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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
ポカラは雨がよく降るんだよね編
936/1133

落下事件

 幸い、落下は二メートルほどで済んでいた。

 ジプシーにはヤマともう一人若い日本人の男が同乗していたが、二人ともエアバッグに包まれて無事のようだった。

 いち早く車のドアに手をかけたカルパナが、ヒビが入った窓ガラスを手鎌の背で叩いて割り、ドアロックを解除してドアを開ける。

 次に手鎌を振ってエアバッグを切り裂いて、ヤマを引きずり出した。シートベルトをしていなかったようで、すんなりと車外へ出てくる。

 助手席に座っているもう一人の日本人についても、駆けつけたケシャブ達に命じて同じように救出した。ヤマをゴパルとカルパナで担いで、急いで車から離れる。

 車は爆発や炎上はしなかったので、ほっとするカルパナ達だ。まあ、この手の四駆車には落下しても爆発炎上しないように、安全装置がついている。しかもこの車種は電気自動車だったので、さらに安全設計だ。電池は液体部分を含まない全固体二次電池を採用している。


 目を回してボーとしているヤマと若い日本人をケシャブ達に見せて、外傷がないかどうか確認させながら、カルパナがスマホを取り出して電話する。すぐにつながったようで、簡潔に状況を話してから電話を切った。

 ケシャブ達の通訳をしているゴパルに告げる。

「アバヤ先生に伝えました。診察してくれるそうです。それと、アンバル社長が車を手配して駆けつけてくれます」

 ゴパルも答えた。

「ヤマさん達には外傷は無いですね。骨折や腹痛も無いようです。ですが頭を打ったかもしれませんから、担いで揺らさないように慎重に移動しましょう。パメの交差点まで下ろせば良いですか?」

 カルパナが即答する。

「そうですね。そこへ移動しましょう」


 その後は、即席の簡易担架に乗せた。それを用いて、ゆっくりと慎重にヤマ達二人を数名で担いで段々畑の畦道を下りていく。パメの集落の交差点まで運んだ。

 すぐにアンバル社長が運転する大型の四駆車が走ってきて、ヤマ達二人を後部座席に座らせた。

「それじゃあ、カルパナさん。アバヤ先生の病院までチャイ、ひとっ走りしてきます」

 カルパナがうなずいた。

「飛ばし過ぎて、交通警察に捕まらないように注意してくださいね」

 ようやくヤマの意識がはっきりしてきたようだ。後部座席からカルパナとゴパルに手を振った。

「すいません……大騒ぎになってしまいました」

 穏やかに微笑むカルパナだ。

「まずは精密検査を受けてくださいな。それじゃあアンバル社長さん、行ってください」

「ほいきた」


 この四駆車も電気自動車のようで、エンジン音もなく静かに走り去っていった。それを見送って、ようやく一息つくカルパナだ。

「びっくりしました……ケガをしていなければ良いのですが」

 ゴパルが感心しながらカルパナを見ている。

「手際が良かったですね。こういった事態を想定した救助訓練をしているんですか?」

 カルパナがケシャブ達に礼を述べた。次いで、駆けつけたビシュヌ番頭とスバシュに、チヤをケシャブ達に振る舞うように頼む。

「はい。段々畑って、意外と崩れたりするんですよ。今の時期は畦道が滑りやすいですから、転んでケガをする人も出ますね」

 そう言ってから、段々畑を見上げた。ヤマが乗ってきたジプシーが逆立ちした状態で段々畑に引っかかっているのが見える。フロントガラスにもヒビが入っているようだ。

 スマホを再び取り出して、チャットで何か送信した。

「後でアンバル社長さんに、あの事故車を引き上げてもらいましょう。その前にポカラ警察に知らせないと」


 チヤ休憩を終える頃にポカラ警察がやって来た。事故の現場検証が始まる。既に多数の野次馬がパメの交差点に集まっていたので、彼らへの対処も併せて行っているようだ。

 カルパナとゴパルも警察に呼ばれて、事故当時の状況を説明する事になった。話を聞き終えた警察官が、やれやれと首を振りながら調書を送信する。

「この時期は、この手の事故が多いんですよ。カルパナ様のおかげで、大した事にはなりませんでしたね。ありがとうございます。野次馬が事故現場に群がって盗みとかすると、余計な手間がかかるんですよね。今回は、それが無かったので大助かりですよ」

 警察も慣れているようで、すぐに現場検証も終わった。事故車を放置して帰っていく。

 警察が帰っていくと、野次馬も飽きたのか減り始めた。ビシュヌ番頭がチヤを持ってきたので、それを受け取るカルパナとゴパルである。

「あ。サビちゃんとレカちゃんからチャットが来てる。情報が速いなあ、もう」

 カルパナがスマホを見て困ったような笑顔を浮かべた。チャット文を読んで、返信を送る。

「ラビン協会長さんが詳しく話を聞きたいので、ルネサンスホテルまで来てほしいそうですよ。サビちゃんも何か料理を作ってくれるそうです。どうします? ゴパル先生」

 ゴパルが気楽な表情で答えた。

「ここに居ると、野次馬に色々と質問されそうですしね。同じ聞かれるなら、ラビン協会長さんの方が紳士的でしょう。お腹も少し減りましたしね」


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