらもその情報について話すことを憚るのだから、これは最悪の情報であると言っていい。


 そうと分かればストラスは、早速キャノンに言及する。


「……キャノン、なにか知ってるんだな?」

「ナニヲ?」

「しっかし嘘つけねーヤツだな。イレースの秘密、どうせ二家当主で共有しているんだろ? こんな非常事態にも話せねーないようなのか?」

「あちゃー、バレてるか。まぁそうだよね。でも、流石に僕も言えないな。イレースの秘密はそれだけ、この国家において大切なものだ。実の息子にも言えないね」

「……およそ数億人の人間の命がかかっていても、か?」


 ストラスの脅すような言葉に、キャノンは顔をすぼめ「どういうこと?」と言及を求める。

 それに対してストラスは、一つ一つ丁寧に話し始める。


「少し聞いてくれ。事の発端は、俺達の運営している便利屋の仕事が失せたことと、このアイザックが運営してる孤児院のカーティスの失踪……このカーティス探しの依頼をしてきたのが、カーティスの幼馴染であるケイティ・ミラーだった。ケイティ・ミラーは、魔天コミュニティ所属の宴の指示を受けて、俺たちの便利屋を潰しにかかってきたが、彼女の協力により、このトラブルがトゥール派と人間と魔天コミュニティのインターフェースになっていたミラー家によって引き起こされた、ルイーザ壊滅計画の一環であったことを知った。そして、その切り札として、とんでもない規模の水爆が、街に眠っていることまで突き止めた。キャノンなら、知っているだろ?」

「あぁ、すこぶる知ってる。パールマンが、エノクδを葬るために作ったおバカ水爆でしょ?」

「そういうことだ。そいつもし近々爆発するのなら、ルイーザ全域を焦土にするだけじゃなく、巻き上がる粉塵により世界は一時的氷河期だ。いくらクリーンな平気な水爆だからといって、20メガトンレベルのものが吹っ飛べばルイーザだけじゃなく世界各地で多くの人間が死ぬ。だから協力してほしい。少なくとも、カーティスの意識がトランスニューロンによって入ってるってことは、この事件に関与している可能性がある。おまけに、そのイレースはサイライ事件にも関与しているって話だ。もし、イレースという人物がすべての根源ならば、彼の情報は極めて重畳だ。そして、この意味不明な状況を打開する手段にもなる。教えてほしい」

「それは困る。とことん困る話だ。僕に、良心と責務の天秤を課すっていうこと!?」


 キャノンがそう叫ぶと、ストラスは大きく首を縦にふる。


「そういうことだ。お願いしますキャノン様」

「うー……いや、僕も話したいのは山々なんだけど……。事情が事情だし、えー?」

 かなり困った調子で喚くキャノンだったが、暫く悩んだ後、イレースの事情がかなり厄介事であることを説明する。


「……うん。ちょっとそれでも、僕は言えない。というのも、ここで2人に話したら、イレースにもそれが伝わる可能性がある」

「伝わったらまずい情報なのか?」

「恐らく、そうなってしまえば”エノクβ事件”の二の舞になる」

「更に話がわからなくなったな」

「だから、ベヴァリッジに聞いてほしい。彼女が話せば、きっとその後のことも考慮して教えてくれるだろうしね」

「つまりは、厄介な問題っていうことだな?」


 ストラスの疑問に、キャノンは手をたたきながら言う。


「厄介なんてもんじゃないさ。この秘密はこの国家の最高機密の一つであり、最も危険な情報でもある。この情報は公的な証拠はもう存在しない。既にベヴァリッジが特例で削除したからね」

「……なんだと?」

「だから、これについて知っているのは僕とビアーズ、そしてベルベットのフィリックスとメアリー、あとはベヴァリッジだけだ」


 キャノンの科白に、いち早く反応したのはアイザックだった。

 アイザックはストラスの裾を引っ張り、「どういうこと?」と説明を求める。

 それに対して、ストラスはとある厄介な事実にぶち当たることになる。

「この国家の最高機密は、基本的にメモリーボックスに収容されることになるが、このとき、二家及びトゥール派の承認により、”媒体問わず、存在そのものが国家存亡危機に値する”と判断された場合、その情報に関する全ての情報を消去することができる。そして、これは主に内部にて帰結する」

「……つまり、国民には知らされない?」

「そういうことだ。そんだけ、メモリーボックスからの情報消去っていうのは重い。実際そんな事になったのは本当に少ないはずだ。それが起きたって言うことは……だ。あんまりいい話じゃないなこりゃ」

「イレース君って、それだけ謎が多いっていうことだね」


 ストラスが話した内部事情を知り、アイザックは大きく首を鳴らし、大きな声でキャノンに話し出す。

 それは、アイザックがキャノンに対して「戦略的に」自供させるためのアクションだった。


「キャノンさん、それなら独り言はいいですか?」

「え」


 アイザックはそう言いながら、自らの考えた筋書きを話し始める。

 

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