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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
氷河には氷があるよね編
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チヤ休憩

 早速、店内に入って席に座り、レインウェアのフードを脱いだ。さらに、リュックサックも床に置く。


挿絵(By みてみん)


 念のために足元と首筋を手で触り、吸血ヒルが食いついていないかどうかを確認した。今回も被害は出ていないので、ほっとする。

 向かいの食堂では、米国人の観光客が見事に血まみれになっていて、大騒ぎをしている。まあ、半袖半ズボンに、ポンチョを被った程度では、吸血ヒルの攻撃を回避するのは難しい。


 吸血ヒルは、噛みついた際に、血液凝固を阻害する物質を注入する。そのために、ヒルが満腹になって離脱した後でも、傷口から血が流れ出てしまうのだ。

 数分も経てば、阻害剤も血と一緒に流れ出てしまうので、出血は止まる。

 しかし、傷である事には変わりはないので、きちんと消毒して保護する必要があるのだ。そうしないと、雑菌や病原菌が侵入して、病院の世話になる事態になる。


 ゴパルが立ち寄った茶店には、それほど客が多くなかったので、すぐにチヤが届けられた。茶店のオヤジに礼を述べて、チヤのガラスコップを、つまみ上げる。

 結構熱かったようで、フーフーと息を吹きかけて冷ましながら飲むゴパルである。

 十枚ほどの円形のクッキーがパック詰めにされたものを、茶店のオヤジに勧められた。チヤにはクッキーなので、素直に注文する。クッキーは国産で、バター風味の他に、チョコレート風味や、コーヒー風味等があった。

 しかし、このバタークッキーは、端の数枚が見事に割れていた。こういうのは、いつもの事なので、そのまま食べる。ナヤプルから、ここまで運ぶ間に、割れてしまう事が多いのだ。


 ゴパルがチヤをすすりながら、スマホを取り出して、この先の情報を探る。特に、通行止めになったという知らせは、出ていないようだ。

「予定では、今日は、次のセヌワに泊まる。最奥の山村になるのかな」

 茶店のオヤジに道を聞くと、夕方までには楽に到着できるという事だった。スマホ情報でも、同様の事が記されているので、ゆっくりと向かおうかと考える。


 しかし、竹細工に目が向いて、その考えを改めた。ゴパルが茶店のオヤジに聞く。

「竹林が大きいのは、どこでしょうか?」

「セヌワだろうな。あそこはチャイ、バンブーとも呼ばれているからナ」

 ゴパルが背伸びをして、クッキーを全て食べ終わり、チヤを飲み干した。磨き過ぎて曇りガラス状態になった、持ち手の無いガラスコップをテーブルに置く。

「それじゃあ、頑張って向かうとするかな。ごちそうさま、お代はここに置いておくよ」

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