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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
とりあえず使ってみた編
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鶏肉のチーズ焼き

 サビーナが骨を取り除いた鶏の腿肉を調理台の上に置いた。それに塩コショウしながら話を始める。十秒更新なのだが、意外と動きが分かるものだ。

「これはポカラの養鶏企業のブロイラー。骨を外して、余分な脂とたるんだ皮も取って掃除してあるわ。でも皮も焼くから、あんまり取り過ぎないように。今回も家庭料理だから、いきなり硬質チーズの粉を肉にかけるわね」

 そう言って、硬質チーズの粉を鶏の腿肉にすり込んでいく。見た目は皮つきの骨なし腿肉だ。


 次にカセットコンロに点火して弱火にした。フライパンを乗せてオリーブ油を敷く。そして、先ほどの鶏肉を皮面を下にして入れて焼き始めた。この一連の動作は、さすがにコマ送りの静止画像では追い切れなかった。

「コツは強火で表面を焼き固めてから、弱火にしてじっくり時間をかけて火を通す事ね。それじゃあ、この間にサラダでも作るか」


 ボウルにサラダ用の葉野菜を入れていく。葉脈を既に取り除いて掃除を済ませておいたようだ。

「今は冬だから葉野菜の種類が多くて楽しめるわね」

 今回は確かに種類が多かった。

 レタスは一般的な玉型、白菜のような立ち型、葉野菜のような葉型、さらに葉がクシャクシャしているちりめん型の四種類もある。

 さらにミニ白菜、青菜、ネギ、二十日大根、カブの葉、スイスチャード、水菜、軸が赤いサラダ用のほうれん草、ルッコラ、春菊、からし菜、ニンジンの葉、ミニトマト、大根の葉、セロリの葉、イタリアンパセリ等を少量ずつ使っている。

 ゴパルが目を点にしていると、静止画像のカルパナが画面に顔を出して説明してくれた。

「パメとシスワで契約栽培している野菜ですよ。サビちゃん専用の畑ですね。今は土ボカシと生ゴミ液肥、生卵入りの光合成細菌なんかを使っています」

 その畑を見せてもらいたいなと思うゴパルだったが、考え直した。

(一般の農家じゃ、この野菜は栽培していないか。からし菜くらいだよね)


 サビーナがボウルにバージンオイルと椿油を少量かけて、フライ返しの要領でサラダ材料と混ぜていく。

 葉の表面に油膜を作るためだったかな、と思い起こすゴパルだ。途中で岩塩の粉を加えて、さらに千切りにした地元産のベーコンと半切りにしたゆで卵を足した。

 この足した場面は、静止画像の更新タイミングが上手く合わずに映像化されなかった。おかげで、いきなり混ぜ終わった状態の静止画像が映っている。

「ん。こんなもんね。ゴパル君、サラダってこんな感じで作るから、よく覚えておきなさい」

 素直に答えるゴパルだ。

「ウイ、シェフ」


 ちょうど肉にも火が通ったようだ。サビーナが肉を裏返した。チーズが濃い目のキツネ色になっている。

「ブロイラーだから脂が多いのよね。気になる人は、フライパンに溜まってくる脂を捨てながら焼くと少しはマシになるわよ」

 調理台の上にトマトソースとジェノバソースを入れたボウルを置いた。さらに厚切りにしたレモンも置く。

「好みのソースをかけて完成。レモン汁だけでも美味しいわよ」


 次の画像更新では、ジェノバソースで盛りつけを終えたものが映し出された。ダナがうめき声を上げて天井を仰いだ。

「うへえ~……美味そうだなー」

 アルビンも地団駄を踏んでいる。

「今日の夕食は鶏肉にしましょうぜ、ゴパルの旦那っ。今からチョムロンに注文すれば間に合いますんで」

 ゴパルが熱がまだ残っている赤い顔で困ったような笑顔になった。

「お腹がストライキを起こしそうなので、代わりにダナ君が食べてください。私は粟のディーロで十分です。鶏の煮汁だけ少し加えてくれると嬉しいかな」

 ドンと自身の胸板を叩いて了解するダナだ。

「任せてください、ゴパルさん。無念はきっと僕が晴らしてあげます」


 スマホ画面でも試食が始まったようだ。レカが早速パクパク食いついて、無駄な動きで感情を表現している。

「うーまーいー。ゴパルせんせー、うまいよーうまいよー」

 カルパナがレカをたしなめるが、彼女も試食して幸せそうな表情をしている。

「レカちゃん、はしたないよ、もうっ。ブロイラーでも美味しいね、サビちゃん」

 サビーナも試食しながら軽くうなずいた。画面を通じてゴパルにドヤ顔でニヤニヤ笑いを向けている。

「鶏臭さは残ってるけどね。ビールやワインでお腹に流し込めば良いわよ。ゴパル君、風邪をさっさと治しなさいね。でないと、次回も映像だけよ」

 ゴパルが頭をかきながら了解した。

「体調管理に気をつけます。次回もこんな事されるとダナ君が落ち込んでしまいそうですし」

 そのダナは早くもアルビンに付いて部屋の外へ出て行った。鶏肉の注文を本当にするつもりのようだ。


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