フランスの日常食
普段のフランス人の朝食は、前夜の残りの固くなったバゲットをエスプレッソかカフェオレに浸して、腹に詰め込んでオシマイ……という人が多い。
少し良い環境の人は、これが焼きたてのクロワッサンに変わる。サラダは食べない。
昼食は近くのカフェやビストロで済ませる。バゲットにハムとチーズを挟んだサンドイッチや、食パンを使ったサンドイッチに、フレンチフライのフライドポテトを安い赤ワインで腹に流し込む人が多い。この赤ワインもフラスコ入りでガブ飲み用だ。
この時代では自動運転が標準なので、飲酒しても問題ない。そのため、昔のだらしないフランスに戻ったと嘆く人も多いのだが……
少し良い環境の人は、サンドイッチの代わりに安くて固い赤肉のステーキを食べる。昆虫や微生物を粉末化して原料にしたハンバーグステーキや、万能幹細胞を組織培養して作った培養肉のステーキもある。これを安いテーブルワインで腹に詰め込む。
どちらの場合も食後にエスプレッソを飲んで締めだ。
夕食は家でハムとチーズ、サラダにバゲットをワインで腹に詰め込む。
丸鶏を買ってきて、適当にオーブンで焼いて食べたりもする。調理済みの焼き丸鶏は呆れるほど高価なので家で焼くのだ。気が向いたら、デザートとして最後に何か果物を食べて終了である。
という事なので餌ではないのだが、ヤマにはフランスでの良い思い出が無いのだろう。
ゴパルが話を聞いて、内心で自嘲気味につぶやいた。
(これで餌扱いされたら、ネパール定食はもっと酷い表現をされてしまいそうだな……)
町の食堂では、盆に盛られた白ご飯と、黄色いダル、野菜の香辛料炒め、鶏肉の香辛料煮込み、アチャールと生野菜の輪切り少々が定番だ。これが毎日続く。
季節に応じて野菜の種類が変わる程度だ。そして飲み物は基本的に水だけである。デザートも果物も出ない。
そのような雑談をして前菜を終えると、給仕が赤ワインを注いでナイフとフォークをテーブルに並べた。その後で扉が開いて、給仕が山羊肉料理を運んできた。去勢した雄山羊なので特有の臭いは弱いのだが、それでも会議室内に山羊肉の臭いが漂っていく。
(うん。間違いなく山羊だね)
ゴパルが皿に盛りつけられた山羊料理をスマホで撮影する。
給仕長が改めて料理の紹介をした。
「去勢山羊の前足肉の白ソース煮込みでございます。付け合わせに、その山羊のブイヨンスープを添えてあります」




