チーズケーキ その二
小鍋にゼラチンと水を加えて火にかけて溶かし、そこへすりおろしたレモンの皮を加えた。これをクリームチーズが入ったボウルに注ぎ入れる。
木ベラからゴムベラに道具を取り替えて、しっかりと混ぜ合わせていく。しかし途中で別のボウルに移し替えた。再びホイッパーを使ってかき混ぜていく。
「どうしてもダマができてしまうのよね。だからこうしてゴムベラとホイッパーを使って、均一になるまでしっかり混ぜる事」
ホイッパーでかき混ぜながら、途中で何回もゴムベラでボウルの壁面に付いた部分をそぎ取ってホイッパーになすりつけている。
「お菓子作りって結構体力を使うのよね。だから力を使わないで混ぜる方法はぜひ習得しておきなさい。ん。こんなものかな」
ボウルにメレンゲを投入した。
「泡を潰さないようにホイッパーを横に寝かせて、こうやって混ぜる事」
ホイッパーがボウルの底を這うように、サビーナから見て手前から奥へスライドさせている。奥まで行ったホイッパーはいったん持ち上げ、再び手前に戻していく。そのため混ぜる向きは手前から奥への一方通行だ。
「メレンゲがよく混ざったら、生クリームを加えてまた混ぜる事」
サビーナが冷蔵庫に入れて冷やしていた生クリームを取り出して、ボウルに加えて混ぜ始めた。混ぜ方は先程と同じだ。
「これでもまだ均一にならないのよね。だから別のボウルに移し替え」
生地を別のボウルに移し替える。確かにボウルの底面は混ぜきっていない状態だ。それをゴムベラを使って優しく混ぜ合わせて、全ての生地を移し終えた。
一息ついたサビーナが、使い捨てスプーンを使って味見する。
「ん。まあこんなものね。それじゃあ型枠に流し込むか」
セルクルに先程焼いた生地を入れて、チーズクリーム生地を流し入れていく。見た目はかなり白い。
「焼いた壁面生地は一番最後に使うから忘れないようにね。チーズクリーム生地の上にクリームソースを塗るから、セルクルの上端から三ミリくらい余裕を残しておく事」
これを冷蔵庫に入れて冷やした。
「それじゃあ次に、さっき言ったクリームソース。今回は旬が終わったけどパッションフルーツを使うわね」
材料は全卵、パッションフルーツのピュレ、グラニュー糖、無塩バターだ。それぞれの重さを述べていく。
「ピュレはトマトピュレと同じやり方で作りなさい。砂糖を一割くらい使うと保存しやすくなるかな。全卵はしっかりと混ぜ合わせておく事」
ボウルに全卵液とグラニュー糖を入れ、ホイッパーを使ってすり合わせるようにして手早く混ぜ合わせた。パッションフルーツのピュレは小鍋に入れて弱火にかけ、煮立たせてからボウルに流し込む。
よく混ぜてから小鍋に戻し、弱火にかけた。鍋底をホイッパーでよくかき混ぜながら温度を測る。
「これは殺菌処理ね。卵が熱で固まらないように注意しながら八十五度まで温めるの。ん、温度に達したわね」
すぐに火を消して小鍋を下ろし、ザルでこしてボウルに移し入れた。これをすぐに氷水の上に乗せて冷やす。
「三十五度まで冷やす事。これ以上の温度だとバターがあっという間に溶けて、かえってクリームソース生地と均一に混ざらなくなるのよね」
温度計で測って冷えた事を確認してから、無塩バターを加えてホイッパーを使って混ぜ始めた。
「空気が入り込まないように、切るように混ぜる事。ん、バターが完全に溶けてクリームソース生地に馴染んだわね」
さらにホイッパーを使って混ぜ続けて、生地が滑らかになってから、ボウルにラップをかけて冷蔵庫に入れた。
「四度になるまで冷やす事。今回は撮影だから、冷えた物と差し替えるわね」
そう言ってサビーナが冷蔵庫から冷えたクリームソースを取り出した。さらにセルクルも取り出す。
「セルクルの方はまだ十分に冷えていなけれど、まあ撮影用だしコレでいいでしょ。では、クリームソースを塗るわね」
セルクルの上端には三ミリほどの余裕があるので、その厚みでクリームソースを塗っていく。パレットナイフを手にしたサビーナが、簡単に使い方を説明した。
「パレットナイフの持ち方はこうね」
パレットナイフの重心を親指の腹で支え、軽く人差し指を柄に添えた。そうやってから、セルクルの手前から奥に向かって一方通行でスライドさせてクリームソースを均一にならしていく。
セルクルの型からパレットナイフを離す際には、いったんナイフを少しだけ浮かせてから沈めている。
きれいに黄色いクリームソースが塗られたのを確認してからセルクルを外した。
「うまく外れない場合は、お湯に浸して温めたタオルをセルクルに当てて、チーズクリーム生地を溶かすと良いかな。代わりに、さっき焼き上げた外枠用の生地をはめ込む」
カポッとはめ込むと、クッキー生地なので意外に武骨な印象に変わった。
「ロールケーキで包むと柔らかい印象になるけどね。さすがに屋台の調理台じゃ作る場所がないのよ。それで後は、果物なんかを盛りつけて飾って完成」
ここは旬のイチゴを使うようだ。それでも小さめのイチゴを使っている。大きなものは半分に切ってもいた。
「あんまり乗せると果物の重みでチーズケーキが潰れてしまうのよ。ここからさらに生クリームで飾っても良いかな。それじゃあ撮影してちょうだい、レカっち」
レカはすっかり起きた様子で、キビキビとした反応を見せた。お菓子の効果だろうか。
「おー、まかせろー」




