ガンドルン周辺の森
まず最初に立ち寄ったのは、ガンドルン内の八百屋だった。地元民向けに野菜を販売している。そこで生じた野菜ゴミを、いくつか安くもらい受けた。
不思議そうな顔をしている店主や買い物客に、ゴパルが努めて明るく愛想笑いをしながら説明していく。
「野菜の葉や花に果実の表面には、固有の微生物が付着している場合があるのですよ。それを採集しています」
やはりというか、ゴパルの説明では、半分も理解できていない様子である。微生物というネパール語の単語が、一般的に使われていないので、仕方がない。
まあ、変な人と言う事で、納得してもらったゴパルであった。変人ついでに、地元のヨーグルトも全種類買っていく。それぞれのヨーグルトを作っている住所と代表者名も、忘れずにメモしている。
続いて、ガンドルンの上に広がっている、広大な森の中へ分け入っていく。ネパールハンノキと呼ばれる広葉樹が多い森だ。
たちまち、数センチ級の大型の吸血ヒルが、草や木の葉の陰からゴパルに襲い掛かってきた。頭上の木の枝からも、ポタポタと落ちてくる。色も赤黒いものだけでなく、黄色と赤黒色との縞模様のものがいる。
しかし、事前に対処しているので、レインウェアの上を這うだけに終わった。そのまま地面に落ちていく。
ゴパルの目当ては、マメ科の雑草の花弁や、笹の葉、イラクサの新芽、シダの芽等だ。今の時期は、緑の座布団のような見た目のコケの上に咲く、青い花の雑草も採集していく。
特に、イラクサは人気の野草なので、新芽を探すのに苦労するゴパルであった。ほとんどのイラクサは、既に地元民によって、若葉や芽を摘み取られていたためだ。
イラクサには大量の鋭いトゲが生えていて、不用意に触ると非常に痛い。しかし、ゴパルはネパール人なのでトゲに刺される事も無く、気楽に採集している。
ちなみにイラクサは、トゲを潰した後で、香辛料炒めや煮込みにして食べる。酒の材料にも使われるが、これはそれほど有名ではない。




