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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
とりあえず使ってみた編
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ハウスと森の巡回

 キノコと種菌の撮影を終えた後は、チャパコットの花卉かきハウスをスバシュと一緒に巡回した。ゴパルがランのハウスでキョロキョロしている。

「花の種類がまた変わっていますね」

 スバシュがKLと光合成細菌の希釈液の噴霧を作業員に指示してから素直にうなずいた。

「カトレアとカランセ、フォーミディブルは終わりましたね。これからはデンファレやレリア、デンドロビウム・ノビルなんかが旬になりますよ。一般の花は先月と大差ありませんが、そろそろオレンジ色の大きな花が咲くカエンカズラが加わります」

 花の名前には疎いので、聞き流すゴパルであった。一方で専門分野に関わる微生物関連に興味を注いでいるようである。

「KLや光合成細菌を薄めて散布していますが、何か変化が出ていますか?」


 ハウスの天井の梁に沿って張り巡らせてある噴霧パイプを、スバシュが指さして答えた。今も緩い霧状になって希釈液を散布している。しかし、ゴパル達が居る地面を濡らすまでには至っていない。

「病害虫は相変わらず発生していますね。まあこれはKLや光合成細菌に期待していた事じゃないので、別の有機農薬を使って対処しています」

 KLは生物農薬ではないので、同意しながら聞いているゴパルだ。スバシュが少し考えてから話を続けた。

「花を楽しめる期間が少し延びたかな。ランでは使えませんが、一般の花卉かきで土ボカシを使い始めました。どんな効果が出るのか楽しみです」

 さすが花の担当者だけあるなあ……と感心して聞くゴパルだ。

 ランと一般の花とでは、KLや光合成細菌、それにボカシ等の使い方を変えているようだったので、色々と聞いて録音したりスマホにメモを取ったりする。


 それが済むと、今度はハウス棟を出て森の中へ入った。今は乾期なのでヒルも居らず、道もぬかるんでいないために非常に歩きやすい。森の木々の落ち葉や枯れ枝を踏みながら進む。

 すぐに雑木林が終わって一種類の木だけになった。木の葉を手に取ったゴパルが周囲を見回してみる。

「ヤブツバキの林ですね。私の母が椿油に感謝していました。地面に置いてある肥料袋の中身は土ボカシですか?」

 スバシュがヤブツバキの幹を手でポンポン叩きながら答えた。

「はい。土ボカシですね。下の斜面にある雑木林の土を使っています。明日明後日あたりに袋を開けて、ヤブツバキの根元に施すつもりです。これも次回の収穫がどうなるか楽しみですよ」


 もう少し山の中を歩いて、最後にクチナシの林も巡回するスバシュとゴパルであった。

(スバシュさんが日焼けしている理由がよく分かるよ。こんなに山の中やハウス棟を歩いて回っているんだな)

 低温蔵で仕事をしてポカラまで何度も往復しているゴパルであるが、基本的に涼しい場所だ。登山道を上り下りしているので体力を使うし大汗もかくのだが、それほど苦には感じていないようである。

 アンナプルナ街道なので途中に茶店や民宿が多くあり、気軽にチヤ休憩できるおかげもあるだろう。しかし、ここチャパコットではそのような茶店や民宿は無い。亜熱帯の気候なので気温や湿度も高い。

 地味で大変な仕事だなと思うと共に、菌の採取欲も刺激されるゴパルであった。こういった人があまり居ないような森の中では、興味深い菌が見つかりやすいものだ。

 クチナシの林で、土ボカシの袋を数え終えたスバシュがゴパルに振り返った。

「同行お疲れさまでした。そろそろルネサンスホテルへ向かいましょうか。サビーナさんが待っていますよ」


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