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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
お祭りの季節は忙しいんですよ編
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トマト、メロン、桃とニンニク

 夏トマトでは収穫が終わった畑が出始めていた。そんな畑では、ケシャブ達が大きく育ったトマトの株を地面から引き抜いている。

 カルパナが彼らと挨拶を交わしてから、ゴパルに説明した。

「引き抜いた株は、生ゴミ処理で使っている細断機にかけて粉砕します。それを雑草や落ち葉と混ぜて、生ゴミボカシと一緒に元の畑へ戻します。収穫物以外はなるべく全て畑にすき込んで、土を肥やすのが基本ですね」

 この場合、トマトの株や雑草、落ち葉には肥料成分はそれほど多く含まれていない。そのため、肥料効果は生ゴミボカシ以外では期待できない。

 ただ、こうする事でカビやムシの種類と数が爆発的に増える。それらの働きによって、土の保水力や保肥力、透水性と通気性が向上する。


 他の段々畑では、メロンの自家採種が行われていた。といっても、収穫せずに残して溶け始める寸前まで完熟させたメロンを拾っていくだけだが。メロンから種を取り出して水洗いし、水を切ってから紙袋に入れて冷暗所で保管する。

 一方で、パメでも日当たりの良い段々畑では、メロンをそのまま崩して土と混和して種蒔きしていた。

 カルパナによると、KL培養液を水で五百倍に薄めたものを併せて散布して、簡易なビニールトンネルをかける予定らしい。

「亜熱帯のポカラでも、さすがにこの後は気温が下がります。トンネルをかけないと上手く育ってくれませんね」


 ナウダンダの桃園では、西王母の袋を透明な種類に替え始めたそうだ。桃色に着色する事を促すためらしい。

 カルパナが上の方にある桃園を指さしながら、少し困ったような笑みを浮かべた。

「最初から透明な袋を使えると手間が省けるのですけれどね。日に当たるとボロボロになる素材なので、この時期からしか使えません」

 ネパール政府が、生分解性や再利用できる素材のプラスチック容器や袋を使うように指導しているので、仕方がないという事だった。


 最後に竹製の簡易ハウスに入る。中では冬トマトの育苗が進んでいた。今はまだ大きなトロ箱に小さな苗がびっしりと生えている段階だ。本葉の数が二、三枚になってから、直径九センチのポットに移植する予定である。

 カルパナがトロ箱に触れながら、ゴパルに視線を向けた。

「KLを使った育苗土を使って、生卵を混ぜた光合成細菌や生ゴミ液肥を散布して育てる予定です。ですが、今回はひと手間加える事にしました」


 KLや光合成細菌を使うと、トマトの生長が勢いづく事がこれまでの経験で分かった。そこで、九センチのポットに移植してから後日、十五センチ直径のポットに再移植する事にしたらしい。

「本葉の数が五、六枚の頃に再移植しようと考えています」

 ゴパルが恐縮している。

「KLを使ったせいで、手間が増えてしまいましたか……すいません」

 カルパナが穏やかに微笑んだ。

「そんな事はありませんよ。根の量が倍以上に増えたので、苗としてはとても良くなっています。冬トマトは乾期に栽培しますから、根の量が多いと育ちやすいんですよ」

 そういうものなのか……と感心しているゴパルである。農業素人なので、こうなるのは仕方がない。


 時間がまだ少し残っていたので、ニンニク畑にも行く事にしたゴパルとカルパナだった。

 植えつけが終わった後だったようで、低い畝が並んでいる。畝の幅は五十センチほどで、十五センチ間隔でニンニクの鱗片を植えつけた跡が見える。

 ゴパルが撮影をし始めたのを見ながら、カルパナが簡単に説明した。

「これも今回から、最初の段階でKLを使っています」


 ニンニクの種球からはがした鱗片を、KL培養液を水で千倍に希釈した中へ一晩浸ける。

 翌朝、ザルに上げて二日間ほど陰干しする。そうすると鱗片から根が生えてくるので、根の長さが二、三ミリになった段階で畑に植えつけたという事だった。根の向きを下にして鱗片を植えるのがコツだそうだ。

「一か月くらいすると、発芽して芽が出揃います。雑草に負けやすいので、こまめに草むしりをしないといけないのが大変なんですよね」


 畑には前もって雑草と生ゴミボカシを投入していて、四週間くらいかけて分解させてあるらしい。ニンニクの芽が出揃ってから、定期的に生ゴミ液肥を散布して生育を促すと話してくれた。

 なるほど、とカルパナの説明を録音しながら同時にメモを取るゴパルだ。

 カルパナが自身のスマホを見て、時刻を確認した。

「では、そろそろレカちゃんの所へ向かいましょうか。チーズづくりで試食してほしいそうですよ」


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