表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
氷河には氷があるよね編
8/1133

クシュ教授とゴパル助手

 クシュ教授もチヤを飲み干して、小さくため息をついた。スポンジが少々ハミ出しているソファーが、ギシリと音を立てた。

「外は、こんなに雨が降っているんだけどねえ」

 ゴパルも窓の外の景色を眺めた。また一段と強く雨が降ってきたようだ。雨音が強くなり、曇った窓ガラスが雨に洗われていく。

「ガネシュ連峰では、大雪になってますね、これは。雪と氷はあるんですけれどねえ……」

 クシュ教授が、大きな黒い瞳をキラリと輝かせた。小さいが節くれだった指を鳴らす。パキンという音が、研究室に響いた。

「それだな!」


挿絵(By みてみん)


 嫌な予感を、ひしひしと感じるゴパルである。ラメシュら三人の博士課程の学生も、同じ予感を感じたようだ。ゴパルと目を合わせて、眉間にしわを寄せた。

 なんですか? 

 という問いや反応を待たずに、クシュ教授がドヤ顔になった。太鼓腹をさらに大きく膨らませる。再び、ソファーがギシリと軋んで音を立てた。

「最寄りの氷河に、小屋を設ければ良いのではないかね? 冷蔵庫や冷凍庫として使えるはずだ。そうだろ?」


 嫌な予感が、見事に的中した事を喜ぶゴパルであった。ラメシュ達三人は、視線をクシュ教授とゴパルから逸らして、再び窓枠の雨漏りを調べ始めた。必然的に、クシュ教授の視線を一身に浴びる事になるゴパルである。

「……確かに、最も電気を消費するのは、冷房と冷凍装置です。これを氷河の氷水で代用できれば、安上がりになるとは思いますが……場所の問題がありま」

「うむ! では、早速調べなさい。ゴパル助手」

 口をパクパクさせるゴパルであったが、それも数秒間だけだった。軽く肩を落として、スマホを取り出す。

「はい、教授」

 クシュ教授が、ゴパルをさらに強い視線で見つめた。  

 凝視ともいえる。

「ついでに、ミニ水力発電機と、太陽光発電パネルについても調べておきなさい、ゴパル助手」

 ゴパルがさらに沈んだ口調で答えた。

「はい、教授」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ