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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第十五章 黙り込む戦火
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激闘

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 この回で長い戦闘は一旦終わりになるのですが、実はこの辺りは小説としてもどうなのかなと思うくらいいい加減な感じになってしまっていたので、公開にとても悩みましたが、既に半分を超えているので結局完走を優先させました。

 次の更新は20日の20時です! 次回もご覧いただければ幸いです(*´∀`*)


 高速で動き回る視界のなか、ストラスは気味の悪い佇まいの襲撃者2人を一瞥し、笑みを浮かべながら言う。


「お気に入りのサバイバルゲームで、お前たちみたいなやついたな」

「それはそれは……たんとご堪能していただければ、幸いですわ」


 完全に異形の両腕に変貌した襲撃者は、一切動揺することなく半液状のスポアを当たりに撒き散らしながら、それでいて真正面から迫るストラスに剣山のような攻撃を開始する。


 今までとは比にならないスピードで放たれた攻撃に対して、ストラスは瞬時に反応し、持っていたナタ状のスポアを両方の襲撃者に投げつけ、剣山のように変形したスポアを跳躍により回避する。


 しかし、それに合わせて攻撃を仕掛けなかった方の襲撃者がストラスの行動に合わせて同じように跳躍し、そのままの勢いでストラスを覆うように液状のスポアで攻撃を開始する。

 ストラスは、相手の一連の動きを視覚で捉えることはできなかったものの、相手の技量に当たりをつけるには十分すぎるほどだった。


「これやばいわ」


 ストラスは笑いながらそう言った。

 なにせ、襲撃者が作り出したスポアはほぼ液状でありながら、まるで上に降る雨の如き不気味な動きを見せ、ものの1秒でストラスを完全に覆い尽くしたのだ。

 そして、ストラスを覆い尽くした液状のスポアは一気に硬質化し、鋭利な刃となって次の瞬間にはストラスの全身を射抜く。


 勿論、ただで終わるストラスではない。

 攻撃が放たれる瞬間、ストラスは自らの体中から無数のスポアを出現させ、できる限り攻撃がもろに着弾しないように傷をずらした。

 そして、すぐさま両腕の仕込みナイフ状のスポアを水平に動かし、自らを覆うスポアを切り抜き、受け身を取りながら2人の襲撃者から距離をとろうとする。


 だが、襲撃者はそれを許さなかった。

 剣山のような攻撃を行った襲撃者はストラスの次の行動を予見していたように、一気に体勢を翻し、今度は硬質化した波のような形状のスポアで攻撃を開始する。

 その攻撃範囲は凄まじいものだった。ほぼ前方180度を占める攻撃がストラスに向かって放たれ、流石のストラスもこれに対抗する事はできず、瞬時の判断で硬質化されている全身のスポアを一気に前方に移動させ、防御壁を作り出して攻撃を回避しようとする。


 そのストラスの行動に対して、もうひとりの襲撃者はチャンスと言わんばかりにストラスの背後を取り、最大限に硬質化したスポアを大きく振りかぶる。



 直後に、凄まじい轟音が響き渡る。

 その時、ようやく動くことができるようになったエンディースがその音を聞き、ストラスは灰になったのだと勘違いするほどのものだった。

 しかし、強烈な粉塵から現れたストラスは、ギリギリ全方位をスポアで覆っており、攻撃を防ぐ事ができたようだ。


 けれども被害は甚大である。ストラスは衝撃を緩和させたものの、攻撃がモロに必中してしまい、片方の腕が吹っ飛んでしまっている状態である。それに加えて、頭部からはやや出血をしており、再生に力を回せば確実に潰され、そのまま戦い続ければ機動力も突破力も乏しくなり、明らかに不利な状態に立たされる。


 そんなストラスを一瞥した襲撃者は、なんの迷いもなく手を叩いた。


「……この攻撃を受け止めるのか、流石です。ストラス・アーネスト様」

「ありがとよ! おかげでキレイに腕が吹っ飛んだよボケ」

「私達の連携を受けた中で、最も体が残っていましたよ?」


 不気味にそういった襲撃者に対して、ストラスはけたけたと笑いながら襲撃者を称える。

 勿論、自身の圧倒的不利な状況を十分に理解していながら。


「二相スポアを使うやつなんて珍しい。久方ぶりだ。たまには、本気で戦ってみるか?」

「冗談はよしてください。これまで本気じゃなかったなんて、洒落になりません」

「それならば、こちらは使えるものを使うまでです。そちらのアーマーを纏っているならず者、手を貸しなさい」


 ストラスが本腰を入れ始めた途端、襲撃者2人は意識を取り戻したエンディースを蹴り出すようにそう指示を出し、3人がかりでストラスを潰しにかかる。

 対して、エンディースは襲撃者の正体については知らないようで、驚きつつもここぞとばかりに話に乗っかり、水を得た魚の如く立ち上がり、襲撃者に尋ねる。


「貴様ら、何者だ?」

「それについては想像に委ねます。それより、目の前の最強の戦神を殺すことだけを考えなさい」


 襲撃者がそう言うと、エンディースは鼻を鳴らしながら「当然だ」と臨戦態勢に入る。

 しかし、それを聞いたもう一人の襲撃者は呆れて釘を刺す。


「おいならず者、目の前にいるのは軍に匹敵するほどの戦闘のエキスパートだ。軽率な言動は控えろ」

「協力は感謝するが、次に貴様らを八つ裂きにしてやる」


 いきなり喧嘩をしだした目の前の連中に対して、ストラスは興味なさそうにもげた右腕から、同じように二相スポアを取り出し、自らの体躯の2倍はあるスポアの腕を形成する。

 更に、ストラスは余った腕で肩甲骨から再度ナタ状のスポアを手に持ち、それを大振りな仕草で振るう。


「おいおい、俺は戦神なんだろう? 神の前で駄弁はやめてほしいところだな?」

「勿論です。我々は貴方と戦うためにここにいるのです」

 襲撃者のその言葉と同時に、ストラスは凄まじい重量の右腕を軽々と振るった。

 すると、ストラスの半液体状のスポアから殺傷能力のある粒子がスローイングナイフのような形状に変形して、前方に撒き散らされる。


 それと同時に、ストラスは放たれたスローイングナイフ状のスポアと同等以上のスピードで3人に接近する。


 これに対して、3人のうちの一人、女性口調の襲撃者は先程とと同様に前方180度を締めるスポアの波を作り出し、飛んできたストラスの攻撃をすべて受け止める。

 そして、これらに合わせるように男性口調の襲撃者は両腕を大きく広げるように跳躍し、距離を詰めてきたストラスの全方位を纏うように包み込む。先ほどと同じすぐに攻撃に転じることができるような状態であるが、これは明らかに防御壁である。


 つまり、ストラスの行動を制限するためのものであり、本筋は別にあるのだろう。ストラスは瞬時にそう判断し、持っていたナタ状のスポアを上に投げつける。

 そして、その結果を見ずに前方のスポアを右腕のなぎ払いでぶっ壊し、すぐに飛び込むような形で距離を取る。


 その受け身の最中、ストラスは左腕で、今度は大腿部から突き出たナタ状のスポアを供給し、再びそれを同じ場所に投げつけ、同じ形状のスポアを供給する。


 一方、ストラスが瞬時に投げつけたナタ状のスポアは、図ったように跳躍して振り下ろしを繰り出そうとしたエンディースのアーマーに直撃する。もろに顔面と胸部に必中したものの、アーマー状態のエンディースには重篤な効果は及んでいないのか、何事もなかったかのようにナタを掴み、適当な方向に投げつける。

 それとほぼ同時に、地面に着地したエンディースはすぐさまストラスの方向に突進を仕掛ける。


 同じく、女性口調の襲撃者はすぐさまストラスの方向に視線を移動させ、エンディースの補助をするように両腕を大きく伸ばし、ストラスに攻撃を加える。

 これは、攻撃を仕掛けるのと同時に着弾した場合に、その場でストラスを固定化することで、エンディースの突進攻撃を確実に着弾させる事ができる。


 加えてこれを完璧なものにするように、男性口調の襲撃者はストラスの後方に回り、全方位を囲むように、半液状のスポアを仕掛ける。



 即席でありながら、彼らのコンビネーションは完璧である。

 ストラスは少し感心しながら、持っていたナタと右腕を収束させ、エンディースが迫る自らの前方のスポアを叩き斬り、ゆっくりとエンディースを見据え、右腕を突き出した。

 ストラスの攻撃はキレイにエンディースの突進に正面衝突する。その結果は、エンディースが大きく吹き飛ばされ、そのまま女性口調の襲撃者の方向へ吹き飛ばされてしまう。


 これには流石の襲撃者も一旦攻撃をやめ回避に徹する判断を行う。これをストラスは見逃さなかった。

 ストラスは突き出しの勢いで右腕を大きくなぎ払い、先ほどと同じようにスローイングナイフの要領で広範囲を攻撃する。

 しかし先程とは異なり、この攻撃は全方位であり、後方にいた男性型の襲撃者は攻撃を回避するために大きく跳躍する。


 ストラスは、男性口調の襲撃者がその行動に出ることを予測し、同じように跳躍とともに右腕を大きくしならせ、かなりの勢いで振りかぶる。

 それは見事に命中し、襲撃者は大きくふっ飛ばされてしまう。だが、ストラスはこれを見逃すことはせず、先程エンディースが投げ捨てたナタ状のスポアを回収しながら、追い打ちと言わんばかりにそれを投げ捨てる。


 勿論のこと、それは襲撃者に命中し、男性口調の襲撃者は完全に行動不能に陥ってしまう。


 ストラスはこれに一切過信することなく、すぐさま体勢を翻し、エンディースらの方向に向いたと思えば、強烈なスピードで距離を詰める。

 これに対して反応することができたのはエンディースであった。というのも、襲撃者は先程ストラスが放ったスローイングナイフ状のスポアが命中してしまい、フレーム単位の戦闘の状況においては対応することができないほど、反応スピードが遅れていた。


 それをしっかりと想定していたストラスは、まっすぐにエンディースに向かいながら、大きく右腕をしならせ、槍状に変形させつつも左腕に出現している仕込みナイフ状のスポアを一旦崩壊させ、すぐにそれを左腕全体にまとわせ、防御態勢を取りながらエンディースに刺突を繰り出す。


 エンディースはそれを突進をしつつ攻撃を防御するように異形の両腕を胸の前でクロスさせる形を取るが、エンディースの想像を遥かに超えるほど、ストラスの右腕の刺突は凄まじい威力だった。

 強烈な右腕の刺突がエンディースの胸部に直撃した瞬間、ストラスの二相のスポアが一気に硬質化し、スピードが乗った刺突は破壊的な威力だった。

 それを体現するように、エンディースの巨体は、その4分の1程度のストラスの体から斥力でも受けたように桁違いの速さで吹き飛ばされる。


 ストラスはそれに対して特段興味もないのか、すぐさまターゲットを女性口調の襲撃者に移したようで、こちらも凄まじいスピードでスポアを動かせなくなっている襲撃者に距離を詰める。

 しかし、エンディースに刺突を行ったことで、二相スポアの状態が固定化されていないため、攻撃が少しだけ遅れてしまう。

 これをしっかりと把握していたストラスは、エンディースに攻撃した直後に、彼が投げていた2本目のナタ状のスポアを回収しており、それをそのまま振り下ろす。


 襲撃者のスポアは完全に硬直していた。

 というのも、二相スポアは最大の弱点が存在しており、半液体状のスポアはその状態で何らかの衝撃が加われば極端に硬質化するという性質がある。

 これを見越してストラスは、あえて大量のスローイングナイフを半液体状の襲撃者の防御壁に攻撃を当てたのだ。

 そして、襲撃者の防御壁は両腕と完全にリンクしており、両腕が完全に使用できない状態だった。しかし襲撃者もそれでは終わらず、動けない状態からストラスの攻撃を背部から出現させたスポアで凌ぐ選択を行う。


 それは見事にストラスの一太刀を受け止め、ほぼ拮抗した動きを見せる。

 これに対して、襲撃者は尋常ではないストラスの強さに感嘆の声を上げる。


「これほどまでの……強さ……、これが戦神たる所以ですか?」

「知らん。だが、貴様らのその意志の強さ……なかなかに見ないものだ。何者だ?」

「ふふ……二相のスポアを扱うのは珍しいですか? 私たちは……生まれつき痛みを感じづらい体質なんですよ、ストラス様?」

「そうか、それなら遠慮なく潰せるな」


 ストラスがそう言うと、振り下ろされたナタ状のスポアが一気に襲撃者のスポアを切り落とし、攻撃が彼女の肉体に達し、彼女も戦闘不能状態に陥ってしまう。


 そこでようやく、ストラスは吹っ飛んだ右腕を回収し、それをくるくると回して吐き捨てる。


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