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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
氷河には氷があるよね編
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チョムロン

 上り坂を尾根筋まで進んでいくと、道案内の看板が立っていた。四つ角の道に分かれていて、尾根筋を越えるとチョムロンへ、尾根筋をモディ川方面に向けて下るとジヌーへ、そして、尾根筋をさらに上ると公立学校へとなっているようだ。ゴパルはチョムロンへ向かう事にする。

 小休憩のついでに、スマホでジヌーについて調べると、温泉宿という事だった。にわかに興味を抱くゴパルである。

「ふむ……仕事が終わったら、帰り道で、立ち寄ってみようかな」


 チョムロンの周辺では、鬱蒼うっそうとした広葉樹の森が広がっていた。

 薪や飼料用に枝葉を切ってはいるが、過疎の村であるためか、枝が茂った樹齢の高い木々が多い。土地が肥えていないので、年を経ていても、それほど太い幹にはなっていないが。

 森の幹や枝からは、緑色のカーテンのような、ボロ切れ布のような、コケが垂れ下がっている。地衣類も分厚く、キノコの臭いが森に中に漂っていた。

 ここでも採集しようかと考えるゴパルであったが、断念したようだ。

「……腹減ったな」

 小腹が空いてきたので、まずはチョムロンへ急ぐ事にする。


 尾根を越えると、もう、チョムロンの集落に入ってしまった。道も再び石畳に変わり、地元の人や、欧米の観光客の姿が目に入ってくる。

 やはりここにも、ガンドルンと同じく、ロバの侵入防止のための竹柵が、石畳の道沿いに設けられていた。


 ガンドルンまでは、バスパークから荷物を、そのまま住民が運び上げる事が可能だ。ロバ隊に頼らなくても、何とかなる場合が多い。

 しかし、さすがにチョムロンまでとなると、距離がある。そのため、チョムロンの集落では、十数頭ものロバが休憩しているのが見えた。

 ロバの荷鞍からは、荷物が下ろされている。そのため、身軽になっているのだが、じっと立って頭を伏せていた。馬と比べると、ロバはかなり大人しい。


 雨が降っているので、露店は出ていないのだが、民宿や、土産物屋、それに居酒屋が軒を連ねている。ただ、商店街の規模は、ガンドルンには及ばない。三階建ての建物は見当たらなかった。

 民宿はガンドルンと違い、新築が多い。灰色の石造りで、窓枠やドア等の木製品も新しい。ただ、新しい故のチープさが感じられるが。

 土産物屋では、竹細工の他に、白と黒の毛糸の帽子や、布の手作り肩掛けカバン等が売られている。

 茶店か食堂を探して、通りをウロウロするゴパルだ。とはいえ、ガンドルンと比べても小さい山村なので、数軒目に決めた。理由は、薪かまどの上に乗っている、チヤが入ったヤカンから、盛んに湯気が立っていたためだ。

 他の茶店や食堂の方が、客の入りが多いのだが、気にしないゴパルである。

「この茶店で、休憩しようかな」

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