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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
とりあえず使ってみた編
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ガンドルンのバスパーク

 西暦太陽暦の二月下旬のガンドルンは寒くて乾燥していた。そのせいで、バスパークでも雑草に元気が無い。

 代わって砂塵が上昇気流に乗って舞い上がっている。バスパークは舗装されておらず、土面のままなので余計に多い。その土道がジグザグのつづら折りになってバスパークから谷底まで延びている。しばらくすると、土煙を巻き上げながらゆっくりと坂道を上ってくる小型四駆車が見えた。ガンドルンとナヤプルを往復する便だ。

 バスパークから見下ろしていたゴパルの顔がほころぶ。

「あっ、来た来た」


 数分かけて坂道を上り切った小型四駆便が、ゆっくりとバスパークへ到着した。相変わらず車の屋上には、大きな荷物や生きた鶏が入ったカゴ等が満載されている。

 運転席の窓を下ろしてディワシュが顔を出し、駆け寄ってきたゴパルに武骨な手を振った。乾期のせいか腕や顔が日に焼けている。

「よお、ゴパルの旦那。カルパナさんを連れてきたぜ。ABCから下りてきたのかい、出迎えごくろうだナ」

 ゴパルも手を振って挨拶を返した。まだ車の周辺には砂塵が舞い上がっているので、少し距離を取っている。

「こんにちは、ディワシュさん。道が乾いているので楽でしたよ」


 ゴパルとディワシュが世間話をしていると、カルパナが車から降り立った。そのまま歩いてきて、ゴパルに合掌して挨拶をする。冬なので彼女は厚手のジャケットに厚手のズボン、それに軽登山靴の姿だ。

「こんにちは、ゴパル先生。風邪はもう治りましたか?」

 ゴパルも合掌して挨拶を返し、頭をかいて両目を閉じた。彼も厚手のジャケットにズボン、登山靴の姿である。

「おかげさまで治りました。先日はポカラへ行けなくてすいません。車の屋上に預けた荷物はありますか?」

 カルパナが穏やかに微笑んで、否定的に首を振った。

「いいえ。ガンドルンに一泊するだけですから、背中のリュックサック一つだけですよ」

 そう言って、背負っている小さめのリュックサックを見せてくれた。かなり使い込んでいるようで、所々色落ちしている。


 ディワシュが小型四駆便をゆっくりと動かし始めた。今居る場所はバスパークの中央なので、隅に移動するのだろう。ニヤニヤ笑いながら太い眉毛を上下に動かしている。

「それじゃあ俺はチャイ、これで失礼するぜ。カルパナさん、ゴパル先生とのお泊りデート楽しんできナ」

 カルパナがゴパルと顔を見交わして、今更のようにたじろいだ。

「え? あ? これって傍から見るとそうなんですか? ラビン協会長さんのお手伝いに来ただけなんですが」

 ゴパルも困った表情になって腕組みをして小さく呻いた。

「これは……策に嵌められたか」


 ディワシュが小型四駆便を運転しながらガハハ笑いをしている。

「それじゃ、せいぜいロマンス話の一つや二つ作ってきてくれナ。楽しみにしてるぞー」

 カルパナが肩を落として、小さくため息をついた。

「まったくもう……こういう魂胆だったのですね。変だなとは感じていたんですよ。後でラビン協会長さんに問い詰めておきます」

 ゴパルも背中を丸めて脱力しながら、小型四駆便を見送った。

「今日はパメでラメシュ君がエリンギ栽培の実演をするんでしたよね。楽しみにしていたのでしょ?」

 カルパナが背中のリュックサックを背負い直して、明るい表情で微笑んだ。

「こうなっては仕方がありません。パメにはスバシュさんが居て、彼が実演を見てくれますので心配ありませんよ」


 そして大きく背伸びをした。バスパークからは、深い谷を挟んでマチャプチャレ峰が大きく見える。今は朝の逆光なので峰全体が影になっているが。

「んー……気持ちを切り替えて、今日はラリグラスの花の撮影に集中しましょう。ガンドルンにはカルナちゃんも来ているのですよね?」

 ゴパルが素直にうなずいた。

「はい。そろそろジヌーからガンドルンに着く頃かな。野生のキノコを色々と採ってきているそうですよ」

 カルパナが二重まぶたの黒褐色の瞳を朝日に輝かせた。

「私もチャットで知りました。楽しみですね」


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