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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
とりあえず使ってみた編
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まずはパスタから

 パスタ料理は二種類あり、それぞれ大皿に盛られている。給仕長が穏やかな笑みを浮かべながら客達に告げた。

「今晩のディナーは貸し切りです。他に客はいませんので、少しくらい騒いでも構いませんよ。店内でロックコンサートでも始めない限りは大丈夫です」

 しでかした客が居たような口ぶりである。大丈夫なんだ……と素直に納得したゴパルに、料理の説明をした。

「合鴨肉のトマトソースを使ったパスタです。パスタは幅広でリボン状のパッパルデッレを使っています。イタリアのトスカーナ地方の郷土料理ですね。今の時期によく食べます」


 続いて別の大きな皿に盛られたパスタ料理に手を添えた。

「こちらはイタリア風の蒸しギョウザですね。水牛肉ミンチの代わりにチーズとクリームのスープを詰めています。スープが飛び出しやすいので注意してください」

 客達が口論をぱったりと中断して、興味深そうに大皿二つを眺めている。給仕長が皿を手にして穏やかな笑みを浮かべながら聞いた。

「今回の食事会は軽めという事でしたのでこうしてみました。どのパスタをどのくらいの量食べてみたいのか、知らせてください」

 そう言って、まずは常連客のアバヤ医師に視線を向けた。アバヤ医師が口元を緩めてうなずく。

「では、ワシが最初に注文するか。トマトソースのパスタは三口ほど、イタリア風ギョウザは二つ頼むとするかな。ワインはゴパル君が宣伝を頑張っているのでバクタプール酒造の白を頼むよ」


 給仕長が優雅な所作で了解した。そして大皿から注文の通りにパスタとギョウザを取り分けて、アバヤ医師用の皿に盛りつける。それをアバヤ医師の席に置いてから、白ワインを持ってくるように給仕に命じた。

 クシュ教授が大きな黒い瞳をキラキラさせて、半分白い眉をヒョコヒョコ上下させた。

「なるほどな。では僕はパスタを二口ほど、ギョウザも二個で頼むよ。ワインはアバヤ先生と同じで」

 続いて客達が好みの種類と量を指定してワインも白に変えた。残念ながらバクタプール酒造の銘柄にしたのはクシュ教授とアバヤ医師だけだったようだ。皆、インド産の白ワインを注文している。

(ギリラズ給仕長さんが一押しはインド産白ワインと言うから当然かな……レストランは商売だから仕方がないか)

 やや落胆したが、バクタプール酒造の白ワインを頼んだゴパルであった。上官のクシュ教授とアバヤ医師がそろって注文しているので、別の銘柄にするのは気が引けたという事もあったようだが。


 早速、合鴨肉をトマトソースで煮込んだものをたっぷりとかけた幅広パスタをフォークとスプーンを使って食べてみる。少し驚いたような表情になるゴパルだ。

「うわ。思ったよりもソースが濃いですね。合鴨肉も煮込まれていて柔らかいな」

 アバヤ医師がニコニコしながら同じパスタを口に運んで、ゴパルにうなずいた。

「パスタが幅広だから食べ応えがあるだろ? トマトソース和えというよりも煮込み料理に近いな。ラグーみたいな感じかね。白ワインよりも赤の方が良かったかもしれんな、これは」


 クシュ教授はイタリア風ギョウザを最初に選んで食べていた。まだ熱かったようで、目を白黒させている。

「野菜のスープが土台になっているようだね。これにクリームとチーズを加えているのか。うむ、これは白ワインと相性が良いな。酸っぱくてもったりしているバクタプール酒造の白と良く合うよ」

 アバヤ医師がイタリア風ギョウザを食べながら、ほとんど一本につながっている細い眉を上下させた。

「ふむふむ。白ワインにはこちらの方が良かったな。このギョウザの皮だが、パスタ生地で作られておる。なのでパスタとも言えるな」


 外国からの客達も喜んで食べているようだ。

 続いて給仕長が魚料理を出してきた。これは大皿盛りではなく、客それぞれの皿に盛りつけている。

「ザリガニのローズマリー風味です。味付けはニンニクと塩コショウのシンプルなものです。白ワインの銘柄を変えようと思っている方はお知らせください。そのまま続けたい方は、白ワインを継ぎ足します」

 客達はインド産の白ワインを気に入った様子で、銘柄を変えずにそのまま継続した。クシュ教授とアバヤ医師も、インド産の白ワインに変更すると給仕長に申し出ている。がっくりと肩を落とすゴパルであった。

「クシュ教授~……ここで変えますか」


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