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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
氷河には氷があるよね編
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事務所で挨拶

 挨拶はすぐに終わり、バクタプール大学としての、今後の行動計画を報告する。もちろん、既にクシュ教授の名前で提出されているのではあるが、そこは慣習という物である。

 事務所長は、グルン族ではないがネパール人で、バフン階級の人だった。典型的な、事なかれ主義の人のようで、ゴパルに来訪を労う辞を、形式的に述べた。

 チヤも出してこないので、歓迎はされていないのだろうなあ、と直感するゴパルである。

(いきなり首都の大学から、新規事業を押しつけられては、そりゃあ面倒に思うよね)

 この程度の空気は読めるので、ゴパルも形式的、というか儀礼的に挨拶を済ませた。


 事務所長が、面倒くさそうな表情をしながらも、測量を許可する旨をゴパルに伝える。

「……ですが、事故が起きたとしても、我々は一切保護しませんから、そのつもりで。地元民や観光客から苦情が来ても、我々は関与しませんので、君達だけで対処して下さい。そもそも、この事業自体が特例ですからね」


 アンナプルナ保護地域内では、基本的に新規事業や建物の建設には、非常に大きな制限がかかっている。

 煩雑な審査を経て、煩雑な認可申請を通じ、多くの偉い人達から、煩雑な許可を取りつけた後でないと、基本的に認められないのだ。

 そのような障害壁を、最初から無かったかのように突破する、クシュ教授の政治力は、相当なものなのだが、ゴパルも事務所長もコメントしない。

「前例のない特例措置ですので、不評であれば、即、撤去を命じます。それを、お忘れなきよう」

 ゴパルが機械的に同意した。

「了解しました。地元の方と、観光客の皆様、管理事務所の方々の迷惑にならないように、努力するつもりです。今日は、わざわざ時間を割いてくださり、本当にありがとうございました。今晩は、計画書に記載した民宿ローディに一泊します。今後は、定期的に事業報告書を、事務所の公式アドレスに送信する予定です」


 事務所長が完全に事務的な口調で、ゴパルに別れの挨拶を述べた。

「くれぐれも、我々の仕事の邪魔をしないように。今後は、もう会いに来る必要はありませんよ。お互いに、時間の無駄でしょうからね。事業報告と会計報告を四半期ごとに送ってくれれば、それで十分です」

 ゴパルも機械的に合掌して挨拶し、事務所長室から退室した。こういった待遇は、大学や研究所でも多く経験するので、特に気にしていない様子だ。

 しかし、レインウェアを脱いで、リュックサックも肩から下ろして、ネクタイの一本でも締めてから、会っておけば、多少は待遇が変わっていたかもしれなかったが……。


 ゴパルが、事務所の受付嬢に軽く挨拶をしてから、スマホをレインスーツから取り出した。時刻を確認する。電波も届いていて、通信には支障無いようだ。

「そろそろ昼か。散策してから宿へ向かうかな。しかし、ガンドルンって村と呼ぶよりも、町と呼んだ方がしっくりきそうだね」

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