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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
暑いと夏野菜を植えたくなるよね編
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支援隊事件

 ビシュヌ番頭のスマホに何度か電話がかかってきていた。彼が情報収集をした所、おおよそ次のような事件が起きたらしい。

 シャンジャ郡のある町に、支援隊の男が小学校の教師として赴任していた。ネパールでは田舎の町ほど教師が不足しているので、外国人のボランティアを呼んで充当している。

 その男が生徒をえこひいきし、さらに女子生徒に手を出したという。それが地元に知れ渡って大騒ぎになっていた。


 ビシュヌ番頭が客の会計をしながら軽く肩をすくめた。

「あくまでも噂ですので、本当にこんな事が起きたのかどうかは本人達に聞かないと分かりませんが……騒ぎが大きくなっています。シャンジャへ買い出しや送迎に行くのは、今日は避けた方がよさそうですね」

 チャパコットはシャンジャ郡に接していて、花卉ハウスの作業員の中にはシャンジャ郡から通勤している者がいるそうだ。また、シャンジャ郡にはコーヒー栽培農家が多く、コーヒーの買いつけも盛んに行われている。


 ゴパルがため息をついた。

「支援隊ですか……首都でも暴れたという話を、日本料理屋の主人から聞いた事があります。真面目に仕事をしてほしいものですね」

 カルパナも困ったような表情をしているが、擁護をした。

「騒ぎを起こすのは少数だと思いますよ。数年前にシスワで農業開発局に赴任していた、支援隊の男の人は真面目でした。花の名前に詳しい人でしたよ」

 ちょっと耳が痛い気がするゴパルである。カルパナが話を続けた。

「その人は、パパイヤ園とかの果樹園づくりにも関わってくれました。味オンチでサビーナさんによく蹴られていましたけど。正確な情報が入るのを待った方が良いかと思います」

 ゴパルの故郷のカブレ町にも昔、支援隊が赴任して働いていたと聞いた事はあったのだが、特に何をしたという話は聞いていなかった。

(ふむむ。人によるのかな)


 スバシュが早くも悲鳴を上げて、カルパナとビシュヌ番頭に助けを求めてきた。客に囲まれている。

「カルパナ様。すいませんが、店を手伝ってもらえますか? 私だけでは対処できません」

 カルパナが店の様子を見て、目を点にした。

「うわ。本当に多いな。ちょっと待っててくださいスバシュさん。ゴパル先生をホテルまで送ってきます」

 さすがに遠慮するゴパルだ。

「いやいやいや……客を放置してはいけませんよ、カルパナさん。私はタクシーか乗り合いバスでホテルへ行きます」

 カルパナがスバシュとビシュヌ番頭からの救難信号を見てから、ゴパルに申し訳なさそうに謝った。

「すいません、ゴパル先生。そうしてもらえると、とても助かります」


 ゴパルがタクシーでルネサンスホテルへ戻ると、ヤマのオフロード車が停車していた。それを見て目を点にする。

「え? ボロボロじゃないか」

 オフロード車の窓ガラス全てに大きなヒビが入っていて、テールライトやヘッドライトが割れていた。車体にも多くの傷が付いている。

「この傷は投石によるものかな?」


 協会長がロビーから出てきて、困った表情で肯定した。

「猟銃ではなかっただけ幸運でしたね」

 ゴパルが首をかしげた。

「ええと……ヤマさんは確か支援隊の事務所には所属していませんよね。水道工事のために来ているはず」

 協会長がゴパルをロビーに案内しながらうなずいた。

「はい。所属は別です。ですが車を持っている人がヤマ様だけだったそうで、仕方なく彼がワリンまで救出に向かったと話してくれました」

 ワリンはシャンジャ郡の郡都である。田舎町の小学校ではなかったようだ。やはり情報が混乱しているみたいだなあ……と思うゴパルであった。


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