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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
暑いと夏野菜を植えたくなるよね編
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メイデイ

 ゴパルがタクシーでルネサンスホテルに到着して背伸びをした。長袖シャツを腕まくりして一息つく。

 既に夜になっていて、フェワ湖に映るレイクサイドの繁華街には灯りが点っていた。アンナプルナ連峰は薄ぼんやりとしか見えていない。空気中の塵が多いせいだろう。マチャプチャレ峰はそれなりに見えているが。

「うー……夜でも、やっぱり暑いなあ」

 メイデイ前日なので、タクシー料金はいつもよりも割高になっていた。走っているタクシー自体も数が半分程度になっている。スマホを取り出して気温を調べると三十度という事だった。頭をかくゴパルだ。

(あらら……まだ三十度なのか。すっかりABCの気温に慣れてしまったなあ)

 ちなみにテライ地域やインドの首都では、日中は四十度に達しているらしい。


 ホテルに入って、受付けカウンターでチェックインを済ませる。明日からメイデイだ。ABCへ戻るのが遅れると予想して、今回は滞在予定を延ばしている。

 いつもの男スタッフから手紙や小包を受け取ってチップを渡すと、その男スタッフが残念そうな表情で告げた。

「ラビン協会長様は、ジョムソンから帰って風邪をひいてしまいました。熱はもう下がっているそうですので、明日にでもホテルに顔を出すと思いますよ」

 了解するゴパルだ。

「そうなんだ……私からも後でお見舞いのメールを送っておきますね。チャットでのやり取りでは、風邪で寝込んでいるような感じでは無かったんだけどな」


 そこへサビーナがレストランから顔を出して手を振ってきた。

「いらっしゃい、ゴパル君。今晩はピザ屋で食べてきなさい。明日メイデイだから、店が満席なのよ。代わりに明日の晩飯は、試食会って事で安くしてあげるわね」

 了解するゴパルだ。しかし頭をかいて両目を閉じている。

(むむむ……この蒸し暑い中を歩いてピザ屋まで行くのか。参ったな)


 翌日は朝から静かだった。道路には一台も車やバイクが走っていない。自転車が走っている程度だ。二階の角部屋の窓から外を見下ろしたゴパルが肩をすくめた。結局、昨晩は近場の居酒屋で軽く食事を済ませていたゴパルだ。

(やっぱりな……仕方がない、歩いてパメまで行くか)


 ロビーに下りて、男スタッフからチヤを受け取る。協会長は今日も休むという話だった。肯定的に首を振るゴパルだ。

「無理して歩いてくるよりは、思い切って休んだ方が良いと思いますよ。私も朝食を摂ったら、部屋に戻って昼までゆっくりします」

 ロビーには、今日がメイデイだと知らなかった欧米人観光客が居て不機嫌そうにしている。中国人やインド人観光客も同じような表情だ。

 タクシーは休みになっても、バスは休日スケジュールで運行していると思っていたのだろうか。ネパールではメイデイの日はゼネストの日でもあるのだが。

 地元のネパール人観光客だけは、のんびりと朝食を摂っている。ゴパルも彼らに混じって皿を手に取った。

「さて、食べたら昼寝でもしようかな」


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