酒造所
ネパールではネワール族や、グルン族のような山間地に住む民族を中心にして飲酒の文化がある。
一方で、ヒンズー教徒のバフンやチェトリ階級では、飲酒は不浄な行為とみなされているので、基本的には飲まない。
ただ、イスラム教徒と違って、厳禁では無いので、何かと理由をつけて飲む人が多いが。ゴパルも、その一人である。
民族ごとに好まれる酒が異なり、クシュ教授のようなネワール族は、度数の高い米焼酎を好む傾向がある。かなり本格的な蒸留機器を用いるので、四十度以上の度数に達する事もよくある。
日本の米焼酎とは米の品種と、発酵菌の種類が別物であるのだが、甘い香りがして飲みやすい。樽での熟成を行わない所が多く、無色透明だ。
さらにネワール族は水田地域に拠点があるので、米の濁り酒も造る。これもまた、日本の濁り酒とは別の風味を持つ。清酒は無い。
殺菌処理をせずに飲むため、発酵が浅いと米汁サイダーに、発酵が進み過ぎると酸性が強くなり過ぎて、酸っぱくなってしまう。また、酢酸菌等の雑菌が増えてしまうと、腐臭を放つ酢になったり、出来の悪い米酢になったりする。
こうしたネワール族が多く住む町では、居酒屋でも、これらの酒が飲めるのだが、あまり推奨はできない。
焼酎を水で薄めたり、過発酵で酸っぱい濁り酒である場合が、往々にしてあるためだ。発酵補助に雑菌が繁殖している糖蜜を、焼酎のもろみ造りで使う場合もあるので、その場合は臭いが悪くなる。
また余談が過ぎたが、グルン族の集落や山村では、シコクビエの焼酎が人気だ。
山米も収穫できるので、秋の新米の時期には、どぶろくも造られる。これは賞味期間が数日間も無いので、注文を受けた量だけ仕込むという形式だ。見た目も、薄い粥状である。
他には、固いトウモロコシで仕込んだ焼酎等も造られるのだが、後味が今ひとつで、悪酔いをすると言う人が多い。




